2018年06月11日(Mon)
「料理は人を幸せにできる」
トップランナートークで土井善晴さん
異才発掘プロジェクト ROCKET 秘めた能力がありながら、さまざまな理由で不登校傾向にある小中学生に、学校でも家でもない、新しい学びの場を提供する「異才発掘プロジェクト ROCKET」を共同で進めている日本財団と東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)は6月7日、トップランナートークを東大先端研ENEOSホールで実施した。「食べることで 感じること」と題して講義した料理研究家・土井善晴さんは「料理は人を幸せにできる。みんな料理ができるようになってほしい」と呼び掛けた。 |
「一人走り続けるトップランナーが語る強烈なメッセージは彼らの生き様そのもの。その言葉は、ためらう子どもたちが前に歩き始めるための、背中を押してくれる勇気となるだろう」。こうした考えの下に、プロジェクトは大きな柱の一つとして、各分野で活躍するトップランナーによる特別授業を実施し、子どもの突き抜けた興味に応え、学ぶ意義を教えている。 当日はこれまでに選抜した1期生から4期生までのスカラー候補生(小学3年〜中学3年)と親、さらにROCKETプログラムと連携して、特別な才能に着目した新たな教育システムの構築を目指す東京都渋谷区の児童・親・巡回指導教員ら計40人を含め、会場ほぼ満員の約200人が聴講した。 土井さんは「普通の動物が食べているものと、人間が食べているものとの違いは何か」と問い掛け「刺身だって、ただの生ではなく、安心して食べられるようにする技術がある。刺身もちゃんとした料理だ。私たち人間が食べる、ということは、料理をしたものを食べる、ということだ。だから料理をする、ということが、ほかの動物と違う」と強調した。 さらに土井さんは「あの時いい匂いがした、ああおいしかった、という思い出は、一緒にその場にいた人しか共有できない。一緒にいるってすごく大事だ。料理を作り一緒に食べる、そして人に作ってあげるということは、人を幸せにすることができる。10人前作るのも2人前作るのも手間は変わらない。それぐらいのことは誰でもできる。全員が持っている能力だ」と指摘し、みんなが料理ができるようになることが料理研究家としての「私の願いだ」と訴えた。 続いて土井さんとROCKETプロジェクトディレクターの中邑賢龍・東大先端研教授の討論が行われ、会場からの質問に土井さんは「器用でなくていいし、失敗してもいい。自分がいいな、と感じることをすればいい。商品のような同じ大きさのおむすびをつくる必要もない。盛り付けだって、見栄えを良くしようとすると、逆に見栄えが悪くなる」と語り掛け「地球の引力に任せたらいい」と述べて、来場者を笑わせた。 この後、会場を移して吉野源三郎氏著「君たちはどう生きるか」と同じタイトルで討論会を開催。20人を超えるスカラー候補生が参加し、本音トークを繰り広げた。この日は6月定例プログラム(6日〜9日)の初日だった。 ● 異才発掘プロジェクト ROCKET(日本財団公式ウェブサイト) |