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2021年12月06日(Mon)
「ヤングケアラー対策」 早急な支援策の整備を
(リベラルタイム 2022年1月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png学校や仕事の傍ら両親や祖父母の介護、きょうだいの世話をしている「ヤングケアラー」に対する支援がようやく本格化する兆しを見せている。国が2020年度から3年間を集中的な取り組み強化期間とするほか、20年3月、全国に先駆けてケアラー支援条例を制定した埼玉県をはじめ相談・支援窓口を開設した兵庫県神戸市やLINEでの相談を開始した宮城県仙台市など自治体の動きも始まりつつある。

ヤングケアラーは本来なら大人が担う家族の介護や世話を日常的に行っている18歳未満の子供を指し、日本風に「幼き介護者」と呼ぶ向きもあるが、法律的な定義はない。筆者が中学、高校時代、同様の環境にある同世代の中高生は周りに結構いた。しかし「世話をするのは当然」といった社会の風潮の中、特段、不幸な家庭だと感じた記憶はなく、そうした雰囲気が社会の取り組みや実態把握を遅らせてきたと思う。

こうした中、20年末から翌年始めにかけ、厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチームが全国の公立中学1千校、全日制高校350校の各二年生を主な対象に初の実態調査を実施し、4月、報告書を公表した。これによると、中学二年生の5.7%、高校二年生の4.1%が「世話をしている家族がいる」と答え、買い物や料理、洗濯、掃除など家事に費やす時間は中高とも平日の1日平均が四時間前後、七時間以上の回答も一割を超えていた。

調査では「進路や就職など将来の相談に乗ってほしい」、「自由に使える時間がほしい」といった声の半面、中学二年生の75%、高校二年生の65%が「誰かに相談するほどの悩みではない」と答え、自身がヤングケアラーである自覚が希薄な傾向もみられた。彼らの存在は、日常的に接する学校こそ最も気付き易い立場にある。しかし、「家族のことであり話しにくい」といった本人の気持ち、「家庭の事情に介入するのは難しい」といった学校側の姿勢もあって、悩みや不安を共有する場とはなっていない。

ヤングケアラーの言葉は1990年代にイギリスで生まれた。同国では2014年に「子供と家族に関する法律」が制定され、地方自治体に支援策の検討など義務付ける一方、11年の国勢調査ではイングランドで16万6千人のヤングケアラーの存在が確認されている。我国では17年の総務省の就業構造基本調査で、家族の介護を担う15〜29歳が全国で21万人に上る、と報告されているが、18歳未満のヤングケアラーがどれほどいるか、現段階では把握されていない。

このため厚労省では来年度から実態調査や関係機関の研修、先進的な取り組みを行う自治体に対する支援などに取り組む構えだ。日本財団でもこのほど、初の取り組として「日本ケアラー連盟」(東京都新宿区)と「ケアラーアクションネットワーク協会」(同中央区)に約1,500万円の助成をすることに決めた。

両団体の活動を通じ、学校や自治体の職員向けの研修動画の作成やシンポジウムを開催し、ヤングケアラーを支えるアドバイザーや講師など人材の育成に取り組む考えだ。将来的には、学校や自治体、民間団体、関係省庁などを結ぶネットワークを構築、自治体のモデル事業など多彩な取り組みを基に国に政策を提言できるような活動に発展させたく考える。

ヤングケアラーは核家族化や少子高齢化、共働きの増加で今後も増える。若者が両親や祖父母、きょうだいの世話を「当然のこと」として担う姿は美しく尊い。しかし、現状は本人の負担があまりに大きく、可能性に満ちた本人の将来を閉ざし、尊い精神が失われる結果を招きかねない。社会的に見ても大きな損失である。そうした事態を防ぐためにも早急な支援体制の整備が必要と考える。







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