生きづらさの低年齢化 後半[2021年11月27日(Sat)]
福島県会津若松市でフリースクールを開き、不登校の子を支えている江川和弥さん (寺子屋方丈舎)は、現場で「生きづらさの低年齢化」を感じているそうです。
フリースクール「寺子屋方丈舎」を運営する江川和弥さん(『不登校新聞』撮影)
「これまで『生きづらさを抱える子ども』は
思春期に入った中高生の問題だと思われていました。
ところが小学生でも、同級生や教師との人間関係
学校生活のなかで生きづらさを感じる子が増えています。
それが小学生の不登校増であり、子どもの自殺増にまでつながっている背景です。
また、小学生たちは直感的に学校を拒否します。
『なんかいやだ』『とにかく行きたくない』など、大人からすれば不充分だと感じる理由でしょう。ゆえに大人は理解に苦しんで『怠けたいだけでは』『ゲームのせいでは』と思ってしまいがちです。
しかし、子どもから話を聞くと、先生からのいじめを受けていたり
同級生間でトラブルを抱えていたり、さまざまな理由がありました。
いま課題なのは小学生の不登校ではなく、私たち大人の『理解する力』のほうではないでしょうか」(寺子屋方丈舎・江川和弥さん)
居場所不足が大人の働き方にも
増加する不登校について、求められている解決策を最後に紹介したいと思います。
現在の学校の仕組みを考えると、不登校が一定数以上いるのは、ごく自然なことです。
文科省も「不登校の子ども本人には非がない」(『不登校新聞』2017年)という認識を示しています。一方で日本は学校中心の教育制度のため、不登校だと苦労が強いられます。いま不登校になった子は、なんらかの事情があって学校で傷つけられた結果でしょう。
これは苦しいことであり、解決されるべきことです。
これ以上、多くの子どもが傷つかないためにも
以下の2つの課題にまず取り組むべきです。
1つ目の課題は「居場所不足」です。
子どもが不登校になっても、通わせられる場が近くにないと、親はたいへんな思いをします。とくに小学生低学年の場合は、子どもに留守番も頼めません。
不登校の「受け皿」が充実していないこと、つまり居場所不足は親の働きづらさや苦しさにもつながっています。フリースクールは全国に500以上あると言われていますが
不登校の増加に対応できるほど広がってはいません。
フリースクールを運営している江川和弥さんは
「民間と教育行政が連携して、不登校の子たちの居場所不足を解決していく必要がある」と語っていました。
オンライン授業の整備で選択肢を
2つ目の課題は「オンライン授業の未整備」です。
学校へ行けない子は感染者や不登校の子だけではありません。
自然災害や病気でも行けない子たちがいます。
教育学者・内田良さんは「子どもの学び方は『通う』だけではなく、もしもの場合を考えてオンライン授業の整備が必要です」と語っていました。
将来的には、学校に通うこと、オンラインで学ぶこと、フリースクールで学ぶことなど、いろんな学び方を子どもが行き来できるような仕組みが求められています。
こうした多様な選択肢を認めた場合、学校の出席はどうやって取ればいいのか。
出席がとれなければ卒業資格はどうなるのか。
学習評価は誰がどうするのか。いろんな混乱が生じそうです。
しかし「出席」に頼った教育制度をやめてしまえばいいのです。
現在のICT技術を使えば、そんなに難しいことではありません。
諸外国でも例は多数あります。「出席」に頼った教育制度でなければ、「不登校」という概念そのものがなくなるでしょう。よって不登校で苦しむ人もぐっと減ります。そんなことも議論の1つに挙げてみるべきだと考えています。
※令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より
石井志昂
『不登校新聞』編集長、不登校経験者
1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクールへ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なってきた。また、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねてきた。編著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』、『学校に行かない君へ』(ポプラ社)など。