発達障害のある子どもたちの「困った」をサポートするICT環境・浜松事情 [2020年12月05日(Sat)]
◆ 違う立場、異なる事情を知るために
発達障害などによって、学習に困難を抱える子どもたちの可能性を高める手段としてICTの活用に注目が集まっている。 N-Pocketは、県の障害者マルチメディア情報センター管理運営経験もあり、「ICTが障害のある人たちの生活や教育を支える可能性」を実感していたが、センターは閉鎖され、具体的に伝えられる貴重な場を失ってしまった。 しかし、障害のある子どもたちの保護者団体や先生たちとの出会いもあり、浜松の現状を知りたいと、発達障害の子どもをもつ二つの保護者団体や中学の通級担当の先生、N-PocketのICT事業担当者による異なる立場からの情報交換会を開いた。 ◆ 「アクティブ」奈良さんのお話 会員の子どもたち数人がスケジュール管理や漢字の書き順アプリを活用しているが、大半はデジタル機器を使っていないそうだ。その理由として、勉学に困り感があるが、本人がクラスの中で自分だけタブレットを使うことを嫌がったとか、読み書き計算に苦手さはあるもののそれが障害レベルとの診断がつかなかったなどがあげられた。 神奈川県の高校では、教えている箇所をモニターへ映しだす「視覚支援」と2名の担任によるチームティーチングでの「声かけ支援」が行われている授業を見学。また、市の障害福祉課主催の意見交換会でもUDトークによる「視覚支援」を自身が体験。このような「支援」は話を聞いて理解するのは困難でも文字情報は理解できるタイプの発達障害の子の学習にも有効であると感じたそうだ。 ◆ 「葉っぱ隊」服部さんのお話 葉っぱ隊のメンバーは、東京大学先端科学技術研究センター平林ルミ先生のディスレクシアホイールや動画、NPO法人EDGE等から情報を得て、家庭で親ができる、子どもに適切な支援法について勉強しているそうだ。 実際、授業中のアプリやタブレットの使用については、担任からクラスに説明もし、友達からの理解も得られて使えることになった。しかし、他の生徒の気が散るという理由で席を移動させられるなど、配慮を逆に求められることも多く、後に不登校になってしまったなど複数の事例をあげられ、合理的配慮とは何かについて問題提起された。 ◆ 通級担任の井口先生のお話 コロナ禍でリモート授業を余儀なくされたこともあり、浜松市では教員にタブレット端末を一人一台貸与し、教室にも大型スクリーンが整備され、リモート朝会や教科書を映しながらの授業は定着したそうだ。また、他校通常級での事例だが、タブレットを利用した話し合いに人前で話すことが苦手な子も参加できたといううれしいお話も。また来年度中に市内生徒たちに配布されるタブレットの有効な活用方法を考えていきたいと話された。 ◆ N-Pocket島田から デジタル機器のユニバーサルデザイン化が進み、文書を読み上げたり、音声で入力することも簡単にパソコンやiPad本体で設定できることや読み書き障害がある場合に役に立つOneNoteやデージー図書などのアプリ紹介をした。またN-Pocketも毎年参加している「ATACカンファレンス」では最近特に発達障害がある人の生活を支える先駆的支援技術情報が手に入ることや、東大先端研とソフトバンク等が協働して進める「あきちゃんの魔法のふでばこプロジェクト」を紹介。これは学校などの教育現場で多様な支援機能がつまったタブレットを使って行うプロジェクトで、ATACでときどき興味深い成果が報告される。 ◆ ポイントまとめました! ・子どもの困り感と状態をアセスメントし、ツールとマッチングできる人・機関が欲しい ・教室は「皆と違うこと・もの」を安心して受け入れられる場所でいてね ・特別支援が必要な子に適切なアプリが多く、アクセシビリティやユーザビリティに優れているタブレット=iPadが安心だね 事業名:発達障害のある子どもたち尾学びと育ちを支えるICT支援技術者養成セミナー 第一回「情報交換会」 (10月31日ズームによる開催) 主催:浜松NPOネットワークセンター 助成:静岡県西部しんきん地域振興財団 文責:代表理事 井ノ上 美津恵 |