2018年11月21日(Wed)
まずは国内の潜在労働力の活用を
600万人、5年掛かりでモデルづくり
日本財団 WORK!DIVERSITY 多様な人々が働ける社会の実現を目指す「日本財団 WORK!DIVERSITY」プロジェクトが11月20日スタートし、記者発表と全体委員会の第一回会合が東京・赤坂の日本財団ビルで行われた。少子化に伴う労働力不足で外国人労働者の受け入れが検討される中、プロジェクトでは約600万人に上る国内の潜在労働力が活躍できる社会のモデル構築に5年掛かりで取り組む予定で、全体委員会の会長を務める清家篤・慶応義塾大前塾長は「人手不足、高齢化の中で、あらゆる人の潜在能力を活用できる条件がそろってきた。働きにくさに対する初の横断的プロジェクトにしたい」と語った。 |
民間調査などによると、わが国の労働力は2030年に600万人以上不足する。補充策として外国人労働者の受け入れや定年延長、女性の就業率アップ、ロボットの活用などが検討されているが、プロジェクトではこれとは別に、障害者やひきこもり、ニートなど「働きづらさ」を抱えるマイノリティが1500万人に上ると積算。それぞれの重複分や就労が物理的に不可能な人を差し引いても、なお約600万人は就労可能な潜在労働力と位置付け、全国各地の支援組織のネットワーク化や札幌、高知両市など全国20地域でのモデル事業などを経て最終的に実現性が確認できた分野について制度化に向け政府に提言などを行う計画だ。 記者発表で日本財団の笹川陽平会長は「外国人労働者の受け入れに反対するのではなく、まず国内にある潜在労働力を活用するのがプロジェクトの狙い」とした上で、「日本財団一億総活躍計画として取り組みたい」と説明した。これを受け全体構想を検討する「ダイバーシティ就労研究プラットフォーム」が立ち上がり、初の全体委員会の開催となった。 プロジェクトには企画委員会や部会も併設され、学識者やNPO関係者らが参加、制度設計に役立つ海外事例や財政面などを多角的に研究するほか、基本構想を構築する全体委員会には厚生労働省の元、前事務次官である村木厚子、蒲原基通両氏も参加。厚労省の方針とも調和が図られる見通しで、記者発表には鈴木俊彦・現事務次官も出席、「これまでの社会保障は金の確保が課題だったが、これからは人の確保が問題となる。プロジェクトは誠に時宜を得た試み」とエールを送った。 わが国では障害者総合支援法に基づき就労移行支援事業所が全国3500カ所、労働契約を結んで働くA型事業所が約4500カ所設けられ、「働きにくさ」を抱える障害者の就労支援の整備が進んでいる。日本財団も2015年に立ち上げた「はたらくNIPPON!計画」で障害者の就労モデル構築に取り組んでおり、プロジェクトの全体計画もこうした分野を参考に進められる見通しだ。 |