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3/3シンポジウム 分科会「学習支援」 [2019年03月12日(Tue)]

代表の井ノ上です。ほっとけない貧困の子ども2019シンポジウム、午後の三つの分科会でも子ども支援の先駆者である方々をお招きしました。

A分科会「学習支援」では「困難さを抱える子どもの支援 〜外国につながる子どもの個別多様性に向き合って〜」という題で、文科省総合教育政策局の外国人児童生徒等教育支援プロジェクトオフィサーの近田由紀子さんにお話を伺ったあと、5グループで支援者として抱える悩みや課題、自分たちにできることという内容で意見交換、最後に各グループで出た内容を全体で共有しました。

近田さんは、31年間浜松の小学校教諭として、CLD児(Culturally and Linguistically Diverse Children=外国ルーツを持つ子どもたち)の困難を現場で目にして支援を続けてきました。子どもたちの姿を具体的に紹介しながら、「子どもたちをサポートする中で思いもよらないトラブルが起こるが、そうしたことを通じて多様な見方考え方を学ぶことができた。日本を本当の意味で豊かに、強くしてくれる存在ではないか」というお話が心に残りました。

困難を抱えた子どもたちのために何ができるかを考えるとき、個別に多様な子どもたちを理解し、個々のつまずきがどこにあるのか、あらゆることに目を向けるために情報と想像力が必要です。

例えば「外国にルーツを持つ子」という括り方では間違いが起こります。来日年数・滞在期間・年齢、成育歴・発達特性・言語力、来日前の教科学習経験・基礎的学力・在籍学級での学習参加状況、家庭環境・保護者の願い(キャリアの多様な選択肢など)、言語・文化的背景、社会経済的背景、社会心理的側面…皆一人ひとり違うので、非常に多面的な情報が必要になってきます。

CLD児への教育現状では、小・中学校の日本語指導が必要な児童生徒のうち、教科の補習など特別な指導を受けている割合は、外国籍で77%、日本国籍で74%であり、約1/4の子どもが支援を受けていない状況にいます。年々支援対象の子どもが増えて、支援が追い付いつかない現状ですが、平成29年度改定の学習指導要領には「日本語の習得に困難がある児童生徒には、特別な配慮が必要」と明記され、学校の中も意識が高まっているという嬉しいお話もありました。

支援者の姿勢として、CLD児の日本語習得には個別支援よりも、学級や地域社会の中でシャワーのように日本語を浴びると効果があること、そして勉強に限らず、人との関りの中で生きる力をつけていくことが大切なので、心の動きは社会の中、とりわけ人との関り合いの中で発達するという視点をもつこと、さらに子どもが情動のコントロール力を育むために、情動を抑える練習させてもダメで、自分のことを他者にわかってもらった経験があってこそ、ということも知っておかねばならないというお話もありました。

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意見交換では、既に子どものサポートをしている経験値の高い方が多く、発表内容はとても参考になりました。外国ルーツの子どもたちと一括りできない多様さやアイデンティティの不安定さからくる問題にどう対応するべきか、世帯状況も把握できず、民生委員として何が必要なサポートかわからないこと、それでも一番大事なのは信頼できる大人の存在で、さりげないアセスメントができる関係をつくっていくことの大事さが語られました。

現在は支援員で当事者でもあった参加者からは、サンズイが水をあらわすなど漢字の部首に意味があることなど、日本人にとっては当たり前のことも当たり前と考えず、そこから教えてほしいとか、学習定着については、宿題以外に勉強をしなかったが、高校受験の準備をしている周りを見て慌てて勉強して間に合った体験について語られました。
様々な立場で子どもたちに関わっている皆さんと出会える場にもなりました。ありがとうございました。
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