感染症法は陽性が確認されれば症状の程度に関わらず入院隔離を定めている。このため入院患者の多くを軽症者が占め、重症者の病床が不足し医療崩壊が懸念される事態となった。これを受け当初計画では軽症・無症状者用の1200床を用意することで重症者の病床確保を目指すことになった。しかし、その後、ホテルなど療養宿泊施設の確保に一定の目途がつき、東京都や医療専門家とも協議の上、今回の見直しとなった。
残る2タイプは、船の科学館に隣接する日本財団パラアリーナの100床と科学館駐車場に設置される超大型テントの60床。パラアリーナには当初、280床が計画されたが、100床に減らすことで1床当たり10平方メートルを確保することになった。パラアリーナは5月中旬、災害復興住宅型平屋建ては6月末から使用可能で、感染拡大でさらに必要になれば船の科学館用地にさらに300床の設置が可能という。
目を引くのは災害復興住宅型の平屋建て。全部で140床、1床当たり20平方メートルと広く、トイレや浴室、洗濯機、乾燥機も設置される。日本財団は施設の設置、医療資機材の確保、医師や看護師、利用者の食事、清掃など後方支援に徹し、運用は東京都に委ねられる。
様々な理由で自宅療養を余儀なくされている家族の利用にも役立つのではないか。例えば一人親家庭で保護者が感染した場合。大阪府や愛知県などでは児童相談所が残された子供をホテルなどに一時保護し、児相職員が面倒を見る態勢が取られている。この場合、子供は濃厚接触者となるため医学面からのフォローも欠かせない。あるいは高齢者世帯で介護していた家族が感染した場合。残される高齢者の生活を支えるため、ケースワーカーなどの支援が必要となる。
想定されるケースは多彩で、どのような受け皿を整備していくか、現在は感染拡大を前に「走りながら」検討されている段階だ。幸い船の科学館には異なる3タイプに医師・看護師も配置され、食事も用意される。3タイプをうまく組み合わせることで多様な対応が可能になるのではないか、不幸にして子供や高齢者も感染した場合には家族ぐるみで療養する手もあるような気がする。
日本財団では4月3日の発表で「つくば研究所跡地」(茨城県つくば市)への9000床設置方針も明らかにした。新たな事態に備え、引き続き研究所建物の撤去作業を進める予定だ。新型コロナ禍の出口はいまだ見えない。日本だけで39万の死者が出たスペイン風邪(1918年)のように、いったん収束した後の第2波を警戒する声もある。官民で多彩な受け皿を開拓しておくことが必要で、日本財団の取り組みもその一つとなる。