
披露されたしゃちほこ2対4本
熊本城天守閣のしゃちほこは、日本財団が熊本市に助成する熊本城再建支援30億2,505万円のシンボル的存在で、大小天守のしゃちほこ(2対4本)の復元・製作に2,505万円を助成、今春発注していた。大天守のしゃちほこ2本は高さ119センチ、幅47センチ、奥行き73センチ、重さ100キロで瓦製。小天守の2本は高さ86センチ、幅38センチ、奥行きは60センチ、重さ70キロ。
お披露目会で、大西熊本市長は「昨年4月の地震で、最初に熊本城にしゃちほこがない姿を見て愕然とした。しゃちほこは熊本のシンボルで、しゃちほこがあることが我々にとっての誇り。そのしゃちほこを藤本さん親子2代で製作していただいた。国内外のたくさんの人に来てもらい、復興のシンボルとしてみていただきたい」とあいさつした。
続いて笹川日本財団会長があいさつし、「県民の心のふるさとである熊本城を復興しないといけない、と地震発生直後に30億円を出すと発表し、全国的に地震への関心が高まって良かった。一日も早くしゃちほこが天守閣に取り付けられ、再建に協力しようという気持ちが盛り上がることを期待したい」と述べた。

あいさつする笹川会長
日本財団は地震発生直後、熊本城再建を含め、NPO活動支援や弔慰金、家屋損壊見舞金などで総額93億円の支援を発表したが、その後も大雨被害などが重なり、支援総額は128億円に膨らんだ。
この後、しゃちほこの復元・製作に当たった藤本康祐代表(57)が製作の苦労話などを披露した。藤本さんは「鬼師」と呼ばれる鬼瓦製造職人の一人。全国で約150人いるとされるが、熊本県では藤本さんだけという。高校卒業後、父勝己さん(7年前に死亡)の後を継いで鬼師として働いてきた。長男の修悟さん(29)も調理師の仕事を辞めて5年前から後継者に。現在は親子二人で仕事をしている。

長男の修悟さん(右)と一緒にしゃちほこを見る康祐さん
藤本さんに今回の仕事の打診があったのは地震から4ヵ月後。その時の気持ちについて藤本さんは「本当ですか。ぜひつくりたいと思った。だが、まだ余震が続いていたので『もし、作っている最中に地震があったらどうしようか』と悩んだ」と語る。そんな時、全国の鬼師仲間から「地震で悩んだ事があるが、そんなことでひるむな」と激励の電話があり、「熊本で何とかしよう」と仕事を引き受ける気になったという。
その後、キャスター付きの台車の上で製作すれば地震が来ても大丈夫では、と思い、調べてみると地震が来ても崩れないと分かり、不安が払拭されたと語る。
しゃちほこの製作は今年3月から始まったが、「製作中は寝ている時も昼食をとっているときも『今地震があったらどうしよう』と考え、気が休まらなかった」と振り返る。
7月には製作したしゃちほこの乾燥が始まり、8月中旬に完成した。「今は安堵感で一杯です」と顔をほころばせ、「皆さんにしゃちほこの表情を近くで見て欲しい。しゃちほこというと、目が怖いと思われがちだが、これはひょうきんな顔をしている」と言って笑わせた。
今回の仕事の感想を聞くと、「40年近くやっているが、今回ほどプレッシャーがあったのは初めて。期限ぎりぎりまで粘ってやったので、うまくできたと思う。最近は瓦を使わないで家を建てる人が多くなり、仕事が減ってきているので、少しでも我々の仕事をアピールできればと思って頑張った」と語り、満足した様子だった。