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2022年08月18日(Thu)
《徒然に…》日本財団「18歳意識調査―ウクライナ情勢」に思う 
日本財団 アドバイザー 佐野 慎輔
徒然に…ロゴ
誰も予測しなかった事態が…

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって半年になる。長く続く戦闘はいつ止むのか、終息の糸口はみえない。

ウクライナはどうなっているのか、ウクライナの人たちはどうなっていくのか。フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドの『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)ではないが、「誰も予測していなかった事態が、いま起きて」いる。
自分たちに何ができるのか、自分たちにどんな影響があるのかを含め、私自身、ウクライナ情勢に無関心ではいられない。私が教える授業でも、ウクライナに寄せて課題のコメントパーパーを書く学生は少なくなかった。


ウクライナ情勢に61%が関心あり

日本財団「18歳意識調査」第47回は「ウクライナ情勢」がテーマ。7月12日から14日、インターネットによって全国の17歳から19歳の男女1000人の意識を調べた。

ウクライナ情勢に対する関心では、61%が「関心がある」(「非常に関心がある」17.7%と「やや関心がある」43.3%)と答えた。「関心のない層」(「あまり関心がない」9.2%、「まったく関心がない」8.2%)の3.5倍に上ったことに衝撃の大きさがのぞく。

「関心がある」理由としては、「ウクライナとロシアだけの問題ではなく、世界のパワーバランスが変わりかねない問題」「第三次世界大戦が始まってしまうのではないかという不安」といった国際政治情勢への意識が伝わる。「日本の安保体制にも関わる問題」「軍事力をもって他国に侵略する行為は許されざる行為であるとともに、日本の防衛戦略を見直し必要性がある」などと、日本との関連に言及した答えもあった。台湾有事に加え、「領土問題」も回答にあった。

また、「戦争が勃発したのを初めてリアルタイムで見て」という現実感や「甚大な被害を受けているウクライナが心配」という憂慮、「戦争という形で物事を決めようとしている」事への疑問も理由に上った。「他人の事として捉えたくないし、目を背けてはならないと思う」のは、その通りだ。


学校の授業が果たした役割

関心の高さの背景に「学校の授業」が挙げられる。世界史の授業や国際法の講義でウクライナ情勢が話され、目が外に向いた。教える側の意識が学生の関心を高めた証であり、大学や高校のあり方次第で「18歳の意識」に変化を生む事が理解できる。

一方、「関心のない層」では「日本が一番大切」「日本国外のことよりも国内のこと」「他国の話で身近な話題でない」といった回答が目立った。彼らに「一国孤立主義」といった強い意識があるわけではないだろう。ただ「身近なもの」にしか関心を持たない風潮に、この国の“いま”がある。「自分の国に直接関係がある訳ではない」「自分に関係がない」との答えは、逆説的な日本らしさを表していると言ってもいい。

「長期化し」「旬の時期が過ぎた」「もう飽きた」との答えがあった。長期化は関心を遠ざける。「ニュースをみない」「怖いから考えたくない」という回答は、昨今の政治への関心の無さと一脈通じる。

改めて、大事な事をきちんと伝えていく事の大切さ、学校教育の果たす「役割」の大きさを思わずにはいられない。


「国を守る」という意識

世界数十カ国・地域の社会学者が協力、1981年から「世界価値観調査」を実施している。各国・地域1000〜2000サンプルを対象にした調査では毎回、「もう二度と戦争はあってほしくないというのがわれわれすべての願いですが、もし仮にそういう事態になったら、あなたは進んでわが国のために戦いますか」、つまり「有事に国を守るか」と聞いている。

最新2017-20年調査で、日本の「はい」と答えた比率は13.2%、実施79カ国の最下位だった。
以下、2位リトアニア、3位スペインと続くが、リトアニア32.8%、スペイン33.5%で30%を上回っており、日本は突出して低い。

日本は1981年期は20.9%で90年期10.3%、95年期17.2%、2000年期15.6%、05年期15.1%と続き、前回の10年期15.2%。ほとんど10%台で推移し連続最下位である。「いいえ」は48.6%で、59%のマカオ、スペイン、アンドラ、スロベキア、ポルトガルに続いて6位。「わからない」38.1%は唯一の30%台で断トツの1位だった。世界における日本の「国を守る」意識の希薄さがわかる数字だ。

日本が敗戦国であり、日本国憲法第9条に縛られている事から答えづらい設問であるかもしれない。四方を海に囲まれた島国で国境線を意識した事がないのも大きな要因であろう。一方戦後教育のなかで「国」とか「公」といった教えが削り取られていった事の証しだと言っても過言ではない。

ちなみに「国のために戦う」問いかけに「はい」と答えた1位はベトナム、実に96.4%と高い割合だった。ベトナム戦争を経て勝ち取った国土を守る事に、高い意識がのぞく。
以下、ヨルダン、キルギス、バングラディシュと戦後建国された国が上位に続く。ヨルダン1946年、キルギス91年、バングラディシュ71年の建国である。
そして5番目に、88.6%の高率で中国が続いた。10年期74.2%からの大幅な伸長は、習近平政権の「偉大な中国」政策の影響である事は言うまでもない。今後、これが歪んだ形にならなければいいが、とも思う。

また、ロシアに攻め込まれ、必死に国を守る意識を訴えたウクライナは56.7%の53位。一方のロシアは68.2%の35位。不幸な事だが、戦争が始まる「国を守る」意識は高揚した。
先進国では米国が59.6%で50位、英国は64.5%で45位。フランスは65.6%の42位。先進国特有の斜に構えた意識だったか。そして両次世界大戦の因となったドイツは44.8%の66位で、戦争への忌避感の現れとみる事もできる。

しかし、ドイツにおける「はい」と「いいえ」の割合は前回の41.7%対54.4%から、44.8%対40.6%に変化、いわゆる逆転現象が起きた。これをEU(欧州連合)中核国家としての意識の芽生えとみていいだろうか。

また韓国は67.4%の40位で、台湾は76.9%の20位。弾圧前の香港は50.0%の59位だった。北東アジアの緊張は今ほど高まっていなかった頃の調査結果であり、当然ロシアによるウクライナ侵攻後の変化は想定できる。

さて、ウクライナ以降、日本の意識に変化はあったのか。巷間、国防意識は変わったと言われ、「18歳意識調査」にも兆しはみてとれる。しかし、戦後77年、世界でも異質とされる意識が簡単に変わるだろうか。

若者には何よりも、世界で何がおきているのか、どう動いているのか、それをみてもらいたい。そして、ウクライナ情勢をはじめとする国際情勢に敏感であってもらいたい。ウクライナ問題を他人事にしてはならない。


参考:
「国のために戦いますか?」日本人の「はい」率は世界最低13% … 50歳以上の国防意識ガタ落ちの意外な理由 本川 裕 (PRESIDENT Online  2022/06/08 13:00)

日本財団18歳意識調査 第47回テーマ「ウクライナ情勢」を実施(2022.08.05)








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