ヴァイオリニストの戸原直さんから7/9の公演に向けて、メッセージをいただきました。戸原さんにとっての「室内楽」とは?プロフィールとともに、戸原さんの肉厚なメッセージをぜひご一読ください!
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こんにちは!ヴァイオリンの戸原直です!
Music Dialogueに参加するのは初めてですが、多くの知人友人が既に参加していて、その様子を見ていました。誤解を恐れず言うならば、僕はMusic Dialogueのことを「なんだか変わってる、でも面白そうな企画とその人達」と思っていました(笑)。そんな興味を惹かれていた企画に参加することが出来るのは、大きな喜びです。
僕が普段どんなことを考えて暮らしているのか、というお題を頂きましたので、今回は「室内楽」が僕にとって特別なものになった、そのきっかけのお話をさせて下さい。
僕が大学二年生になった時に、初めて自分達で声を掛け合って弦楽四重奏のグループを組みました。合わせをしてはレッスンを受けてを繰り返して、未熟で壁にぶつかりながらも充実した1年間を共に過ごしました。そして、年度末の学内での演奏会に出られることになったのですが、三年生からはそれぞれ別のメンバーと新しいグループを組むことになっていたので、その4人としては最後の演奏の機会となりました。演奏した作品は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番。僕は1st Vnを弾きました。
その日も本番前に楽屋でいつものように準備をして、舞台に上がり拍手を頂きながらお辞儀をする、そして椅子に座る。そんないつも通りの流れに乗って、皆で演奏を始めました。
しかし、その日の演奏はいつもと違いました。他の3人の音がよく聴こえて、僕は身体的にも精神的にもリラックスして解き放たれていて…皆で生み出した音が僕の身体の中深くの「何か」に触れて、そこからまた活力が湧き上がり身体を通して音が生まれる…音の広がりが会場を満たして、聴いて下さっている方々との一体感を感じる…僕の拙い言葉では表現しきれないのですが、それは今でも決して忘れることのない不思議で幸福な体験でした。
共に演奏した3人や聴いて下さったお客様が、その演奏に対してどんなことを感じたのか、実際のところ僕には分かりません。ですが、あの感覚はきっとその場にいた全ての人達が共有出来ていて、それが出来たのはその場にいた一人一人のおかげである…そんな確信に近い思いを僕は未だに抱いています。まさに「一期一会」の出来事だったというわけです。
ちょっと長くなってしまいましたが、これが僕にとっての音楽の「原体験」の一つで、室内楽への愛情の源なのです。
もちろん、室内楽にしか気持ちが向いていないわけではなく、僕はオーケストラやソロにもそれぞれ魅力を感じています。実際に、オーケストラやソロの演奏でもそれぞれ忘れられない大切な体験があります。
しかし、やはり初体験というのは特別なもので、それを与えてくれた室内楽は僕にとって思い入れが深いのです。そして、あの時とまた同じ体験をしたい…いや、あれを上回る何かを体験したい!という思いが、今も僕を突き動かしているのです。
今回の演奏会でも、素晴らしい共演者と聴きに来て下さるお客様と共に、「一期一会」な音楽体験が出来ることを願い、その日を心待ちにしております。。。
戸原直(ヴァイオリニスト):1993年2月9日に東京都八王子市に生まれ、大学4年生の途中まで八王子市の南大沢で過ごす。母はピアノとソルフェージュを学び、近所の子供達の先生をしていた。父は大学生の当時食費をレコード代に注ぎ込んだ音楽愛好家で、職業は大学教師。アマチュアだが何故か父の方が色々詳しい。幼稚園の頃にピアノを始めるが熱意と才能は無かった。
小学校に進学するとともに、「一番下の子供にヴァイオリンを習わせる」という両親の方針により、自らの意志無くいつのまにかヴァイオリンを習い始める。
ヴァイオリンを弾くことはどちらかと言えば好きだったが、練習は出来るだけしたくなかったため、あの手この手を使って練習時間を短くすることに工夫を凝らす毎日を過ごす。
小学生のいつぞやの頃に卓球が好きになり、二分の一成人式という10歳になる学年の時の催しで将来の夢について作文を書く。内容は「卓球選手になること」。ちなみにこの頃に近所のユースオーケストラに入団し、オーケストラに親しみを持つようになる。
