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2020年11月05日(Thu)
政権崩壊の危険孕む 中国の内モンゴル政策
(リベラルタイム 2020年12月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

Liberal.png中国では今年、国慶節と中秋節が重なり、観光地は空前の人出になったと報じられている。新型コロナ禍で蓄積された外出自粛のストレスが一気に放出された感がある。お祭り騒ぎに近い各地の賑わいを見ていると、経済の発展が国の隅々に繁栄をもたらしているかに見える。

その実、平和な風景とは逆に各地で様々な問題が噴出している。国家安全維持法が施行された香港では警察当局が大規模な反体制デモを封じ込め、一時に比べ鎮静化したかに見える。

しかし、八月に台湾への密航を試み拘束された民主活動家十二人の解放を求めるデモなど当局との小競り合いが続き、反政府感情は水面下で一層、広がっている気がする。香港の実態を目の当たりにした台湾では、一国二制度に対する不信が一挙に高まり、今年一月の総統選挙では民主進歩党の現職・蔡英文氏の圧勝につながった。

中国内陸部の内モンゴル自治区では八月下旬、地元政府が九月からの新学期に合わせ、小学一年生と中学一年生の「国語」の教科書をモンゴル語から公用語(標準中国語)に変更する方針を発表した。  

これに対し、モンゴル族の住民や学生が「自分たちの言語が失われかねない」と反発。米ニューヨークを拠点とする人権団体「南モンゴル人権情報センター」は、各地で抗議デモや授業ボイコットが続き、多数のモンゴル族が拘束されたと発表している。

同様の措置は二〇一七年以降、新疆ウイグル自治区とチベット自治区でも導入された。中国外務省の報道官は「公用語は主権国家の象徴であり、これを学び、使うことは人々の権利であり義務である」としている。しかし中国人民共和国憲法は「各民族とも自らの言語と文字を使用し、発展させる自由を有する」としており、公用語の強制は憲法の精神とも矛盾する。

三自治区の面積は中国の国土の四割以上を占め、天然ガスやウラン、希少金属など戦略的資源が埋蔵する地域でもある。中華民族としての一体化を図るのが目的とみられるが、多数の死傷者が出た八月の中印国境紛争では、中国に衝撃的な事実が明らかになった。インド兵が担ぐ棺のひとつにインド国旗とともにチベットの「雪山獅子旗」がかけられ、インド軍の中にチベット部隊が存在することが明らかになったのだ。

民族の誇りである言語や文化が否定されれば反発は当然強まる。ましてモンゴル族には、十三世紀にユーラシア大陸の大半を支配したチンギスハンを生んだ偉大な民族としての誇りもある。内モンゴルの人口は一七年現在、約二千六百万人、モンゴル族は一七%の約四百四十万人。近年、進学や就職に有利な中国語を使う若者も増えており、漢族への反感を増幅させるような強硬策が何故、今、必要なのか。

九月二十四日の共同電は、この問題で「太子党」と呼ばれる高級幹部の一部子弟が「第二のウイグル自治区になりかねない」とする公開書簡を連名で提出したと報じた。習国家主席も元副首相を父に持つ太子党で、“身内”から政策の見直しを求められた形となる。

少数民族問題は中国のアキレス腱である。中国の歴史が物語るように歴代王朝の崩壊はしばしば、辺境の民族の軍事蜂起が端緒となった。グローバル化と情報化が進む現在、世界各地のあらゆる動きが瞬時に国際社会に拡散する。

王朝の存続は情報伝達のスピードに比例して短命化すると思う。“習王朝”も決して例外ではない。筆者は三十年以上、中国と付き合い、肝胆相照らす多くの中国の友人を持つ。そんな立場から、圧政が持つ危険性を、あえて中国の指導部に問いたく思う。

タグ:日本財団 リベラルタイム
カテゴリ:世界







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