CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2020年12月24日(Thu)
《徒然に…》「HEROs AWARD2020」〜いつもとは違う光景が広がる社会で
日本財団 アドバイザー 佐野 慎輔
徒然に…ロゴ
これまで3度の受賞式とは異なる景色に出会った。4年目を迎えた日本財団が推進し、アスリートの社会貢献を表彰するプロジェクト「HEROs AWARD2020」は年の瀬の12月21日、東京・赤坂の日本財団ビルで開催された。このプロジェクトではアスリートによる社会貢献に称賛を贈り、世に知らせていく大切さを重視。都心のホテルに多くの人を集め、男性はブラックタイ、女性もドレスや着物で着飾って華やかに受賞式を執り行ってきた。

しかし、今年は出席者も限られ、男性はスーツにネクタイだが、タキシード姿はない。新型コロナウイルス感染が拡大する状況下、関係者の安全、安心を担保した開催となった。それでも表彰式会場には50人以上の報道関係者が集まり、インターネットによる生中継を行われて、すっかり年の瀬の催しとして定着した感がある。事務局担当者の苦労のし甲斐を思う。

 次は芸能界へ

毎回、主催者としてスポーツ選手の影響力の大きさを語る日本財団の笹川陽平会長は、HEROsアンバサダーを務めるボクシングの世界チャンピオン、村田諒太選手の少年院訪問を例にあげて挨拶した。
「村田選手は自分の経験を通してチャレンジする大事さを語り、君たちにはまだチャンスがある。ここで終わっちゃいけないと励ました。憧れの人の話に入所者はもとより管理にあたる関係者も涙したと聞く。それがスポーツ選手の持つ力だ」と述べ、こう続けた。
「日本には陰徳といって、善い行いを人に知ってもらうのははしたないという文化があった。しかし、スポーツ選手が名乗り出て社会貢献し“助け、助け合って生きていく”環境ができてきた。日本財団は日本に寄付文化を根付かせようと活動している。次はまだ匿名が多い芸能界の人たちにも輪を広げたい」

著名人が率先して社会貢献に努める。それを「売名」と誹る人もいる。しかし、影響力を持つ人があえて名を出して行動、発言することで社会が変わる。「アスリートの力は世界を変える」―提唱者の中田英寿氏と笹川会長が訴える「HEROs」の意義である。

挨拶する笹川会長.jpg挨拶する笹川会長

 スポーツをエッセンシャルに

コロナ禍の2020年、行動が制限されるなか、それでも多くのアスリートが競技場や練習場を飛び出し、困っている人たちを助ける活動を続けた。そこにこのプロジェクトの存在感を思う。ノブレス・オブリージュ、選ばれたものの使命感が広まった証だろう。そのなかから2人のアスリートと2つの団体のプロジェクトが「AWARD」を受賞した。

 ●本田圭佑「AFRICA DREAM SOCCER TOUR」 東アジア(ケニア、ウガンダ、ルワンダ)の難民、ストリートチルドレン、HIV遺児など経済的な困難を抱える子どもたちを対象に自立をサポート

 ●有村智恵「智恵サンタ他」 子どもたちから叶えたい夢の手紙を募り、実現支援を行うほか、東日本大震災、熊本地震の被災地支援など

 ●日本プロ野球選手会「新型コロナウイルス感染症拡大防止基金への寄付、ドナルド・マクドナルド・ハウス支援」 選手会所属の全選手が参加したクラウドファンディングによる感染症拡大防止基金への寄付。病気で入院生活をおくる子どもとその家族が利用できる滞在型施設への寄付、物資支援、訪問活動

 ●一般社団法人センターポール「学校・企業向け障がい者理解講習及びパラアスリート競技支援」 パラアスリートが学校や企業を訪問、講演やパラスポーツ体験を通して理解を深めて健常者が障がい者を受け入れる機会を提供

