CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2022年02月04日(Fri)
エネルギー安全保障 「水素」の活用で道筋を
(リベラルタイム 2022年3月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png内閣府の総合海洋政策本部に計10人で構成する参与会議が設けられており、筆者も一八年七からメンバーの一人となっている。2007年に制定された海洋基本法に基づき、海洋における日本の安全保障を総合的に検討するのが狙い。〇八年に第一期海洋基本計画がまとめられ、以後、五年ごとに見直しを進めており、現在は二十三年の第四期基本計画の策定に向けた作業が続けられている。

中身は「領海等における国益の確保」から「国際的な海洋秩序の強化」、「国境離島の保全・管理」、「人材育成」まで多岐にわたり、地球温暖化が急速に進む中、脱炭素社会をどう実現していくかも主要なテーマ。菅義偉前首相が一昨年十月の所信表明演説で五〇年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050カーボンニュートラル」を宣言した経過もある。

近年、世界で頻発する異常高温や大規模災害は尋常ではない。温暖化防止が人類の喫緊の課題であるのは言うまでもない。同時に「資源小国日本」にとって、エネルギー資源の安定確保は安全保障の要である。かつてアメリカ、イギリス、中国、オランダによるABCD包囲陣による石油の対日禁輸圧力で太平洋戦争に突入した苦い歴史もある。本稿では、次世代エネルギーとしてアンモニアとともに期待が高まる「水素」について私見を述べたく思う。

水素は水を電気分解すれば生成できる。燃焼しても温室効果ガスの76%を占める二酸化炭素(CO₂)を排出しない。我国の水素関連技術は国際的にも最高水準にあるとされ、一七年には各国に先駆けて水素基本戦略が策定された。現在も見直しが進められているが、一立方メートル当たり百円の水素販売価格を三〇年には30円、将来的には液化天然ガス(LNG)と遜色のない20円まで引き下げ、燃料電池車(FCV)を80万台に増やす他、同年までに水素発電の商用化に向けた技術を確立するとしている。

一方で政府は、三〇年度の温室効果ガス排出量を一三年度比で46%減に設定するとともに、同年度の電源構成で再生可能エネルギー(再エネ)が占める割合を一九年度実績(約18%)の二倍に相当する36〜38%まで引き上げるとしている。中心となる太陽光発電は15%、風力発電は6%、ともに現行計画の二倍以上となる。炭素に変わるエネルギーとして期待を集めるのは分かるが、我国の自然条件から見て、安定した電源になるにはさらなる時間と技術開発が必要ではないか。

長い将来を見通せば、原料となる水が無尽蔵にある水素発電こそ主力になるべきである。一〇年九月に尖閣諸島海域で起きた中国漁船と海上保安庁艦船の衝突事件後、中国が日本向けレアアースを事実上、数カ月間にわたり禁輸にした事実を見るまでもなく、自前で原料が調達できない国には経済安全保障上、危険が付きまとう。グローバル化でサプライチェーンが世界に拡大した結果、今回の新型コロナ禍では、外国での部品生産が落ち込み、給湯器が大幅に不足する事態も起きている。

当の水素に関しては、安価なオーストラリア産や中東産の利用が検討されているが、例えコストが高くとも自前での調達を目指すべきである。日本の技術力をもってすれば、やがてコスト高は解消できる。水素生成に必要な電力に再エネや近年、各国が開発意欲を見せる小型原子炉による発電を活用すれば、再エネの開発を加速し、電源構成も安定する。東京電力福島第一原子力発電所事故(一一年)後、多くが休眠中の原発を再稼働させる手もあろう。

そうした流れの中で、日本の排他的経済水域(EEZ)に眠る膨大な海底資源の活用にも道が拓け、来るべき脱炭素時代の我国の新しい姿も次第に見えてくる。







 加速する中国の少子化  « トップページ  »  メディアは「輿論」の復活目指せ