IPCと共同でメッセージ発信毎年1月最終日曜日の「世界ハンセン病の日」に合わせて宣言を発表している。15回目となる今年が東京オリンピック・パラリンピックイヤーにあたることから、国際パラリンピック委員会(IPC)と共同で4年ぶりに日本からメッセージを発信した。東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテルで開かれた式典には約240名が参加。マセソン美希さんと池透暢さん、2人のパラリンピアンが宣言文を読み上げた。
IPCは多様性を認め、誰もが個性や能力を発揮し活躍できる「共生社会の実現」を目指している。マセソンさんは1998年長野大会アイスレッジスケートの金メダリスト、池さんは2016年リオデジャネイロ大会車いすラグビーの銅メダリスト。IPCの社会貢献活動の推進役でもある。
読み上げられたメッセージには、「ハンセン病への偏見、差別、スティグマ(社会的烙印)の撤廃」とともに「多様性でよりインクルーシブな社会の実現」に向けて「ともに立ち上がる」力強い思いが込められた。
インクルーシブな社会の実現を、と笹川会長式典の冒頭、世界保健機構(WHO)のハンセン病制圧大使、日本政府ハンセン病人権啓発大使を務める日本財団の笹川陽平会長はいまだに「世界ではハンセン病の誤った知識に基づく誤解が存在し、多くの方が苦しんでいる」現状に触れてスピーチ。「東京でのパラリンピアンの活躍は必ずや世界の多くの人々に大きな感動をあたえ、世界はインクルーシブな社会にならなければならないという、重要なメッセージを発信する機会になると確信している」と強調した。
また「ハンセン病は治る病気」であると述べ、「ハンセン病に対する偏見や差別、スティグマを解消することにより、多くの障害者の皆さん、特にその中でハンセン病を経験した人たちを含めて、世界中が共通したインクルーシブな社会を実現していこうではありませんか」と訴えた。
スピーチする笹川会長同席したIPCのドゥエーン・ケール副会長は「東京パラリンピックは素晴らしい大会になると確信している。2020年、ほかの人と違うということだけで差別されることを終わらせなければならない」とあいさつ。IPCが差別撤廃に向けた活動をより推進していく意思を披露した。
安倍首相も差別撤廃に「全力を尽くす」日本財団は1960年代からハンセン病に対して向き合い、1975年からはWHOのハンセン病制圧活動のパートナーとして世界各地でさまざまな取り組みを続けている。
そうした活動に深い理解を示す安倍晋三首相、加藤勝信厚生労働大臣、さらに2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長も式典に出席。安倍首相は、過去の歴史への反省に基づいて、「国として(元患者に)お詫びし、補償や名誉の回復、社会復帰支援などの取り組みを行ってきた」と述べるとともに、「今後も元患者の方々とそのご家族の皆様のお声を聞きながら、差別や偏見の根絶に向けて、政府一丸となって全力を尽くしてまいります」と発言。差別撤廃に向けた動きを活発化していく旨を語った。
安倍晋三首相加藤厚労相も「担当大臣として、元患者の方々やご家族の皆様のお声を聞きながら、偏見・差別の解消に一層取り組んでまいります」とあいさつ。「このアピールが、世界の人々がハンセン病に関する正しい知識を持ち、ともにハンセン病について考えていただく契機」となるよう期待をにじませた。
式典では全盲のシンガーソングライター木下航志氏がピアノを弾きながらジョン・ニュートン作の名曲「アメイジング・グレイス」を歌い、右手を欠損したバイオリニスト、伊藤真波さんとのジョイントでは中島みゆきの「糸」を披露。手話パフォーマーの橋本一郎さんのダイナミックな動きとともに会場から大きな拍手を浴びた。
グローバル・アピール2020宣言文〜ハンセン病患者と回復者に対する社会的差別の撤廃に向けて〜
ハンセン病は直る病気です。しかし単なる病気ではありません。
多くの人びとがこの病による不名誉な烙印を押され、差別を受け、疎外されています。
人生において彼らの機会は制限され、完治した後でさえそれは続きます。
社会の偏見は、彼らの家族に対してもマイナスの影響を与えているのです。
国際パラリンピック委員会(IPC)は、パラスポーツを通じ、よりインクルーシブな社会の実現を目指しています。
IPCの目的は、障がいのある人に対する社会的なバリアを取り除くことで、ステレオタイプに挑み、人々の行動に変革をもたらすことです。
多様性とインクルージョンは、IPCが守るべきものの中核です。
我々は、公平で公正な社会を創出することに全力を尽くします。
パラリンピク・イヤーである2020年、我々は、社会的烙印と差別の撤廃を求め、ハンセン病回復者と立ち上がります。
私たちは共に、すべての人々に尊厳と基本的な自由が尊重される社会の実現を追求していきます。
集合写真