2018年02月08日(Thu)
ハンセン病回復者の生活環境改善を訴える
笹川会長、インド東部ジャールカンド州で
回復者らのコロニー訪問、住民を激励 日本財団の笹川陽平・会長は2月1日から4日まで、インド東部ジャールカンド州を訪れ、ハンセン病回復者とその家族の生活環境改善を州政府に訴えた。診療所やハンセン病啓発キャンペーンを視察。回復者らが暮らすコロニーと呼ばれる集団居住地を訪問し、住民を激励した。 ニルマル・グラム・ハンセン病コロニー |
インド保健省の報告によると昨年度、同州で発見されたハンセン病の新規患者は全国の約4.61%当たり6253人。人口1万人のうち患者の割合を示す有病率は0.92で、世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧基準1.0未満は達成しているものの、インド全体の0.66を上回っている。病気を制圧するという課題がある一方で、病気が治ったのにもかかわらず、ハンセン病回復者とその家族に対する差別やスティグマ(社会的烙印)の問題も深刻だ。彼らは、故郷の村を追われ、コロニーで貧しい生活を余儀なくされている。州内には56カ所のコロニーがあり、約6900人が暮らしている。そのうち約1300人が、支援を必要とする高齢者や障害を持ったハンセン病回復者だ。 チャンドラバァンシ州保健相(左)に説明するハンセン病回復者協会のメンバーら 首都デリーから飛行機で2時間弱。空港で出迎えてくれたインド・ハンセン病回復者協会(APAL)の同州リーダーであるジャイヌディン氏と、デリーから同行したAPALのベヌ・ゴパール副会長とともに、空港から直接、州幹部のもとを訪れた。同州におけるハンセン病回復者の現状を、ラフバー・ダス州首相、ラムチャドラ・チャンドラバァンシ州保健相、ルイス・マランディ州社会福祉相らに、ジャイヌディン、ベヌ・ゴパールの両氏が説明。回復者への特別支援金の支給、コロニーの医療・教育アクセス向上、住居環境改善などを盛り込んだ要望書を提出した。 ダス州首相は「州内56カ所のコロニーにいる特別支援金が必要な約1300人がより良い生活ができるように、他の州の枠組みを参考に特別年金の仕組みを作っていきたい」と前向きな発言をした。 保健ボランティア「アシャ」を激励 インドではナレンドラ・モディ首相が「2030年までにハンセン病をなくすこと」を目標に掲げ、政府主導でさまざまな施策を行っている。その一つが「アシャ」と呼ばれるハンセン病患者発見キャンペーンに協力する保健ボランティアの全国的な配置だ。アシャはヒンディー語で「希望」を意味している。 滞在中、州内ランガール県の診療所を訪問し、アシャを激励した。同州のアシャは1人当たり担当100世帯を一軒一軒回り、皮膚などに症状が出ていないか確認し、ハンセン病の疑いがある人を地域の診療所に連れてくる活動をしている。 ハンセン病啓発キャンペーン「スパーシュ」を実施する高校を訪問 さらに政府主導で実施しているのが、ハンセン病啓発キャンペーン「スパーシュ」。ヒンディー語で「触る」という意味で、ハンセン病を触って調べることに由来している。今回訪問したガンジー・メモリアル高校では、校庭に集まった生徒約500人がハンセン病の正しい知識を社会に広めていくため「ハンセン病は治る病気」「薬は無料」などメッセージの確認を行った。 生徒を前に笹川会長は「インドという国をつくったマハトマ・ガンジーのかなえられなかった夢が、ハンセン病をなくすことでした。皆さんは、そのガンジーの夢を引き継いで、正しい知識の普及に協力いただけることをうれしくしく思います」とあいさつした。 ニルマル・グラム・ハンセン病コロニーでは、集まった住民と伝統舞踊の披露を楽しんだ 最終日には、州都ラーンチーから車で3時間、ボカロ県にあるニルマル・グラム・ハンセン病コロニーを訪問。色鮮やかなサリーで着飾った女性たちを中心にコロニーの住民約300人が出迎えた。笹川会長は、インド政府や州政府が、回復者の生活環境改善に尽力している状況を説明し、回復者を激励するとともに、回復者の子どもたちである若い世代に向けて「皆さんが中心となって、コロニーを良くしていってください」とエールを送った。 青年グループの代表は「コロニーから『ハンセン病』という名称をなくしたい。自分たちの現状を変えるには、自分が変わらないといけない。自分たちが変わることで、コロニーの状況を良くし、回復者とその家族が社会から尊敬され、社会に参画できるようにしていきたい」と力強く語った。 ● ハンセン病〜病気と差別をなくすために〜(日本財団ウェブサイト) |