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N-Pocketの「多様な人々の社会参加を進める活動〜こども編〜」をご紹介 [2024年07月26日(Fri)]

多様な人々の社会参加を進める活動〜こども編〜


夜子ども若者の抱える困難さ夜
 N-Pocketを設立した頃、地域には福祉関係の団体活動を支援する社会福祉協議会しか中間支援的な組織はなく、それ以外の環境や教育、多文化などの団体活動支援を行うための中間支援組織が必要な状況がありました。私たちは中間支援活動を核にして地域の様々な社会資源を繋ぐと同時に「ソーシャル・インクルージョン」を掲げながら、多様な人々の社会参加支援活動を現場で進めてきましたが、その対象の一つが外国ルーツの子どもたちです。

 2000年当時、浜松市の外国人登録は既に総人口の約3%を超えていましたが、その施策は国際交流を越えた多文化共生という視点は十分でありませんでした。N-Pocketはブラジル人学校等に通う青少年を対象に「ブラジル人青少年の意識と就学環境調査」を行いましたが、日本の学校での就学経験があった者の半数強が、言葉の壁によるコミュニケーションの大変さや孤独さ、差別があると回答しました。浜松市も外国ルーツの子どもの教育に関しては喫緊の課題として2011年度から不就学ゼロ作戦に取り組みましたが、今なお外国ルーツの子どもの教育環境改善に課題は多く残り、例えば学校での習字の授業や冬休みの書初めでの「半紙」など習字道具に関わることや宿題の価値などの言語や文化の違い、本人や保護者、学校側の相互理解の不十分さから、子どもへの評価が厳しいものになりがちだと私たちの活動を通して感じるものが多々あります。因みに2022年度では公立中学校からの外国ルーツの子どもの高校進学率は8割(全体98.8%)を超えますが、そのうち3割前後が定時制進学になっています。

 また、経済的困窮状態にある家庭の子どもに対し、市では2021年度に「子どもの未来サポートプロジェクト」を策定し、集団型学習支援教室を21か所に増やしましたが、個別支援や訪問型のものは皆無であるため、様々な理由から通える力のない子どもは利用できず、市のスクールソーシャルワーカーが柔軟に対応できるN-Pocketの無料訪問型学習支援を要請してくることが増えています。学校に通えなくなった子どもたち(小中学生全欠席)は浜松市の場合、2020年度1472人が2022年度には2210人と1.5倍に増えました。

新幹線義務教育後の子どもたち新幹線
 NPOが様々な形で子どものための居場所づくりを行っていますが、家庭や地域で子どもを育む力が弱っている上に、お金で買う子育てや教育サービスが氾濫している社会ではそもそも子育て自体が難しい。「安心して」子育てをしたり、子どもたちが「安心して」居られる拠点・遊びの場が必要だと考え、そのための人材養成や公園を社会に開く事業を市と協働で行ってきましたが、浜松市には保育や放課後児童会などの支援は整っているものの、18歳未満の子どもが使えるはずの児童館は4館しかありません。そしていわゆる学校教育法でいう児童向けのプログラムで運営されているため、ハイティーンの公的居場所は十分にありません。このように外国ルーツの子どもたちの教育環境問題に重ね、中学卒業後の社会支援の薄さやその視点も大きな問題だと思っています。

雷社会の変化と今後の課題雷
 今年度から浜松市の子ども関係の部署名の一つが「こども若者政策課」となりましたが、今までは「育成」という言葉が多く「主体としての青少年」という視点が弱かったと思います。また高校生自身から「稼いでいない子どもは大人に意見を言ってはいけないと思った」という発言もあり驚きましたが、青少年の育ちの状況を知ること、青少年の声を聴くこと、それを社会に伝えることで、青少年の社会参画の一歩を進めたいと思っています。
 今年も訪問型の学習や得意なことを伸ばす支援とハイティーンを対象にした調査活動を続けます。そして中間支援活動として、議員やNPOを交えた円卓会議でそれらから見えてきた課題を共有する予定です。皆さんのご参画をお待ちしております。

(井ノ上美津恵)