2018年06月14日(Thu)
旧豊後森機関庫に面しカフェや交流施設
障害者雇用と観光を同時に進める狙い
大分・玖珠町地方創生プロジェクト 大分県玖珠町に残る登録有形文化財「旧豊後森機関庫」のすぐ隣に、障害者の雇用と観光を同時に進めるカフェ・レストランと多目的交流施設が完成し、6月10日、開所式が開かれた。日本財団障害者就労支援プロジェクト「はたらくNIPPON!計画」の同県で初の取り組みであるとともに「玖珠町地方創生プロジェクト」の一環として整備された。 みんなで風船を上げて開所を祝った |
日本財団と玖珠町、社会福祉法人「暁雲福祉会」(大分市)が連携し、町を代表する観光資源である旧豊後森機関庫を核に、観光文化の新たな拠点をつくり、交流人口の増加を目指す。併せて障害者の就労機会を確保し、障害のある人への理解促進を図る事業だ。 「玖珠・森のクレヨン」(手前左)と「森の米蔵」(同右)。建物わきには旧機関庫と転車台などを間近に見ることができる展望台も 旧豊後森機関庫は1934(昭和9)年、福岡県久留米市と大分市を結ぶ久大本線の全線開通に合わせて完成した蒸気機関車の車両庫。70(同45)年のディーゼル化に伴いその役目を終えた。九州で唯一現存する扇形機関庫として、旧機関庫と転車台は2012(平成24)年、国の登録有形文化財になった。年間3万人が訪れるが、滞在時間が短く、これを延ばすことが課題となっている。 展望台からは久大本線を挟み「旧豊後森機関庫」と展示機関車が間近に臨める 暁雲福祉会の丹羽一誠・理事長によると、「豊後森機関庫公園」の整備計画を進める玖珠町から、久大本線を挟み旧機関庫の前面に2棟並び立つ土蔵造りの「旧森南部米倉庫」跡地(町所有)の利活用について誘致があり、建物の無償譲渡を受けて2棟ともリノベーションした。建設費用は日本財団「はたらくNIPPON!計画」の助成と自己資金で賄った。 テープカットの様子 完成したカフェ・レストラン棟の「玖珠・森のクレヨン」は、特Aランクの玖珠米を使用した食事や、機関車にちなんだ多彩なメニューを提供し、ここでしか体験できない味で地産地消を目指す。36席の店内からは「特急ゆふ号」などの電車を間近に見ることができる。営業時間はベーカリーが10時〜17時、カフェ・レストランが11時〜17時。定休日は月曜(祝日の場合は営業)と火曜。 もう1棟の多目的交流スペース「森の米蔵」は、地域の交流拠点として展示や催しなどに活用する。2棟は障害者就労継続支援A型と就労移行支援を併せた総称「ウインド2」の事業所として20人の雇用を目標としている。 玖珠・森のクレヨンを訪れれば、通過する電車が目の前に 開所式で玖珠町の宿利政和・町長は、元玖珠町森南部地区に精米所と米蔵があり、譲渡を受けた町としても、これを生かし、観光活性化に取り組みたいとの考えがあった。各方面から障害者が働ける施設を設けたらどうかとの提案もあり、前任の朝倉浩平・前町長肝いりの中で構想を練ったと紹介し「何としても全国のモデルとなるような施設運営に発展させていきたい」と抱負を述べた。 米倉庫を修復・再生した森の米蔵の内部 日本財団の尾形武寿・理事長は「ここまで来るのは資金と情熱があれば、何とかなる。問題は、いかに発展させ維持していくかだ」と、関係者のこの後の覚悟と責任を強調し「ここまできたのがまず第一歩、これから長い間、これを運営していき、町民のために、ここで働く皆さんのために、そして日本中のモデルとなるように、この施設をかわいがり、育てていってほしい」と呼び掛けた。 丹羽理事長は、暁雲福祉会の法人理念は「人間礼拝」(たった一つの尊いいのち。お互い支え合って生きていきたい)だと紹介し「玖珠町、日本財団、ウインド2で働くみなさんらと共に、力を合わせて、魅力ある地域創生、実践モデルづくりに取り組んでいきたい」と話した。 来賓の広瀬勝貞・大分県知事(安東隆・副知事代読)は「障害者雇用と地域振興を同時に進める地方創生プロジェクトの成功例となるように」期待する祝辞を寄せ、プロジェクトを応援してきた衛藤征士郎・衆院議員は「知的障害者の皆さんの生活と心に寄り添い、みんなで支え合っていくことが一番大事だ」と訴えた。 ● はたらくNIPPON!計画(日本財団公式ウェブサイト) ● はたらくNIPPON!計画 ウェブサイト |