当面、児童手当の拡充に伴い新たに必要となる2兆5千億円の財源をどう確保するかが焦点となっているが、赤字国債の発行は次世代にそのツケを回し課題解決を先送りすることになり、個人としては賛成できない。強いて言えば幅広い国民に負担を求める増税の方が理に適っていると考える。
様々な観点から少子化の原因が論じられているが、その一つに縮小社会の先行き不透明感がある。1人の女性が一生に産む子供の数(合計特殊出生率:以後・出生率)は2021年1.30。昨年の出生数はピーク時の3分の1以下、80万人を切る見通しとなっている。
社会は支える側と支えられる側のバランスが取れて初めて安定する。65歳以上の高齢世代1人を支える現役世代(15〜64歳)の数は半世紀前の7.7人から現在は2.3人、さらに40年後には1.3人前後まで減ると予測されている。一段と重くなる負担が現役世代、とりわけ次代を担う若者の閉塞感を増している。
▼8割強が「政府の対策不十分」日本財団が昨年12月、「価値観・ライフデザイン」をテーマに全国の17〜19歳1000人を対象に行なったインターネット調査でも、4割強(43.8%)が「将来結婚したい」と答えながら「必ずすると思う」は2割弱(16.5%)、同様に4割弱(35.7%)が「将来、子どもを持ちたい」と答えたものの「必ず持つと思う」は1割強(12.4%)に留まった。
同時に7割超(74.1%)が少子高齢化の進行に「危機感を感じる」と答え、政府の対策を「不十分」とする声も82%に上っている。これを受け、今年生まれる子どもの将来が自分たちの世代に比べ経済的に「豊かになる」とする回答は26.6%。「貧しくなる」が46.2%と2倍近い数字に上り、特に女性は2人に1人が「貧しくなる」と答えている。
厚生労働省によると2019年の平均初婚年齢は男性が31.2歳、女性が29.6歳。50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率は20年、男性28.25%、女性17.81%。このままでは双方ともさらに上昇しよう。
▼突出する東アジアの少子化人口は出生率が2.06〜2.07で静止状態となる。江戸時代、特に18世紀の人口は3100万〜3300万人だった。昨年11月、80億人を突破した世界人口も、地球温暖化や資源の枯渇を前にすれば地球の包容力を上回っており、長い目で見れば少子化に伴う人口減少は歓迎すべき事態かも知れない。
しかし、調査結果は少子化が一層加速する可能性をうかがわせ、急速な少子化で年金や医療など国の基幹システムの維持が困難になりつつある。政府が目標とする 1.80程度まで出生率が回復し、緩やかな人口減少の中で時代に合わせ諸制度を作り変える形が望ましく、フランス、スウェーデンの成功例もある。
21年の出生率は、中国が1.16、台湾1.07、韓国0.81。東アジア地域の少子化は世界の中でも突出している。中国の覇権主義で東アジアの安全保障環境が急速に悪化しているが、少子化にどう向き合うか、互いに知恵を出し合うことこそ急務ではないか。そんな思いさえしている。