CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2022年04月06日(Wed)
ウクライナ侵攻で高まる「平和憲法改正」の必要性
(リベラルタイム 2022年5月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.pngロシアのウラジミール・プーチン大統領は2月21日深夜に開催した国家安全保障会議(SGB)で、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両人民共和国を国家として承認する一方、三日後、ウクライナのゼレンスキー政権が両国でロシア系住民のジェノサイド(民族大量虐殺)を行っているとしてウクライナへの軍事侵攻を開始した。
ナチス・ドイツが1939年9月、ドイツ人への迫害を口実に開始したポーランド侵攻を想い起させる凶行である。だが、SNSが発達した現代は八十年前とは違う。ロシア軍の攻撃で破壊された学校や病院、死傷者の姿、さらに恐怖を語る住民の声が瞬時に世界に流れ、「攻撃目標を軍事施設に限っている」とするロシア側の嘘が、たちどころに暴露される形となっている。

“プーチンの戦争”と呼ばれる通り、侵攻はプーチン氏の独断による。核兵器担当部隊に任務遂行に向け高度の警戒態勢に入るよう命じ、ウクライナ南部にある欧州最大規模のザポリージャ原発を砲撃するなど、核戦争さえ辞さない強硬姿勢を見せている。

3月2日に開催された国連救急特別総会では、ロシア軍の即時撤退を求める特別決議に141カ国が賛成、反対は北朝鮮などわずかに5ヵ国(中国など35ヵ国は棄権)だった。安保理決議と違い法的拘束力は持たないが、国際社会でのロシアの孤立は際立っている。ウクライナに親ロ政権を樹立するのが狙いとされるが、強引な侵攻に対する各国の反発は事前に当然予想できた。プーチン氏に、どんな計算や判断があったのか不思議な気さえする。

一方のジョー・バイデン米大統領。早々にウクライナに派兵しない方針を打ち出し、プーチン氏の暴挙を誘発した、との批判もある。しかし、米国やNATO(北大西洋条約機構)が派兵すれば、第三次世界大戦に発展する。秘密情報を徹底的に公開する異例の策でロシアの動きを牽制する一方、各国に呼び掛けてウクライナへの武器供与やロシアに対する経済制裁を強化する戦略を採ったのは、多数が参戦に反対する米国の世論からも止むを得ない選択だったのではないか。

経済制裁でロシアの主要金融機関は国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除され、通貨ルーブルは大幅に下落し、経済は急速に悪化している。情報統制が徹底され、ロシアの国民が住民殺傷や原発攻撃の事実をどこまで知っているか定かではないが、国内各地で戦争反対の集会が行われ三月中旬時点で既に一万人以上が逮捕されたと報じられている。先進七ヵ国首脳会議(G7)を中心にした広範囲の国経済制裁で、日常生活は混乱を増し、国民の動揺も広まろう。「相談できる側近がいない」と伝えられるプーチン氏が今後、どう動くのか、目が離せない局面が続く。

ウクライナ侵攻は、新型コロナウイルス禍で経済から政治まで疲弊した国際社会の混乱と混迷に一層、拍車を掛けている。欧米各国と歩調を合わせ経済制裁に踏み切った日本が受ける影響も半端ではない。覇権を求め軍事大国化する中国やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮の動向も加え、安全保障環境も厳しさを増している。筆者は13年に始まった本コラムの初回で、「戦争の放棄」を謳った平和憲法は理想であり得ても現実性を欠くとして、地域の安定に貢献するためにも憲法改正を急ぐよう提案した。強大な政治権力を持つ支配者の独断でいとも簡単に始まった今回のウクライナ侵攻を見るにつけ、その思いを一層強くする。

締め切りの関係で本稿は3月14日時点でまとめた。ウクライナ情勢が今後、どう展開するか予測がつかない。本誌が発売される4月4日には、せめて停戦が実現しているよう祈りながら、引き続き事態の推移を見守りたく思う。







 こども家庭庁は基本法と一体で  « トップページ  »  裁判員年齢引き下げの周知は十分か?