ロシアの暴挙に対抗する上でもウクライナ避難民支援は当然として、国際社会が我が国の取り組みの弱さを非難する難民対策とどう整合性を取るか難しい。そんな中で日本財団が7月、全国の17〜19歳1000人を対象にオンラインで行なった18歳意識調査では、ウクライナ避難民に絞った受け入れと、同避難民を含めた難民全体の受け入れの賛否にかなりの差が出た。
まずウクライナ避難民の受け入れ。62.4%が「非常に賛成」、「どちらかと言えば賛成」と答えたのに対し、「どちらかと言えば反対」、「非常に反対」は10%に留まった。一方、同避難民を含めた海外からの難民受け入れに賛成は49.4%、反対は16.4%。賛成数に10%以上の開きがあり、後者を「難民」だけに絞って質問した場合、賛成数はさらに低くなったと予想される。
難民条約は、1951年に採択された「難民の地位に関する条約」と67年に採択された「難民の地位に関する議定書」の双方から成り、日本は70年代後半のインドシナ3国(ベトナム、ラオス、カンボジア)からの難民大量流出をきっかけに1981年に加入した。
難民は人種、宗教、国籍、政治的意見、特定の社会集団に属することを理由に自国から迫害される恐れがあるため他国に逃れ、国際的保護を求める人々と定義される。有効なパスポート、日本での身元保証人のほか、「迫害を受ける、あるいは受ける可能性の証明」が必要で、わが国は「迫害」を厳しく解釈することで認定数を厳しく絞り込み、21年の74人が過去最高だった。
各国の20年実績を見ると、ドイツ6万3456人(認定率41.79%)、カナダ1万9596人(同55.2%)、フランス1万8177人(同14.6%)などとなっており、日本の47人(同0.5%)はあまりに低すぎ、各国の批判も止むを得ない状況にある。
ただし、今回はロシアの暴挙に制裁を課す一方で、ウクライナを支援するG7の一員としての責任・立場もあった。従来の難民対応では受入数が限られ、間口を広げれば、これまでの難民政策との一貫性を欠く。「避難民」は“窮余の一策”として登場した特例措置と言っていい。
難民と認定されると、5年間の定住資格が与えられ、法律上の要件を満たせば永住許可も得られる。ウクライナ避難民は最大90日間の「短期滞在」の在留資格で入国しているが、既に8割を超す人が就労可能な「特定活動」(最大1年間)に変更しており、日本財団の別の調査によると3人に2人が、しばらく日本に滞在する意向を示している。
戦争が終結すれば、避難民の多くはウクライナの復興に向け帰国し、日本に永住しわが国の社会づくりに参加する人も出よう。いずれの場合も日本とウクライナの相互理解は進み、避難民としての受け入れ自体は評価されていい。
18歳調査では、57.6%がウクライナ支援に賛成し、反対は8.1%に留まっている。数字を見る限り、若者は今回の事態をシリアやアフガニスタンなど各地で発生している難民問題とは切り離して見ているように思われる。
我が国で難民問題の議論が歴史的に低調な一因として、海洋国家日本には、難民の多くが避難する陸続きの隣国が存在しない、点などが指摘されている。
しかし、UNHCR(国連難民高等弁務官)本部が今年6月に公表した報告書によると、紛争や迫害により故郷を追われた人の数は世界で8,930万人に上り、国際社会が激動期を迎える中、難民はさらに増える勢いにある。避難民と難民が併存する現状をどう打開していくか、避けて通れぬ課題となる。
Q 日本国内で外国人が増えることの影響について(日本財団の第47回18歳意識調査『ウクライナ情勢』より抜粋)