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2020年05月07日(Thu)
新型コロナウイルス禍 「医療崩壊」を防げ
(リベラルタイム 2020年6月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

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急激な新型コロナウイルスの感染拡大で報道も連日、コロナ一色である。学者、政治家から芸能人まで多彩な顔触れが思い思いのコメントをするテレビのワイドショーを見ていると一億総評論家の感を強くする。

新型コロナ禍はほぼ全世界に広がり、国際社会はヒト、モノ、カネの動きが止まり経済も停止状態にある。ウイルスは異常に強い感染力の半面、感染者の症状は無症状から死に至る重篤な症状まで幅広い。未だ正体は不明で、今後の展開も予測できない。各国と同様、日本も必死の防戦を余儀なくされており、事もなげに軽々しいコメントをするのは慎んでほしい気もする。

今、最も懸念されているのは病床不足による医療崩壊である。イタリアや米国・ニューヨーク市でも病床不足から医療崩壊が始まったと伝えられている。感染者が急増する東京都でも、同様の事態が現実化しつつあり、日本財団では東京・お台場の「船の科学館」敷地に千二百床、茨城県つくば市の「造船技術研究センター」跡地に約九千床の感染者受け入れ施設を準備することに決め四月三日、緊急発表した。

新型コロナウイルスは感染者の八〇%が軽症または無症状で済むといわれるが、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)は感染拡大防止の観点から、陽性と判明すれば原則入院隔離を定めている。この結果、指定医療機関の病床の多くを軽症者や無症状者が占め、本来、入院治療が必要な重症者の病床が大幅に不足しつつある。

このため厚生労働省は軽症者や無症状者の自宅や宿泊施設での療養を認める方針に切り替え、日本財団ではこうした感染者の受け入れ施設を用意することで、重症者や重篤な患者の病床確保を支援したいと考えている。「走りながら」の計画で、厚労省や東京都との詰めの協議が残るが、まずは船の科学館に隣接する障害者スポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」に約三百床を用意し、医師、看護師の協力を得て五月早々には受け入れを開始したいと思う。

切迫する事態に変更もあり得るが、船の科学館駐車場や造船技術研究センター跡地には大型テント方式の収容施設を順次、整備する予定だ。「野戦病院」のような施設をイメージしていただくと分かり易いかもしれない。

安倍晋三首相は四月七日、東京、大阪など七都府県に改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく初の緊急事態宣言を発令した。筆者自身、もう少し早く出してほしかった気もしているが、案の定、「決断が遅すぎる」、「具体策が見えない」といった批判が識者や野党から相次いだ。毎度のことなので特段、非難する気はないが、新型コロナ禍は先の大戦以降、最大の国難であり、今、必要なのは安易な批判ではなく、国民が一丸となってウイルスに立ち向かう具体策、戦術の提案である。

特措法には強制的な外出禁止や公共交通機関の運行をとめる規定はなく、不要不急の外出の自粛要請や施設の使用停止、イベントの開催制限の要請・指示など具体策を決めるのは該当地域の都道府県知事である。特措法の“建て付け”の悪さが対策の遅れにつながっている面もある。

世界の大都市の中でも東京とニューヨークはよく似ているといわれる。東京でニューヨークのような爆発的感染が起きれば医療崩壊が一気に現実化しかねない。そうした事態にならないことを祈るが、今は法解釈を曲げてでも積極策を果敢に打ち出し、国民の生命や財産を守る時なのだ。民間の立場からも可能な限りの備えを急ぐ決意でいる。







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