CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2020年07月29日(Wed)
千年先に健全な海を引き継ぐ責任
国の壁を越えた国際協調こそ
健全な海洋保つブルー・リカバリー


日本財団 参与 宮崎 正

風の香りロゴ
「ブルー・リカバリー」をテーマにした3回シリーズのオンライン・セミナー(ウエビナー)の第1回が海の日の7月23日、行われた。ブルー・リカバリーは海洋環境の保全と両立できる持続可能な経済の確立を目指す新しい動き。海の劣化を加速させてきた人間の社会経済活動の見直し、新型コロナ禍で深刻化する海洋経済の再生にもつながると期待され、それを実現するにも“国の壁”を超えた国際協調が一層、不可欠となる。

セミナーは週刊誌「The Economist」を発行するエコノミスト・グループ(本部ロンドン)と日本財団、笹川平和財団海洋政策研究所の共催。9月まで3回にわたり科学技術を利用した漁業資源の管理やプラスチック対策の強化など広範なテーマについて行われる。第1回は「アジア太平洋における海洋を基盤とする力強い経済再生を目指して」をテーマに、東京、ロンドン、マレーシア、パラオなどを結んで行われた。

冒頭、日本財団の笹川陽平会長が基調講演。司会のエコノミスト・アジア太平洋編集主幹の質問に答える形で、温暖化や酸性化、漁業資源の枯渇、プラスチックごみの流入など海を取りまく環境の悪化を指摘した上で、「私たちには『母なる海』を守り、1000年先の人類に引き継ぐ責務がある」と述べた。

海は一つ、しかし長い陸中心の歴史のせいか、海の危機に対する国際社会の取り組みは今ひとつ盛り上がりを欠く。笹川会長はセミナーに先立つ新聞投稿で、世界150ヶ国で育成した1450人に上る海の専門家(フェロー)を中心にした国際ネットワークの活動を紹介、こうした活動を通じて国の壁を乗り越えるよう提案しており、講演でも「従来のような国によるトップダウンの政策ではなく、官民が積極的に連携して切り拓くのが海洋のニューノーマル」と指摘した。

角南篤笹川平和財団理事長は、経済回復と海洋環境の保全を二律背反とするのではなく持続可能でより強靭な経済を作っていく「ブルー・リカバリー」の取り組みを一層加速させていく必要性を指摘。パラオのトミー・レメンゲサウ大統領は新型コロナの感染者は出ていないとしながらも、「観光客の激減で持続可能な経済開発の先が見えなくなっている」と述べた。

また国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)のアルミダ・アリシャバナ事務局長は「アジアは世界の技術開発の先端にある」とした上で、プラスチック代替品の開発を急ぐ必要性を強調。廃棄物を原料に再生素材を製造する日本企業からは年間数千トンにも上る漁網のリサイクルの取り組みが報告された。

温暖化の関係では、昨年9月にモナコで開催されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第51回総会で発表された「海洋・雪氷圏に関する特別報告書」が注目されている。その第1章の主たる執筆を担当した榎本浩之・国立極地研究所副所長の「IPCCのメッセージを探る」の一文が3月20日に発行された笹川平和財団海洋政策研究所のOcean Newsletterに掲載されている。

この中で榎本副所長は、(1)CO2(二酸化炭素)など温室効果ガスによって地球に蓄えられた熱エネルギーの90%以上が海洋に取り込まれ、その結果、20世紀に全世界で15センチ程度、海面水位が上昇した。このまま温室効果ガスの排出増加が続ければ2100年の上昇幅は60〜110センチに及ぶ恐れがある(2)グリーンランドや南極の氷床から氷が消失する速度が高まり海水面上昇や熱帯低気圧による風や降雨が増大、100年に一度といわれるような現象が数十年後には毎年起きる可能性がある―などと指摘。「大きな海洋にも限界がある。これら影響が社会に及ぶ時期は近い、あるいは既に始まっている」と警告している。

タグ:日本財団
カテゴリ:海洋







 海洋問題解決は日本が主役たれ  « トップページ  »  《徒然に…》2020年東京大会は簡素化か、中止か 〜「18歳意識調査」から