森づくり活動において、チェーンソーと並んで最も身近な機械といえば刈払機です。
しかし、高速回転刃を扱うため一歩間違えればキックバックによる大怪我や、周囲の仲間を巻き込む重大事故、さらには長期間の作業による振動障害(白蝋病など)を引き起こす危険をはらんでいます。

今回は、森づくりボランティアの安全な現場づくりのために欠かせない、「刈払機取扱作業者安全衛生教育」について、すこし考えてみます。
この教育は、完全に「任意」で受けているわけではなく、以下のような法的・行政的な位置づけがあります。
根拠となる法律労働安全衛生法 第60条の2において、「事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に従事する労働者に対し、必要な安全衛生教育を行うように努めなければならない」と定められています。
通達による規定さらに、厚生労働省から『刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育について(平成12年2月16日 基発第66号)』という行政通達が出されており、実施要領が具体的に規定されています。
どのような教育方法なのか?カリキュラムは、国が定めた以下の時間配分行われます。
教育カリキュラム(計6時間)
学科@ 刈払機に関する知識(1時間)
A 刈払機を使用する作業に関する知識(1時間)
B 点検及び整備に関する知識(1時間)
C 振動障害及びその予防に関する知識(1時間)
D 関係法令(1時間)
実技E 刈払機の作業等、点検及び整備(1時間)
誰から、どこで教わるのか?厚生労働省の通達(基発第66号)により、講師を任せられるのは以下のいずれかの要件を満たす者とされています。
1.労働安全コンサルタントまたは労働衛生コンサルタント
2.林業・木材製造業労働災害防止協会に所属する安全管理士・衛生管理士
3.教育カリキュラムの科目について「学識経験」を有する方

※ボランティア団体内などで独自に自主開催する場合であっても、実技を指導する指導員(実技実施責任者)は「刈払機作業について十分な知識と実務経験を有する方」を責任者として選任する必要があります。
この教育制度における問題点一度受けたら永久に有効この安全衛生教育には、車の運転免許のような「更新制度」がありません。一度受講して修了証を手にすると、その後何年ブランクがあっても、あるいは我流の危険な癖がついてしまっても、制度上は「修了者」のままとなります。定期的な再教育(フォローアップ講習)が義務化されていない点は、安全管理上の大きな課題です。
実技の時間が圧倒的に短い学科5時間に対して、実際に機械に触れて指導を受ける実技の時間はわずか1時間しかありません。初めて刈払機に触れる初心者にとって、たった1時間の実技だけで斜面の刈り方や、キックバック発生時の回避動作を完全に習得することは困難。
刈払機は、非常に頼もしい動力機ですが、使い方を間違えるとには牙を剥く「刃物」にもなります。
この「刈払機取扱作業者安全衛生教育」は、自分と仲間の身を守るための大切な盾です。
講習を一度受けて満足するのではなく、「学んだ安全ルールを現場で全員で声を掛け合って実践すること」、そして「定期的に安全講習や操作の復習を団体内で自主的に行うこと」が、事故ゼロの楽しい森づくりを続けるためのいちばんの鍵となります。
「最近そういえば基本を忘れていたな……」という方は、ぜひもう一度テキストを開いてみたり、団体内で安全ミーティングを開いて、お互いの姿勢や安全設備をチェックしてみてください