課題解決には知恵の結集を気候変動の影響や海洋ごみによる環境の破壊、テロや海賊行為の横行、密輸や人身売買などの組織犯罪に漁業の不法操業、さらには移民など海をめぐる問題は山積。もはや国家単独、いや2国間、地域だけでは課題解決が図れない状況となっている。
会合では、問題解決には世界海上保安機関の地球規模での結束が重要だと確認。「会合運営ガイドライン」を策定し、会合を持続可能かつ機能的な枠組みとしていくための検討グループ設置で合意した。
来年秋に第2回実務者会合を東京で開催、2021年には第3回長官級会合を開催することも決まり、活動の方向性も定まった
さらに各国における先進事例や有益な情報共有に向けて「webサイト」を創設。今後は検討グループで具体的な内容、手法などの方策をたてていく。
起こったことへの対処、教訓を共有会合では、先進事例の共有として、チリ海軍および日本の海上保安庁から地震津波災害への対応や教訓、その後の対策例などが示された。太平洋島嶼国などで構成する「太平洋共同体」は海洋環境保全、海の安全リスクなどへの取り組みを報告、「バリプロセス」からは海上における移民への対応例が紹介された。こうした情報の共有はいざ自国が直面した際の大きな参考となる。webサイトではこうした事例なども紹介していく。
海を生かす人材を育てよまた、直面する問題解決に向けた効果的な対応として人材育成が重要かつ喫緊の課題であるとの認識が共有された。日本側からは来年、東京で教育プログラムを試行するとの意向が示された。具体体な内容はこれから決めるが、2週間ほどの期間で各機関の中堅人材の教育、研修を想定している。
海洋人材の育成は日本財団が以前から深く取り組んでおり、世界有数の研究機関や大学、各国政府、NGO、国連関係機関とも連携して事業を展開。海洋関連の広い分野で、これまで130カ国1,300人以上の人材育成にあたってきた。海上保安庁と協力したこの会合でもこだわり続けたテーマである。
20日の開会式典では日本財団の笹川陽平会長が「各国海上保安機関が一堂に会し、英知を結集・共有し、密に協働して人類が海に与えている危害を軽減するための効果的な方法を探す重要な機会」とあいさつ、「日本財団は支援を惜しまない」と述べた。
開会式で挨拶をする日本財団会長の笹川陽平閉会の場でも海野光行常務理事が「人材育成」に触れ、「短期ではあるが、科学者のネットワークなども活用、テーマに合わせて議論を深めたい」と語った。
海のコミュニティに女性の活力をこのほか世界海の日のテーマである「海洋コミュニティの女性に活力をあたえること」を背景に、女性がコミュニティに参加しやすい環境をつくる重要性も共有された。ちなみに世界の海上保安機関に従事する女性の比率は26%、海上保安庁は7%とさらに低く、女性人材の育成も大きなテーマとなろう。
議長を務めた海上保安庁の岩並秀一長官は「海上保安機関等が直面する課題を克服するためには、既存の地域の枠組を超えた対話と連携、協力の強化をすすめ、全世界の海上保安能力を向上させることが重要だ」との認識を示し、総括した。
参加者は会議終了後、晴海ふ頭で行われた海上保安庁の展示訓練などを見学。夜は安倍晋三首相、赤羽一嘉国土交通大臣も臨席した明治記念館でのファアウェルレセプションに臨み友好を深めた。
第2回世界海上保安機関長官級会合の様子