先行して東京都は入院中の軽症者や症状のない感染者に、都内で借り上げた民間ホテルに移動してもらう作業を進めているほか、政府も東京・晴海地区で建設が進められてきた東京五輪・パラリンピック警備用の警察官臨時宿泊所利用案を検討中と伝えられている。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)は110を超える感染症を感染力などに応じて5段階に分け、段階に応じて入院勧告などの措置を定めている。今回のコロナウイルスは新型で未分類となるため、政府は1月28日、政令で重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)と同様、「指定感染症」に指定した。
これを受け、陽性と確認された人は原則、入院隔離となり、入院者の80%近くを軽症や無症状の感染者が占める事態になった。しかも退院するには回復後、2度のPCR検査で「陰性」が確認される必要で、感染の拡大とともに重症者向けの病床不足が深刻化し、医療崩壊が懸念される事態になった。医療崩壊が起きたといわれるイタリアなどでも、医師や医療機器の不足に先立ち、まず病床不足が深刻化した。
これを受け厚生労働省も軽症者や無症状者の自宅や宿泊施設での療養を認める方針に切り替え、4月2日に都道府県に通知、2度のPCR検査の期間も短縮し、病院から出る軽症者や無症状者、さらに今後発生する同様の感染者の療養先確保を急いでいた。
東京都が確保したホテルや日本財団が設置する一万床、さらに政府が検討する警察官臨時宿泊所はいずれも、これらの人の療養先となる。自宅もその一つとなるが、軽症、無症状といっても急に症状が悪化するケースも含め幅があり、厚労省や都、医師会の意見なども参考に細かい使用法が決められる見通しだ。
緊急事態が宣言された7都府県、とりわけ東京都はオーバーシュート(爆発的患者急増)寸前とも言える緊迫した状況にある。笹川会長が会見で述べたように「施設を使わないで済むのが一番いい」のは言うまでもないが、しばらくは先が見えない状態が続く。まずは重症者用の病床を確保するのがウイルスとの戦いの第一歩である。それが救える命を救うことにつながる。