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2020年04月06日(Mon)
世界に広がる新型肺炎 自分で自分を守る決意を
(リベラルタイム 2020年5月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

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猛烈な勢いで世界に広がる新型コロナウイルス感染について世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は三月十一日、ついに「パンデミック(世界的な大流行)」の状態であることを認めた。株価の急落など世界の経済は混乱し、国内では多くの催しが中止・延期となり、客足が遠のいた観光地は瀕死の状態にある。

感染者の80%は軽い症状で済むとされるが、感染力は強く、国境を越えて人々が往来するグローバル化が拡散を一層加速している。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の専門家会議は三月九日、「爆発的な感染拡大は進んでおらず、一定程度、持ちこたえている」としているが、本誌が発売される四月三日にどんな状況になっているか見当がつかない。

膨大な情報があふれており、本稿ではあくまで個人としての感想を述べたいと思う。まず安倍晋三首相が二月二十七日に打ち出した全国の小中高校や特別支援学校の休校要請。土曜、日曜を挟んでわずか四日後の三月二日から春休みに入るまで休校するよう求めたのはあまりに唐突で、十分な説明も欠いた。自治体や子供を持つ親から戸惑いの声が出たのは当然である。横浜港で十四日間にわたり乗員・乗客約三千七百人を船内隔離し、各国から批判を浴びたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応に忙殺され、国内対策が後手に回った焦りがあったのかもしれない。

しかし、学校も、クルーズ船の船内も、クラスターと呼ばれる小規模な集団感染が発生した大阪市のライブハウスも同じ“閉鎖空間”である。子度たちが集団感染する恐れは否定できず、政策決定が遅れれば、その分、危険度は高まる。そうした恐れがある以上、急を要し、国のリーダーが決断するしかない。

安倍首相は二日後の記者会見で「よく見えない、よく分からない敵との戦いに、政府の力だけで勝利を収めることはできない」とするとともに「これからも先頭に立って、なすべきことは決断していく」と決意を語った。あらゆる結果に対し、自ら責任を取る覚悟を示したと理解し、その決断を支持したい。今後、専門家会議の意見や議論を含め、要請に至った経過が詳細に書き残されよう。それが今後の対策にも生きる。

次いで新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正。感染拡大が国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす、と判断されれば、首相が期間と区域を指定して緊急事態を宣言できる。これを受け都道府県知事の行政権限は大幅に強化され、例えば人が集まる学校や映画館などの使用制限を要請、指示することも可能になる。

私権が制限される事態も予想され慎重な運用が求められるが、最終的に共産党など一部を除く賛成多数により異例の短期間で成立した。危機対応を優先し、不毛な政治的対立を避けた結果として歓迎したい。

もう一点、モノ不足。特にマスクは「品不足が品不足を生む混乱」が続いている。政府は生産設備を新増設する企業への補助金制度を立ち上げ、「三月は月六億枚以上の供給を確保する」と宣言しているが、需要が高まる花粉症の時期も重なり品不足は依然深刻。混乱は世界に広がり、パニック状態にある。

「感染病の世界史」(角川ソフィア文庫)の著者で、筆者の母校・東京農業大の教授も務めた石弘之・元東京大学大学院教授は「ヒトと微生物の戦いは未来永劫続く」と説く。難局を乗り切るには、誰もが自らを守り、社会の秩序を維持していく決意と覚悟が何よりも必要―。未曽有の混乱を前にそんな思いを強くしている。
タグ:日本財団 リベラルタイム
カテゴリ:世界







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