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コロナの気持ちを忖度すると・・・ [2020年04月10日(Fri)]
14世紀半ばから15世紀にかけて大流行したペスト。当時のヨーロッパ全体の人口の3分の1を奪ったとされております。イングランドでは更にひどく、約半分の命が奪われました。(ウォルター・シャイデル著「暴力と不平等の人類史」2019年6月刊より。)しかし、このことは後から振り返ると単なる厄災だった訳ではありませんでした。それは以下の事実からも言えます。

1.急激な人口減少の結果、極端な人手不足が起こり実質賃金が3倍程度上がる一方、土地や作物の価格が下がりました。その結果、当時の労働者はたったの年に14週間働きさえすれば、家族に衣食住を提供することができたとのこと。(ソロル・ロジャーズーオックスフォードの歴史学者)
いわゆる人々の間の格差が極端に縮小したのです。

2.ペスト禍の相手を分け隔てない猛威を背景に、カトリック教会の権威が徐々に崩れ、後の宗教改革からルネサンスへと時代が大きく転換できたこと。つまり神から人間中心主義への転換です。

では、今回の新型コロナが人類と社会に突きつけたものとは何なのでしょうか?

戦後世界の隆盛?は、いわゆるグローバリズムとして行き着いたことはご承知の通りです。グローバリズムとは、端的に言うと、経済成長を極大化させるための世界各国の分業体制と言えますが、この分業体制は、実は平等な分業体制ではありません。資本・情報・テクノロジーを握った一部の先進国による、その他の国からの成長の果実の還流のみをもたらす分業体制であることはご存知の通りです。その結果の副作用として、先進国の内部における格差の拡大も同時にもたらしました。

このグローバリズムは、一方ではコストのかからないが故の地球資源の収奪の極大化=「環境破壊」をもたらしました。この環境破壊はいわゆる地球温暖化問題を引き起こしながら、植生の急変からの生物の生息圏の急激な変化を引き起こしました。このことが、今回の新型コロナという未知のウィルスをもたらした遠因です。

他方、グローバリズムは世界の国々の間での究極の分業体制により資本効率を最大に高めた結果、相互依存関係は抜き差しならないまでに「進化」しておりました。いわゆるサプライチェーンが典型例です。このサプライチェーンの良し悪しを決めたのは、いわば究極の経済的な効率でした。

このサプライチェーンを、新型コロナは意図せずにものの見事に断ち切ったのです。

こうなると物事は逆流・逆転し出します。このまま人と物の流通がままならなくなれば、水分と養分を断たれた木のように立ち枯れていくのは明らかです。

このグローバリズムは、いわば経済至上主義ですので、人々の交流についても、あくまでも貨幣価値に基づく経済的な利害の最大化を目指すための効率化が求められておりました。従って、逆に言うと貨幣価値に換算できない人々の交流は、グローバリズムの本質から言うと無駄なものと位置づけられていたのです。

ビジネスを通じた交流は、貨幣価値を最大化するために必須のものとされておりましたが、ビジネスに関係のない、つまり損得に関係のない、地域社会での人々の交流関係は不要なものと位置づけられ、段々と希薄化していったのです。

しかし皮肉なことに、このようなグローバリズムの本質が今回のコロナ禍によって逆照射されたようです。つまり、生活必需品の多くは世界中の人々の労苦によって生み出されているという、そのあからさまな事実です。

自分ひとりでは生活できない。多くの世界中の人々の日々の働きによって全てのモノとサービスは成り立っており、それが一人ひとりに届けられていること。人は一人では絶対に生きていくことができないこと、この事実です。

この意味で、今回のコロナ禍は悪いことばかりではありません。もう一度、世界中の人々、そして、もっと小さな単位の地域社会の人々の間で、経済至上主義からくる連帯ではなく、お互い同士を思いやる連帯に移行する契機を、新型コロナは与えてくれたのかも知れません。



タグ:新型コロナ
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