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2021年08月12日(Thu)
「中国の台湾統一」 日本は危機感を高めよ
(リベラルタイム 2021年9月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png 中国が核心的利益とする台湾について中国共産党の習近平総書記(国家主席)は7月1日、北京の天安門広場で開かれた同党の結党百周年記念式典で、「祖国統一は党の歴史的任務だ」と語り、力による統一も辞さない強い姿勢を打ち出した。
中国は1991年の旧ソビエト連邦崩壊後、国境紛争など北・西方の脅威が薄れたのを受け、東・南方に当たる海洋への進出を強化、海洋覇権を目指す姿勢を強めた。「中国は大陸国家であると同時に海洋国家だ」といった言葉を耳にする機会も増えた。

中国を真ん中に地球儀を見ると、日本列島から沖縄、台湾、フィリピンを経てベトナムに至る列島線は、中国の海洋進出を塞ぐ形で続いている。ほぼ中央に位置する台湾の統一が、太平洋への自由な出入りを可能にし、海洋覇権の確立につながる。核心的利益は、そんな意味であろう。

人工島造成など中国が実効支配を強める南シナ海問題でオランダ・ハーグ仲裁裁判所は2016年7月、「中国の主張に国際法上の根拠がない」と認定した。中国はこれを「単なる紙くず」と一蹴し、敵対的とみなした国に制裁関税を課して脅す「戦狼外交」を推し進める。あまりに傲慢な姿はアメリカとの対立をエスカレートさせ、国際社会の反発を一層、高める結果を招こう。 

習氏は新中国建国の父・毛沢東に倣うように独裁体制を固め、習氏に対する周囲の忖度が政権の強引さを一層、際立たせている。香港の民主派に対する弾圧も半端ではない。習政権に批判的だった香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」も編集・経営幹部が当局に軒並み逮捕され、6月、廃刊に追い込まれた。習氏自身も二期目の総書記任期が切れる来年秋の党大会で三期目入りし、長期政権を固める構えだ。

中国は予想以上の速さで経済力、軍事力を増強し世界第二の大国となった。何故、これほど強引に事を急ぐ必要があるのか。30年以上、この国と付き合った立場からも理解できない点が多い。如何に強国になろうと、「世界あっての中国」である。世界から信用されて初めて安定的に発展できる。

中国には住民の不満が頂点に達するごとに王朝が倒されてきた易姓革命の歴史がある。共産党政権も歴代王朝の一つである。傍目には現政権も、国民の不満の高まりを一番恐れているかに見える。香港弾圧も活発な政権批判を展開する香港の自由な雰囲気が、本土に波及するのを恐れた結果であろう。

習氏は百周年記念式典で「我々は小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に実現した」と胸を張った。確かに中国の一人当たりの国内総生産(GDP)は19年、中所得国の水準とされる一万ドル(約110万円)を初めて超えた。しかし、都市部と農村部を中心にした格差は一段と拡大する傾向にある。李克強首相も5月、「六億人の月収が千元(約1万5千円)前後だ」と記者会見で明らかにしている。

国内の不満の“はけ口”を外に求めるのが政治の常道である。アメリカ・インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月、米上院軍事委員会の公聴会で、「六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言した。仮に台湾統一が完成すれば、次は尖閣諸島、さらに沖縄に波及する可能性さえ出てくる。 

中国では近年、かつての琉球王国が明、清の時代に中国と冊封・朝貢関係にあった歴史をことさら強調する動きが目立つ気がする。琉球王国が中国文化の影響を受けたのは間違いないが、沖縄と中国に、それ以上の関係は過去も現在もない。

 気になるのはむしろ、国民も含め、あまりに淡白な日本の姿だ。中国の貪欲さはともかく、自らを守る姿勢がなければ国の安全は保てない。豊かで自由な日本をどう守っていくのか。何よりもまず「政」の世界に、党派を超えた緊張感と覚悟を求めて止まない。
タグ:日本財団 リベラルタイム
カテゴリ:世界







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