2024年02月06日(Tue)
能登半島地震に防災体制の「見直しの必要性」を痛感
(リベラルタイム 2024年3月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿 全国から延べ百三十万人が駆け付け、ボランティア元年といわれた一九九五年の阪神淡路大震災から二十九年、同じ一月に能登半島地震が起きた。自衛隊や各地の自治体から派遣された警察や消防隊が行方不明者の捜索や復旧活動に当たり、被災者は極寒の中で早急な支援を待っている。 |
日本財団も地震発生翌日、被害が激しい珠洲市や輪島市に災害対策事業部の職員や災害NPOのメンバーを派遣。海上輸送を使ってシャワーキットや軽油、給水タンク、発電機などを被災地に届けている。 日本財団の被災地支援の原点は阪神淡路大震災にある。被災地の復興に向けボートレース業界から寄せられた資金を基に、港湾設備やバス路線等、インフラの復興を支援する一方、初めてボランティア支援に関わることになった。湧き上がる思いで、宿泊先や食事の当てがないまま駆け付けた人も多く、被災地には大きな混乱が起きていた。 そんな中、現地に派遣した職員の情報を基に、活動実績が確認できた団体に即決で百万円の活動費を提供した。慌ただしい対応だったが、阪神淡路大震災がボランティア元年と位置付けられる契機になったと自負する。 以後、大津波と東京電力福島第一原子力発電所事故で未曽有の被害が出た東日本大震災(二〇一一年)や熊本地震(一六年)等、大地震や豪雨災害の被災地でNPOやボランティア団体と共に五十回以上、支援活動を重ねてきた。被災地には災害ボランティアの力を効率的に活用するボランティアセンターが立ち上がり、ボランティアも医療関係者から土木・建築の専門家まで多彩なグループが育ってきている。 大震災が発生した場合、被災者の救出と道路、電気、ガス、水道、通信など基幹インフラの復旧が何より先決。能登半島地震の被災地は、大部分を海抜三百m以下の低山地と丘陵地が占める特殊な地形に豪雪期が重なり、作業は難航を極めている。 入り組んだ道路は至る所で崩落・陥没し、自衛隊の大型車両や重機、消防、警察の中型車両が被災地に入るのは難しく、当初、半島入り口の金沢市で待機を余儀なくされる車両も目立った。 この結果、小型車両、小型重機を装備した災害ボランティアが果たす役割が従前にも増して大きくなっている。 日本財団では重機や動力機材の扱い、避難所支援に優れた技術を持つ団体等と連携協定を結び、活動資金を援助することで災害発生時の迅速な対応を目指してきた。今回も協定を締結する災害NPOなど約二十団体が珠洲市などの被災現場で順次、活動を進めている。 多くがショベルカーやユンボ(油圧ショベル)など小形重機を備え、普段から、その扱いに慣れたプロ集団であるのが特徴だ。警察や消防の車両を通すため災害ボランティアが道路の瓦礫処理など啓開作業を進める姿も目立っている。災害発生時の人命救助は「災害発生してから七十二時間が勝負」といわれるが、ここでも小回りが利く小型重機が力を発揮している。 大災害が起きると、自衛隊や警察、消防の活動が前面に出る。しかし、それぞれの本務は自衛隊が国防、消防は火災、警察は治安。必ずしも小型重機を重視した編成にはなっていない。山が多く、土砂崩れや道路の陥没・崩壊が起きやすい国土の特徴を踏まえると、小型重機を活用した活動が今後の災害復旧の柱となるケースは確実に増えると思われる。 近年の日本は温暖化に伴う豪雨災害も含め大災害が常態化している。懸念される南海トラフ沖地震や首都直下型地震は、何時起きてもおかしくない状況にある。我国の特性に合わせ、国が先頭に立って災害対策を見直し、強化する時期に来ている。能登半島地震を前に、そんな思いを強くしている。 |