引き続き、安全白書を振り返ってをお送りいたします。 まずは、西多摩地域の”森づくり”について。 特に森林ボランティアが入る前はどのような状況であったか。 西多摩の森づくりのいまむかし 東京都の森林は多摩と島しょに分布し、約7万8000ha あり、総土地面積の約4割 を占めています。そのほとんどは民有林 です。このうちの大半は、多摩地域の西部(以下「西多摩地域 」という)にあり、スギ、ヒノキなどの人工林が6割、広葉樹が多い天然林が4割となっています。この人工林は戦後植えられたものです。 江戸時代の西多摩地域は、「小丸太の青梅」と呼ばれる有名な林業地域で、多摩川の筏流しを利用して小径木、足場丸太を生産していました。<2004(平成16)年4月「森づくり推進プラン」東京都>。また、明治時代には山梨県にまたがる地域の森林を当時の東京府が取得し、今日まで東京都の水道水源林(2万1000ha)として管理されてきています。現在では秩父多摩甲斐国立公園、高尾陣馬都立自然公園<1950(昭和25)年>、明治の森高尾国定公園<1967(昭和42)年>に指定され、週末ともなれば多くのハイカーが訪れています。このように西多摩地域の森林は、都市生活の維持と都民の憩いの場として、東京になくてはならない都民共通の財産となっています。 しかし、この地域の林業は、1960(昭和35)年の外材輸入の自由化以降の木材価格の低下に加えて、1986(昭和61)年の春先の大雪害によって多くの林業家は打撃を受け、経営意欲を失いました。このため、間伐の遅れなど手入れ不足の森林や伐採後造林されない林地が増えています。更に、1998(平成10)年1月にも大雪による被害を受け、また近年、シカによる食害が深刻な問題となっており、もはや林業としての生産活動は厳しい状況となっています。 加えて、1960(昭和35)年に約2000人いた東京都の林業従事者も、2000(平成12)年には約300人と激減し(1961年、2000年国勢調査)、高齢化も進み、担い手不足が非常に心配されています 。近年、不況を背景に林業で働きたいと希望者が増加していますが、多くを雇用できる状況にないのが現状です。 特に、現在のあきる野市、日の出町、青梅市といった、住宅地と”森林”が近接している地域については、いわゆる「裏山」として、各家庭が自宅裏(それに限らず)に、0.1ha〜1ha未満の”森林”を所有していることが多いです。 これは、ガスが普及するまでは、各家庭の薪炭林として機能し、戦後は政府の拡大造林に後押しされ、薪炭林からスギまたはヒノキの人工林へ移行した場所でもありました。 しかし、高度経済成長期に入り、誰もがスギ、ヒノキの建材としての価値を忘れ初め、またこれらの地域の多くの方が、農業や林業といった第一次産業から都心への就職と言った第一次産業以外の産業へ移していったこともあって、いつしか「裏山」の存在を忘れられてしまいました。 十数年前に行われた、ある地元小学校での児童へのアンケートの中で、自宅の「裏山」をあまり良く捉えていない回答が目立ったとありました。 このように、世代を超えて「裏山」が少しづつ離れたものとなっていきました。 |