2019年12月06日(Fri)
脱炭素社会に向けどのような道筋描く?
最も深刻な被害国は日本 しかし、世界各地で高潮や洪水、猛暑など地球温暖化に起因すると見られる災害が激発、温室効果ガスの削減目標の強化が叫ばれる中、「2030年度に13年度比で26%減」の従来方針を維持する日本は、CO2排出量が多い石炭火力発電所推進政策もあって、近年は時に「環境対策後進国」と評される立場に後退している。 ドイツのNGOの指摘を待つまでもなく、日本は近年、「50年に一度」の豪雨災害など大災害が常態化し、その分、地球環境保全、公害の防止、自然環境の保護などを任務とする環境省への注目も高まっている。2001年の中央省庁再編に伴い環境庁から環境省に格上げされ、規模も小さく歴史も浅いが、“異常気象”に対する国民の不安が同省の存在感を増している。 そんな中、9月の内閣改造で、何かと注目を集める小泉進次郎議員が環境相に就任した。各種世論調査で次期首相候補のトップに押され、米タイム誌が15年前から発表する「世界で最も影響力のある100人」の1人にも選ばれた。妻の滝川クリステルさんは年明けに出産予定と報道されている。 日本財団SIFで基調講演 小泉環境相は11月29日、東京都内で開催された日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム(SIF)で基調講演。「ソーシャルイノベーションが最も必要な立場になった」と環境相としての責任の重さを語り、16年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で報告された「2050年にはプラスチックの量が魚の量を超える」との予測を引き合いに、「来年には子供が生まれます。子供が30歳になったとき、魚よりプラスチックが多い未来は残したくない」とも述べた。 温室効果ガスについて政府は「50年までに80%削減、今世紀後半の早い時期にゼロを目指す」としている。講演で小泉環境相は政府方針とは別に、「2050年までにゼロにする」と脱炭素社会の実現を宣言している東京都や三重県、横浜市などの試みを環境省として後押しする考えを強調するとともに、「私への期待を環境省への評価に変えたい」、「COP25で頑張ってきます」と語った。別の機会には「石炭火力は減らす方向だ」、「再生可能エネルギーをさらに普及させる」とも発言している。 焦点の脱炭素社会の実現がどうなるかー。環境や社会、企業統治に配慮したESG投資など経済界の新しい動きを追い風に加速するのか、再生可能エネルギーへの切り替えなどが進まないまま、さらに遅れるのか、各国の動向も含め予測はつかない。 ただし、人々の予想をはるかに超えるスピードで異常気象が深刻化しているのは間違いない。最早、“待ったなし”の状態で、早急に実効ある取り組みを求める国民の声は確実に高まる。小泉環境相に対しては時に「どのようなビジョン、政策を持っているのか分かりにくい」との評も耳にする。温暖化防止という国を越えた地球規模の難題に対処する具体策、提案をどこまで打ち出せるか、多くの国民が期待を込めて見守っている。 |