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2022年05月09日(Mon)
韓国新政権で「日韓関係の改善」に期待!
(リベラルタイム 2022年6月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png韓国大統領選挙は保守系の尹錫悦前検事総長が、文在寅政権の継続を目指した進歩系の李在明前京畿道知事を破って当選し、五月十日に大統領に就任する。注目すべきは文政権下で悪化の一途をたどった日韓関係の今後である。
尹錫悦、李在明両氏とも選挙戦で、一九八八年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相が合意した「日韓共同宣言」を基盤に日韓関係の改善に取り組む姿勢を打ち出した。共同宣言は、歴史認識をめぐる両国の対立・軋轢に終止符を打つ点に一番の狙いがあった。しかし、その後の歴史は宣言の主旨に程遠い。関係改善の期待を集め二〇〇八年に就任した保守系の李明博大統領は政権末期の一二年、歴代大統領として初めて竹島に上陸し日韓関係を大きく後退させた。

日本財団は一九九五年、日韓の相互理解促進を目的に延世大学に十憶円を寄付し、その後、基金を基に首都ソウルに「アジア研究基金」(ARF)が設立された。筆者も理事に名を連ね、韓国側の理事の一人である柳明桓氏とは、折に触れ意見交換する関係にある。柳氏は李明博大統領時代に韓国外交通商部長官を務め、駐日大使の経験も持つ。関係改善には双方の政治指導者が胸襟を開いて話し合い、国民の理解を得る環境づくりこそ必要として、両国の指導者が頻繁に行き来するシャトル外交の推進を提唱。最近も日本の月刊誌の巻頭インタビューで「日韓関係改善は政治家の志しだい」と強調されている。

もちろん異論はない。ただし、時の政権が約束したことを次の政権が簡単に反故にする韓国政治の姿は、日韓関係を正常化する上で大きな足かせとなっている。筆者に言わせれば、文大統領は北朝鮮との融和路線に傾斜するあまり、米韓関係を後退させ、二〇一五年末に日韓外相会談で「最終的かつ不可逆的な解決」が確認された慰安婦合意も事実上、白紙に戻した。国と国の約束事が弊履の如く捨て去られたのでは健全な二国間関係は成り立たない。韓国には、時に憲法や国際法、国家間の約束も凌ぐ激しい国民感情がある。尹錫悦新大統領が理性的な指導力を発揮されるよう期待したい。

唐突なロシアのウクライナ侵攻は世界経済、安全保障に極めて大きな影響を与えている。日本の経済制裁に反発を強め、体制内野党「公正ロシア」の党首は四月一日、党のサイトに「ロシアは北海道にすべての権利を有している」と脅しとも取れる意見を載せた。ロシアの動きに触発されたのか、北朝鮮の動きも尋常ではない。弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、金正恩総書記の妹、金与正・朝鮮労働党副部長は韓国の徐旭国防相が四月一日、「先制攻撃」に言及すると、三日後には「軍事的対決を選ぶなら核武力の任務を遂行せざるをえなくなる」と核使用にも言及した。

中国の台湾への侵攻が取り沙汰される今日、国際情勢はいつ、何が起きてもおかしくない。本来、西側同盟国である日韓の関係が冷え切ったままでは、万一の事態に対応するのは難しい。仮に北朝鮮政権が崩壊するような事態があれば朝鮮半島は混乱の極みに陥る。大量の難民が発生し、韓国側の経済負担は計り知れない。混乱が長く続く事態も想定されよう。

その時、我国はどうするのか。対岸の火事という訳にはいかない。かねて指摘されるように、日米安全保障条約はアメリカが日本防衛義務を負うのに対し、日本はアメリカ防衛義務を負わない。万一の事態が発生した時、アメリカの世論が片務的な条約内容に納得するとも思えない。ロシアの唐突なウクライナ侵攻を見るにつけ、備えをどうするか、真剣な検討が急務となった。韓国の新政権がどのような国づくりを進めるか、様々な期待を込めて注目したいと思う。







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