
スローフードの理念と食の共同体的自治[2012年07月30日(Mon)]
社会学者・宮台真司氏が、昨年の朝日新聞に連続する「終わりなき日常」に東日本大震災が与えた変化について語り、周囲の人との絆を築いたり、依存による危険を減らしたりするため、何をすべきかに答えて
「社会のスタイルを『統制と依存』から『自治と参加』への切り替えていくことです。日本では17世紀(江戸期)以降、お上による統制とシステムへの依存が社会統治のモチーフでした。そこから脱し、共同体自治を進めるしかない。
よい先例は欧州のスローフードの理念です。顔の見える範囲に向けて作るから、農家は悪いことができない。生産者の手数が見えるから、消費者はスーパーより高くても買う。近接性が倫理を担保するこのメカニズムを保とうとする、住民たちの自覚的な動き。食の共同体自治です」
―朝日新聞より抜粋
まさに、「宮崎なっぱの会」も、その食の共同体自治になりますね

2009年6月、私は過疎化の影響を受けて高齢者人口の多い田舎で農村民泊や新たな生業を始める友人と、イタリアの北から南へ車で3週間、アグリツーリズム(気軽に健康的な田舎風の暮らしが体験できる旅スタイル、スローフード&ライフ体験)をめぐる旅をする機会がありました。
みなさん耳にされたことがある「スローフード」という概念はイタリアで生まれ、80年代、イタリアに初めて「マクドナルド」が出店したことをきっかけに、大量生産、食品添加物、遺伝子組み換えなどが及ぼす食文化への影響に危機感が高まり、発足したそうです。
その「スローフード」本部がある北イタリア・ピエモンテ州「ブラ」という小さな街も訪問↑したけれど、土曜日で関係者には会えませんでした

スローフードの考え方は、ファーストフードに代表される画一的でめまぐるしい現代生活に、「スローフードな食卓」から革命を起こし、もっと生き生きとした人間らしい暮らし、社会を取り戻したいというもの。
大量生産され、世界のどこでもいつでも同じように消費されてしまうファーストフードとは異なり、環境や自然を尊重し、時間の価値を見出すことができる食は、人間の心に豊かさをもたらしてくれるものなのだと、旅で訪れたアグリツーリズム農家のみなさんのライフスタイルからも多く感じ得ることができました。
このイタリアからのスローフード&ライフ、世界からの食材が豊富に流通する日本において、地元で栽培された食材をいかに地元で活用し、調理して豊かな時間(価値)と暮らしを見出すことか、本当の豊かさについて思いをめぐらされたことでした。
終わりに、心に響いた宮台真司氏の言葉(朝日新聞から抜粋)を
「はっきりしているのは、依存していても便利や快適がどれだけ増えても幸福と尊厳は得られないこと。
幸福と尊厳は、自分たちが自分たちをコントロールしている感覚が得られて初めて獲得できるものです」
(春)