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2020年04月15日(Wed)
《徒然に…》いまこそ、読書のすすめ
日本財団 アドバイザー 佐野 慎輔

徒然に…ロゴ定期的に全集を予約購入している書店から「ゴールデンウィーク明けまで休業する」と連絡が入った。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言に従った自粛である。全国展開する大型書店チェーンであり、ビジネス街の店舗だからいち早く対応できたようだが、小さな町の本屋さんはどうされているだろうか。これを機に書店離れ、本離れが進みはしないか、気になるところだ。


外出自粛を活かして

人と接触しないことが、「医療崩壊」「都市封鎖」が取りざたされる状況を抜け出す方策だという。夜の付き合いは少し先に延ばして外出を控え、自宅で過ごすことは、私たちが果たすべき社会への責任といってもいい。もちろん、そのためには困窮者を支える仕組みが必要なのだが…。

歌手で俳優の星野源さんが作詞、作曲した『うちで踊ろう』が話題になっている。安倍晋三首相の“乗っかり”問題は横に置くとして、家でどう過ごすか。社会責任を果たすうえでも大事なポイントである。

頭に浮かぶのは読書。日ごろ読みたいと思っていたベストセラー、そのうち読もうと積んで置いた部厚い本を読んでみよう。むかし読んで心に残る名作を読み返すのもいいし、歴史的な書籍、古典に挑戦してみるのもいい。外出自粛で、時間はたっぷりとある。


本を友とする笹川会長

写真:空港で読書をする笹川陽平会長久しく「読書のすすめ」を説いてきたのは日本財団の笹川陽平会長である。ハンセン病撲滅や農業支援、平和貢献活動など、1年の3分の1は世界中を飛びまわる多忙な日々だが、常に本を傍らに置く。飛行機待ちの空港ロビー、飛行機のなか、ホテルの部屋…「忙中の閑」を自ら創り出しては本を友とする。

「いや、僕なんかは乱読でね。手当たり次第に読んでいるだけだよ」
さまざまな分野に一家言を持つ博覧強記ぶりは、こうした読書に育まれたといってもいい。だからこそ笹川会長は、ノーベル文学賞を受賞したフランスの詩人、アナトール・フランスの「私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからである」との言葉を引いて、「読書の大切さと楽しさ」を訴える。そして日本財団の職員には、年間30冊の読破を呼びかけてきた。

ちなみに目下、会長が愛読しているのは『週刊読書人』という週刊書評紙。勧められて読んでみたが、広範囲にわたって書評が紹介されており、興味をそそる構成で紙面のリズムが楽しい。気がついたら『週刊読書人web』の会員になっていた。


本の世界でも「感染症」

いま書籍の世界ではご多分に漏れず、感染症やパンデミック(世界的流行)に関わる本が注目されている。なかでも、フランスのノーベル賞作家、アルベール・カミュの古典的な名作『ペスト』はイタリア、フランス、英国でベストセラーとなった。

1947年に発表されたこの作品は、ペストの発生によって封鎖された北アフリカ・フランス領の都市を舞台に、主人公の医師らが不安と絶望感に苛まれながらも助け合いながらペストを闘うさまを描いている。3カ国では、カミュが描いた世界がまさに現実となった。さまざまな思いで読まれた、あるいは読まれているに違いない。

日本でも4月8日、新潮文庫版『ペスト』が累計104万部を記録したと新潮社から発表された。文庫版は1969年発行以来、毎年平均5000部ほど売れてきたという。ところが、今年2月以降だけで実に15万4000部を増刷、一気にミリオンセラーとなった。欧州でのベストセラー化と同様、読者の新型コロナウイルス感染への関心の高さが背景にあることは容易に想像できる。

感染症関連でいえば、テレビで見ない日のない白鴎大学教授の岡田晴恵さんやクルーズ船の折に発言が注目された神戸大学教授の岩田健太郎さんが、新型コロナウイルスについての著作を出した。また、作家の高嶋哲夫さんが10年前に発表した小説『首都感染』が突如、売り上げを伸ばした。中国発の新型インフルエンザが東京にも感染し、生き残りをかけて首相が東京封鎖を決断するという内容は今回の騒動を“予言”したと評判になっている。こうした視点からの読書もまた、騒然とする社会への高い興味、関心を示すものであり、結果的に「洛陽の紙価を高める」ことになれば幸いである。


徒然の楽しみに…

このブログの『徒然に…』というタイトルは言うまでもなく、吉田兼好『徒然草』に倣った。晩年は京・御室、仁和寺にほど近い双ヶ岡に草案を結んだ兼好は日がな、「心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく」書き綴る。底流には観察者としての視点があり、世の移ろいへの「無常観」に貫かれている。『徒然草』を触媒に、兼好法師のそうした思いに浸るのもまた読書の奥深さであり、楽しさにほかならない。


タグ:日本財団







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