HEROs AWARD2020受賞者たち.jpg
HEROs AWARD2020受賞者たち(写真左から:堀江航氏、田中時宗氏、二村元基氏、有村智恵選手、炭谷銀仁朗選手)

 審査委員長の早稲田大学・間野義之教授は今年を振り返り、こう語った。
「スポーツ界の顔を出したムーブメントが広がっている。コロナ禍で、スポーツは不要不急、エッセンシャルじゃないと批判された。しかし、10カ月たったいま、なくてはならないものとして改めて認知されている。顔をだした活動をもっと進めていきたい」

 エッセンシャルを辞書で引くと、こう書かれている。「欠くことのできない、必須の、非常に重要な、ぜひ必要で…」

私たちの生活のなかで句点、読点としてのスポーツの必要性は言うまでもない。いまコロナ禍で東京オリンピック・パラリンピック開催に批判も起きている。アスリートの言動が開催に向けた理解を進めるうえでも大きな役割を果たすことになるだろう。


 本田圭佑選手の「夢」支援

 4つの取り組みのなかから、2020年の「HEROs of the Year」には本田圭佑選手の活動が選ばれた。サッカーを通し、子どもたちを対象とした東アフリカ地域での貧困・難民問題への取り組みが創造性、表象性、スポーツの活用と先駆性、持続性、発展性が高いとして評価された。

 ブラジルにいる本田選手はビデオメッセージを通してコメントを寄せた。
「正直何も大したことをしていないのに僕が受賞していいのかなという気持ちでいます」「今年はコロナの影響でプレーができない時期が長く続いたり、各クラブが経営に苦しんだり、本当にスポーツ界にも大打撃な1年だったと思います。そんな中何ができるのか、ということで色々なことに挑戦してきたのですが、まだまだできることがあったんじゃないかと反省しています」

大したことをしていない、まだまだできることがあったんじゃないかと反省している、本田選手らしい逆説的なもの言いにむしろ強い意思を感じる。

メッセージを寄せる本田選手.jpg
メッセージを寄せる本田選手

本田選手のプロジェクトは2017年12月に始まった。発端は2ゴールを決めて世界の注目を浴びた10年FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ・南アフリカ大会でみた難民キャンプ。子どもたちが置かれた境遇に驚き、「夢」を持つことができる環境を与えたいと思うようになったという。自身の経験からキャリア生成には周囲の環境が不可欠と考え、その後の行動に結びついていく。

2016年、国連財団の「Gloval Adovocate for Youth」就任。17年6月にウガンダを訪問し、難民キャンプで暮らす子どもたちやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の遺児たちの過酷な現実を知り東アフリカでの活動を決意した。

 運営組織としてSOLTILO株式会社を2018年4月に創設、ケニアを中心にウガンダ、ルワンダに1年を通して日本人コーチを派遣。現地の恵まれない子どもたちにサッカーを教え、才能が認められた子どもにはエリートアカデミーに参加させ、プロ選手になる夢を後押ししている。すべては無償の活動だ。また限られたサッカー選手への道だけではなく、さまざまな職業を知る機会を提供、自立するまでの支援を進めてもいる。

代理で受賞したSOLTILOの二村元基氏によれば、「第1回HEROs of the Year(2017年)を受けた宮本恒靖さんの活動に背中を押された」という。

 宮本さんは内戦によって分断されたボスニア・ヘルツェゴビナに設立したスポーツアカデミー「マリモスト(小さな橋)」を拠点に、子どもたちが民族の隔てなく一緒に交流する活動を続けている。

アスリートによる社会貢献の輪を広げることを目的とする「HEROs」にとって、第1回の受賞者、宮本恒靖さんに刺激を受けた本田圭佑選手の受賞は何にも増してうれしい話だろう。ウイズコロナ、アフターコロナの世界で、さらなる輪の広がり、夢支援を期待したい。









 女川原発再稼働 「福島の教訓」見つめ直せ  « トップページ  »  与党元候補者3人の解放に見る新たな可能性