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2020年02月17日(Mon)
新たな「遺贈寄付文化」の広がりに期待
額や形を問わない“間口”の広さ
まずは遺言書 人生を振り返る機会に


日本財団 参与 宮崎 正

風の香りロゴ遺言書の書き方を分かりやすく指導する日本財団主催の「遺言・遺贈寄付セミナー」が昨年11月の宮城県仙台市を皮切りに各地で開催されている。年度内に13道府県で開催し、3〜4年かけ全国を一巡する予定という。我が国で遺言書を書き残す人は約20人に1人と少なく、まずは遺言書を書く習慣を広めるのが狙い。遺言書を書くことで人生を振り返り、自分がこの世に「生きた証」として遺贈寄付を考える人も増える。それによって日本の新しい寄付文化も育つーというのが基本的な“考え”だ。

写真:パンフレット


欧米に比べ日本の寄付文化が低調とされる背景には宗教観の違いなど様々な要因が考えられるが、同時に遺贈という以上、ある程度まとまった額が必要といった思い込み、さらには「人生100年時代」を迎え、果たして自分が何歳まで生き、その時、どの程度の財産が残っているか見当がつかない、あるいは「家族には何も残さないでいいのか」といった戸惑いもあるような気がする。

これに対しセミナーで「日本一楽しい!遺言書教室」と題する講演を通じ正しい遺言書の書き方などを指導する相続遺言専門の行政書士・佐山和弘氏は、遺贈寄付の遺言書は「自分に見合った生活を送り、必要なら子供らにも何がしかの財産を残した上で、なお財産が残っていれば社会のために役立てたい」といった内容でも十分に有効、もちろん額の多寡は問わないという。となると遺贈寄付の門戸は世間で知られているより広く、こうした認識が広がれば寄付の大幅増加にも道が開けるのではないか。

セミナーは既に2月5日までに計9回開催され、うち新潟、佐賀、熊本など6ヶ所を傍聴した。参加者は高齢者を中心に14人〜59人。地元のブロック紙や県紙に載った開催告知広告を見て参加申し込みをした人たちで、当日の出席率は85%。セミナーの性格から見て決して少ない数字ではない。59人が出席した佐賀市では、うち12人が日本財団遺贈寄付サポートセンターのスタッフによる個別相談にも臨んだ。

長子相続が続いたわが国では遺言書を残す習慣は低く、核家族化や少子化、未婚率の上昇など様々な要因が重なって近年は一人暮らし、あるいは相続人がいない高齢者など「おひとりさま」が増加、相続をめぐるトラブルも増え、遺言書を書き残す人も増加傾向にある。

日本銀行の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は現金・預金を中心に1800兆円を超え、年間相続額は50兆円前後に上るとの見方が強い。遺贈寄付実績は年間300億円前後と推計されているものの、現状では極めて少ない。遺言書を残す習慣が少ないのが一番の原因だが、遺贈寄付をどのようにするのか、知識が普及していない面もあった。

遺贈に対する関心の高まりを受け、2016年には日本財団のサポートセンターなど16団体が参加する「全国レガシーギフト協会」も組織され、社会的受け皿は急速に整いつつある。億単位の寄付をする人も増える傾向にあるが、やはり文化として広がるには、冒頭で触れた「最期を迎えた時、残っている資産があれば」、「子供にも一定額を遺した上でなお残りがあれば」といったタイプの遺贈寄付の拡大が必要だろう。現実に遺贈先を決めて遺言書を作成しておけば、遺言執行者(司法書士や弁護士)が遺贈を実現してくれ、言うほどに面倒な手続きではないようだ。

日本財団遺贈寄付サポートセンターには現在、100通を超す遺言書が寄せられている。内外で幅広い公益事業を展開する日本財団には多様な遺贈先の選択肢、事業化に伴う経費を財団が負担し遺贈額全額を事業に投入できる強みもある。遺言・遺贈寄付セミナーの全国展開で遺言書を託す人はさらに増えよう。

遺贈は次の世代、地域社会に対する贈り物であり、最後の社会貢献でもある。匿名でも寄付に自らの名を冠することも可能で、額や形を問わない“間口の広さ”が広く浸透すれば新しい寄付文化として日本社会に広がっていく可能性は十分あると思う。









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