中学校に入り卓球部に入部。水曜日の休み以外は土日も含めてひたすら部活という卓球漬けの日々を過ごす。この頃は間違いなく楽器と弓ではなくラケットとピンポン球に触れる時間が長かった。最高成績は個人で八王子市ベスト16(もしくはベスト8?)、学校の団体メンバーとしては関東選抜に出場。
ヴァイオリンに対してそこまでやる気がなかった本人とは裏腹に、音楽家の道に進めようとしていた両親が本人に本腰を入れさせるために、中学2年生の秋に知り合いのつてで齋藤真知亜先生のレッスンを受けさせる。そこで初めて人に対して「音楽家としてカッコいい」という感情が芽生え、少しやる気が出る。それ以降僕にとっての音楽の父が真知亜先生となる。「部活を辞めないでいい」と両親に言って下さったことも、一生の恩だと思っている。
とはいえ「音楽家になる」という気持ちは無く、なんとなくそうせざるを得ない雰囲気を感じ取って東京芸大附属高校を受験し運良く合格する。そして高校で、自分より遥かに実力と知識とやる気を持った同級生・先輩後輩から刺激を受けて、少しずつ音楽家になるという意志を持ち始める。その反面、完全に勉学を疎かにするようになる。
また、ここから大学を卒業するまでの7年間に渡り、漆原朝子先生という僕にとっての音楽の母から多くを学ぶ。高校2年生の冬に出会った漆原啓子先生からも多大なる影響を受ける。
大学に入り、さらに多くの刺激を受けるようになる。この頃から、室内楽とオーケストラが好き、という気持ちが強くなる。特に室内楽に関しては、小淵沢での弦楽四重奏のセミナーに何度も参加して、その魅力に取り憑かれ始める。また、ヴィオラを弾く楽しみを知る。
大学4年生の秋に聴いた玉井菜採先生の演奏に衝撃を受け、芸大大学院から門下生となりその背中を追うようになる。この頃から少しずつ留学願望を抱くようになる。
大学院生の時にオーディションを受け、芸大フィルハーモニア管弦楽団のコンサートマスターに就任する。
現在社会人3年目。室内楽とオーケストラが相変わらず好きだが、自分には向いてないという気がしつつソロも弾けるようになりたいと思っている。
好きな作曲家を数人挙げるならば、ベートーヴェン・ブラームス・シューマン・R.シュトラウス・プロコフィエフ・バルトークなど。
夢は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を、チェロ以外の全パートで完奏すること。卓球部屋と和室がある家を持つこと。
音楽以外で好きなものは、卓球・お酒・漫画・対談番組。
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【日時】
2019年7月9日(火)19:00開演(18:30開場)
【料金】
一般:4,000円 学生:2,000円
※全席自由席です。
【出演】
上田晴子(ピアノ)パリ国立高等音楽院室内楽科教授、ピアノ科准教授)
水谷晃(ヴァイオリン)東京交響楽団 コンサートマスター
戸原 直(ヴァイオリン)東京芸術大学フィルハーモニア
管弦楽団 コンサートマスター
加藤 大輔(ヴィオラ)東京フィルハーモニー交響楽団
副首席ヴィオラ奏者
大山平一郎(ヴィオラ)元ロサンゼルス交響楽団 首席
ヴィオラ奏者,Music Dialogue 芸術監督
笹沼樹(チェロ)NHK交響楽団 アカデミーチェロ奏者
【曲目】
モーツァルト:弦楽五重奏曲 第2番 ハ短調 K.406
ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 Op.34
出演者との対話
【会場】
めぐろパーシモンホール 小ホール
東京都目黒区八雲1-1-1
https://www.persimmon.or.jp/access.html【詳細・お申込み】
http://u0u0.net/UjHd (めぐろパーシモンホールチケットセンター)
【振込によるお申込み】
http://u0u0.net/Rof8※フォームからお申し込みいただいた後に、チケット代金をお振込みいただきます。チケットは当日、会場にてお引き渡しいたします。
【お問い合わせ】
info@music-dialogue.org
03-5791-3070
主催:一般社団法人Music Dialogue
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団