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2021年02月04日(Thu)
歯止めきかぬコロナ感染 「無料PCR検査」拡充を
(リベラルタイム 2021年3月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府は一月七日、東京、千葉、埼玉、神奈川の一都三県に、十三日には大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡、栃木の七府県に相次いで緊急事態宣言を発令した。いずれも感染者が急増し、PCR検査の陽性率など六項目を指標とした感染状況が最も深刻な「ステージ4」(爆発的な感染拡大)相当と判断され、やむを得ない措置と思う。

ただし、日本は世界トップクラスの医療体制を誇り、各国から称賛されるマスク着用や手洗い文化も持つ。欧米各国などに比べ感染者数も圧倒的に少ない。何故、このような事態に陥ったのか、不思議な気もする。

日々のニュースを見ていても分からないことが多い。例えば、その日の感染者数。数字が繰り返し報じられるものの、それが何人を検査した結果なのか、肝心の母数がニュースで報じられるのを聞いたことがない。現実にウイルスが存在し、感染が広がっている以上、母数が増えれば感染者数は間違いなく増える。

感染の深刻度を占うには、感染者数より陽性率こそ重要である。それがなければ感染拡大がどの程度、深刻なのか素人には判断がつかない。恐らく有効な対策も陽性率が把握できて初めて可能になる。PCR検査は唾液を使って簡単にでき、広く無症状の感染者や軽症者を捕捉する最も有用な手段とされている。

ならば、もっと活用する必要があるが、行政の動きは今一つ緩慢に見える。民間検査機関の参入等で、昨年末には一日の検査可能数が十万件を超えたと報じられているが、これでは足りないと思う。受け皿となる医療の収容力を感染者数が超え、混乱するのを防ぐため検査数が意図的に抑えられているといった話を時に耳にするが、むしろ感染症対策の最前線を担う保健所の弱体化が一番の原因ではないか。

保険所は地方自治体の行政改革で整理統合が進み、昨年四月時点の設置数は全国で約470カ所。この4半世紀でほぼ半減した。横浜市や大阪市では市内の保健所を一つに集約し、各区の保健所を保健福祉センターに変えた。

事実上の格下げで、整理統合の過程で全体の保険師数だけでなく、業務の中核を担う中堅保険師も減り、機能の弱体化を招いた。

加えて2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や12年のMERS(中東呼吸器症候群)の被害が我が国で少なかったこともあって、台湾や韓国に比べ法の整備など「万一の事態」に対する備えが遅れた。ともに「感染症の時代は終わった」とする安易な思い込みがあり、危機意識が希薄となった戦後社会のツケがパンデミック(世界的大流行)で一挙に噴き出した感じさえする。

PCR検査は感染の疑いがあると医師が判断した場合や保健所が濃厚接触者と判断した場合に保険適用となり、自己負担分は公費で補填される。しかし、何の異常もない人が民間機関で検査を受ける場合は二万~四万円の自己負担が必要となり、その分、検査を受ける人は少ない。

この結果、無症状の感染者や軽症者が、本人が気付かないまま人と接触し、新たな感染を引き起こしている。感染拡大に歯止めをかけるには、無料のPCR検査で一人でも多くの無症状の感染者を見つけ、人との接触を制限するのが最も効果的で、医療経済上の効果も大きいと思われる。

感染者一人が何人にうつすかを示す実行再生産数が「1」を下回れば感染は縮小する。その実現に向け日本財団も、「民」の立場で無料のPCR検査の実施に本格的に取り組みたいと考えている。









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