2017年10月06日(Fri)
2030年に向けた海洋開発の技術戦略
中間報告に立った日本財団の海野光行・常務理事は、日本が30年に海洋石油・ガス産業の技術的イニシアティブを取り、市場をけん引する存在になるためには、従来の海洋開発産業が個々の技術を開発するだけでは不十分であり、幅広い領域の産学官公が連携し、さらに「オールジャパン」ではなく、海外の産学官公との「グローバル」な連携によって参入することが重要だと指摘した。
![]() 技術戦略づくりの中間報告をする日本財団の海野光行・常務理事 その上で、コストの低減やデジタル化への対応、異分野技術の適用−など世界共通の技術テーマを挙げ、これらのテーマを解決するために必要とされる取り組みとして(1)現場ニーズの把握(2)日本の技術と海洋石油・ガス産業を「つなぐ」仕組みの整備(3)海外と連携した技術力の向上(4)研究開発に必要な資金支援と実証の場の確保(5)標準化などルール作りによる支援(6)中小、ベンチャー企業の参入促進(7)産学連携による人材確保−の7つの方策を提言した。 ![]() 最先端の専門家6人が登壇したパネルディスカッションの様子 発表を受けて「2030年に求められる将来技術」と題したパネルディスカッションが行われた。海洋開発技術戦略検討委員会座長の鈴木英之・東京大学大学院工学系研究科教授による司会進行の下、北海やメキシコ湾地域などで海洋石油・天然ガス開発に関わる最先端の専門家6人がパネリストとして登壇。デジタル化と自動化▽日本技術の市場への展開▽日本企業の強みと弱み−などのテーマで、踏み込んだ討論を展開した。 これに先立ち6人は一人ずつ講演も行い、石油やガスの将来供給と需要の見通し、コスト低減、デジタル化と持続可能性、消費者ニーズへのスピード感を持った対応など、多彩な技術課題を提供し、200人を超える参加者と情報を共有した。 ![]() 主催者あいさつをする笹川陽平・会長 シンポジウムの冒頭、日本財団の笹川陽平・会長は、日本の排他的経済水域内に天然ガスや希少金属が豊富にあることが分かってきているのに、海洋開発市場への日本の関与は限定的で、技術開発を支える人材も、人材育成を行う場も不足していると述べ、そのために日本財団は産学官公連携した国内唯一の統合的な組織「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」を設立し、人材育成に取り組んでいると話した。 さらに「日本財団は9月5日に、世界の海洋開発をリードしている地域の一つであるスコットランドと共同の技術開発プロジェクトを始めた。互いの強みを生かして将来の海洋開発にイノベーションを起こし、共同プロジェクトを通して、将来の原動力となる人材の育成をより進めていくことを目指している」と紹介し、日本が持っている技術的な強みを取り入れて将来の海洋開発をリードしていくことの重要性を訴えた。 来賓あいさつで石井啓一・国土交通大臣が、次期海洋基本計画でも海洋の産業利用の促進が主要テーマとなっていると紹介し、日本財団の取り組みとの相乗効果で、日本が海洋開発分野で存在感を発揮できるようにしていきたい、と話した。 ● 日本財団 オーシャンイノベーションコンソーシアム ウェブサイト |