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若者・子どもの声を聞かずして居場所づくりは始まらない [2024年07月30日(Tue)]

 昨年度、日本郵便年賀寄付金助成事業ぴかぴか(新しい)の多様な子どもの育ち応援事業内で「通信制/定時制高校に通っている生徒が自由にすごせる居場所についての調査」を行いました。アンケート作成と集計は静岡大学情報学部の笹原恵教授とゼミ生の皆さんにご協力いただきました。2023年12月15日〜2024年1月31日という1ヶ月半の収集期間内に通信制/定時制高校生448名(定時制公立高校生約5割、通信制私立高校生4割弱)の声が集まりました。

◆通信制・定時制高校の需要の拡大
 何らかの理由で学校に通えなくなった、もしくは既存の形の学校という場に通わない選択をした子ども達が進学先として通信制高校を選択する、というケースが近年増えてきています。
 通信制高校は、平日毎日朝8時晴れから夕方まで学校に行き、決められた教科を勉強する、という今までの『普通』とは違い、授業や登校の有無を選択するという点で自由度が高く、生徒自身で自分に必要な学びを選んでいくことが出来るという特徴があります。
 また、定時制高校については通常夕方から夜夜に学校に通う形をとり、4年で高校を卒業することができ、働きながら通う生徒も多い状況です。外国ルーツの子どもたちが通う場合も多く、同じルーツ、コミュニティ内で同じ定時制高校に進学するというケースもあります。「自分の生活スタイルに合う」「学力に見合う」「働きながら通える」「人間関係の心配がない」というものが進学先の決め手となるようです。

◆居場所は「学校」「家庭」だけで十分か?
 アンケート回答者全体としては7割近い人が学校を居心地の良い場所だと感じているようでしたし、家庭に居心地の良さを感じている人も90%近く、ほとんどの人が居場所であると感じているようです。これだけを見ると、高校生の居場所は家家と学校いすで十分足りているとも捉えられる結果ですが、自由記述欄には「居場所が少ないと感じる」「居場所がない子が行く場所がすくない」「逃げ場所がほぼ無いように感じる。どこに行っても制限が多く感じる。」といった記述も多数見られ、家や学校に居場所を見出せなかった子ども達の安心できる場所わーい(嬉しい顔)をつくることが課題とも言えます。
 現在、浜松市には児童館(乳幼児から中高生が対象の施設)や市民恊働センタービルのフリースペース、クリエート浜松の1階エントランス、ザザシティ中央館5階の交流ロビーなど、子ども・若者が利用できる開かれた場所はあるものの、周知度は全体的に低く「一つも知らない」という人が5割以上も達しています。家や学校以外で行きたい居場所としては、「お金がかからない」「フリーWi-Fi無料があり冷暖房が快適なところ」「長時間いても注意されない」「おしゃべりができる」の割合が高く、自由記述からは「大人が作った居場所は欲しいのと違う気がする」「もっと自由に活動ができる場所が欲しい。例えば音楽活動カラオケが気軽にできる場所や、他校の生徒と交流ができる。」という、子ども・若者が主体となり居場所を作っていく必要性も感じられました。
 
◆今後の活動予定
 2023年度の調査活動は、アンケート結果を単純に集計したものを元に結果をまとめるところまでを行いました。今年度はさらに深く分析を進め、それと同時に上記の結果を受けて、高校生へのヒアリング・地域で居場所づくりを行う方々へのヒアリング耳をすることで子ども・若者が主体となる居場所づくりへの一歩右斜め上となるよう活動をしていきます。
       
(子ども支援事業担当 大山湧希)

N-Pocketの「多様な人々の社会参加を進める活動〜こども編〜」をご紹介 [2024年07月26日(Fri)]

多様な人々の社会参加を進める活動〜こども編〜


夜子ども若者の抱える困難さ夜
 N-Pocketを設立した頃、地域には福祉関係の団体活動を支援する社会福祉協議会しか中間支援的な組織はなく、それ以外の環境や教育、多文化などの団体活動支援を行うための中間支援組織が必要な状況がありました。私たちは中間支援活動を核にして地域の様々な社会資源を繋ぐと同時に「ソーシャル・インクルージョン」を掲げながら、多様な人々の社会参加支援活動を現場で進めてきましたが、その対象の一つが外国ルーツの子どもたちです。

 2000年当時、浜松市の外国人登録は既に総人口の約3%を超えていましたが、その施策は国際交流を越えた多文化共生という視点は十分でありませんでした。N-Pocketはブラジル人学校等に通う青少年を対象に「ブラジル人青少年の意識と就学環境調査」を行いましたが、日本の学校での就学経験があった者の半数強が、言葉の壁によるコミュニケーションの大変さや孤独さ、差別があると回答しました。浜松市も外国ルーツの子どもの教育に関しては喫緊の課題として2011年度から不就学ゼロ作戦に取り組みましたが、今なお外国ルーツの子どもの教育環境改善に課題は多く残り、例えば学校での習字の授業や冬休みの書初めでの「半紙」など習字道具に関わることや宿題の価値などの言語や文化の違い、本人や保護者、学校側の相互理解の不十分さから、子どもへの評価が厳しいものになりがちだと私たちの活動を通して感じるものが多々あります。因みに2022年度では公立中学校からの外国ルーツの子どもの高校進学率は8割(全体98.8%)を超えますが、そのうち3割前後が定時制進学になっています。

 また、経済的困窮状態にある家庭の子どもに対し、市では2021年度に「子どもの未来サポートプロジェクト」を策定し、集団型学習支援教室を21か所に増やしましたが、個別支援や訪問型のものは皆無であるため、様々な理由から通える力のない子どもは利用できず、市のスクールソーシャルワーカーが柔軟に対応できるN-Pocketの無料訪問型学習支援を要請してくることが増えています。学校に通えなくなった子どもたち(小中学生全欠席)は浜松市の場合、2020年度1472人が2022年度には2210人と1.5倍に増えました。

新幹線義務教育後の子どもたち新幹線
 NPOが様々な形で子どものための居場所づくりを行っていますが、家庭や地域で子どもを育む力が弱っている上に、お金で買う子育てや教育サービスが氾濫している社会ではそもそも子育て自体が難しい。「安心して」子育てをしたり、子どもたちが「安心して」居られる拠点・遊びの場が必要だと考え、そのための人材養成や公園を社会に開く事業を市と協働で行ってきましたが、浜松市には保育や放課後児童会などの支援は整っているものの、18歳未満の子どもが使えるはずの児童館は4館しかありません。そしていわゆる学校教育法でいう児童向けのプログラムで運営されているため、ハイティーンの公的居場所は十分にありません。このように外国ルーツの子どもたちの教育環境問題に重ね、中学卒業後の社会支援の薄さやその視点も大きな問題だと思っています。

雷社会の変化と今後の課題雷
 今年度から浜松市の子ども関係の部署名の一つが「こども若者政策課」となりましたが、今までは「育成」という言葉が多く「主体としての青少年」という視点が弱かったと思います。また高校生自身から「稼いでいない子どもは大人に意見を言ってはいけないと思った」という発言もあり驚きましたが、青少年の育ちの状況を知ること、青少年の声を聴くこと、それを社会に伝えることで、青少年の社会参画の一歩を進めたいと思っています。
 今年も訪問型の学習や得意なことを伸ばす支援とハイティーンを対象にした調査活動を続けます。そして中間支援活動として、議員やNPOを交えた円卓会議でそれらから見えてきた課題を共有する予定です。皆さんのご参画をお待ちしております。

(井ノ上美津恵)