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2019年11月18日(Mon)
《徒然に…》アスリートが背中を押してくれた
日本財団 アドバイザー 佐野 慎輔

徒然に…ロゴ先ごろ、「HEROs FESTA2019」が東京・代々木公園で開かれた。日本財団が後援する「HEROs」プロジェクトの一環として、事業に賛同する柔道の井上康生さんやプロ野球の赤星憲広さんら多くのアスリートが登場、訪れた子供たちとスポーツを介したふれあいの場を持った。

アスリートたちは自分の体験を披露、スポーツをはじめ何かに挑む「スタートラインに立て」と語りかけた。

ハンドボールの元日本代表主将、東俊介さんは小学生のころ、体は大きくても「運動が苦手な子」だった。中学で何かスポーツの部活に入らなければならなくなり、志願者の多い野球やサッカー、バスケットボールと違い「レギュラーになれるかもしれない」とハンドボールを選んだ。ねらい通り、練習に励むうちに日本を代表する選手になった。

「どんな動機でもいいんです。何か一生懸命に打ち込んでいけば道は開けます」

東さんの言葉はスタートをためらう子供たちの背中を押してくれるはずだ。アスリートの言動はスポーツとの距離を縮めてくれる。そのまたとない証明が彼らの存在である。

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ハンドボール教室で熱く語る東俊介さん

2008年北京と12年ロンドン、2つのオリンピックに出場したバドミントンの池田信太郎さんはコーチをしていた父の指導で5歳からバドミントンのラケットを握った。小学生のころ、サッカーのJリーグ人気が沸騰し、池田少年も「サッカーに心を奪われた」と話す。「父にサッカーやりたいといったけれど、『ここまでやってきたことを止めるのか』と諭されて」バドミントンに戻った。

池田さんは何か始めたら続けていく気持ちの強さを紹介した。東さん同様、子供たちへの貴重な助言になったはずだ。


「HEROs」というネットワーク

ふたりは現役生活を終えた後も「HEROs」メンバーとしてスポーツ普及の先頭に立つ。そして、このプロジェクトをきっかけに社会貢献を進めていくスタート台に立った。東さんは故郷、金沢市の少年院で講演し社会とのつながりの大事さを訴えた。「HEROsに参加したからこそ実現した」と話す。

池田さんはいま一人ではできない社会貢献に仲間を誘おうと考えている。「HEROs」はそんなネットワークでもある。


ハギトモさんの『水ケーション』

ユニークな取り組みを始めたのは競泳で2000年シドニー・オリンピックに出場した萩原智子さんだ。『水ケーション』と命名した水を大切にしていく活動である。

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トークショーで自身の体験を語る萩原智子さん(水泳)

選手生活23年、ずっと水と親しんできた。「水があるのが普通」だと信じて疑わなかった萩原さんが、「水泳はなんて水を贅沢に使うスポーツなんだ」と気づかされたのは、現役生活を終えた後。健康のために始めた山登りの影響だった。「山に入ると水が簡単に手に入らないんです。山小屋でオーナーから水のない生活、水を運び上げる大変さを伺い、改めて水の大切さ、ありがたさを感じました」

『水ケーション』のスタートだった。水ケーションとは、水を通した「コミュニケーション(通じ合う)」と「エデュケーション(教育)」とをかけた造語である。


森と水のつながりを学び、感謝する

2015年、一般社団法人「森と未来」代表理事の小野なぎささんを誘い、水を大切にし、豊かな水の源である森を守り育てる“教室”を始めた。小野さんが森を語る「森の授業」を行い、萩原さんが水泳教室を通して「水の大切さ」を教える。ときに森を歩き、沢を登り、水の流れに身を浸す。森と水のつながりを肌で感じ、木の種をまき、自然への感謝を学ぶ取り組みである。山梨や高知、広島や群馬、和歌山など全国十数か所で教室を開講し、「これからもっと『水ケーション』を広めていきたい」と話す。

水はときに台風や洪水、津波などによって甚大な被害を及ぼす。しかし、人間の営みになくてはならないものでもある。水を大切にしていくためには、源となる山、森を守り育てていかなければならない。萩原さんの取り組みは水泳選手ならではの視点に始まり、多くの人たちを巻き込んだ活動となってきた。森と水に感謝し、守り育てていく『水ケーション』は、森と水が豊かな日本にとって大切なものは何かと改めて問いかけてくる。


「HEROs」の活動は…

もうすぐ日本財団が主催する「HEROs AWARD 2019」が行われる。2017年にスタートした「HEROs Sportsmanship for the future」は、アスリートによる社会貢献の促進を掲げ、「ACTION」「ACADEMY」そして「AWARD」で構成される。実践、教育に加えて評価することによってアスリートの参画を促している。

今年も審査委員会で選出した優れた活動を表彰する。さて、今年はどなたのどんな社会貢献事業が選ばれるのか、大いに注目したい。


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