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第3回子供の邦楽コンサート 成長に驚く [2015年04月10日(Fri)]



子供の邦楽コンサートは今年で3回目。4月5日の日曜日は
桜が開花したのに、あいにくの雨。昨夜から降り続いている。
この日に向けて練習してきた子供たちは雨などものともせずに
約束の9時には集合してきた。早速、舞台裏で荷解きをして
予定より10分も早くリハーサルが始まった。場所は1昨年の
宮城野区文化センターのパトナホール。とにかく音響が良くて
マイクはまったく要らない。仙台三曲協会が次代を担う子供ら
を育てようと力を入れてきたこの会もようやく軌道に乗り始め
今回は9社中の43名という過去最多の参加者となった。
期せずして小学生と中・高校生とが半分の9曲ずつで計18曲。

予定通り13時に開演ベルが鳴る。最初の曲は6年生が主体の
三絃曲、「群」。みんな色とりどりの着物姿で舞台が華やいだ。
途中糸の切れた子がいたが、動じず替え三味線で立派に弾いた。
これが翌日の河北の朝刊にカラー写真で記事と共に掲載された。

最初と最後の曲以外はくじ引きで曲順が決まる。
今回は独奏曲が多いのが特色。小学生の部7曲が独奏。3曲目
の「冬の日」が岩渕実桜ちゃん(小2)と斉藤好未ちゃん(小
4)の2人が熱演したあとは独奏曲が続いた。

これまで三絃に挑戦していた笠原君(小6)は筝で「雪・紅梅」
を演奏。最年少の小1の渡部葵ちゃんは首を少し傾げながら、
「うれしいひな祭り」を完奏。驚いたのは常連の奥山矩誉君
(小5)が「時鳥の曲」を暗譜でしかも堂々と歌ったこと。
着物姿が一層引き締まって見えた。続いて妹の溪花ちゃん(小
2)は「六段の調」をこれまた暗譜。しかもその弾きっぷりは
実にしっかりしていて、風格さえ感じられた。

小澤美都ちゃん(小6)もますます上手になり、「祭の太鼓」を
手早く確実に弾きこなしていた。1部の最後は田中舞ちゃん
(小6)が「まりつき・かくれんぼ」を元気よく演奏した。

休憩後に岩崎郷山三曲協会会長の挨拶があった。これは初めて
のことで協会としての熱の入れ方が伝わってくる。

2部は中学・高校生の部。最初は「花は咲く」を高橋瑞希さん
(中1)が心入れて情感豊かに演奏した。2曲目は伊藤和希さん
(高1)と赤間梨花さん(中2)が「水面」を息の合った演奏。
次の宮城道雄編曲「中空五段砧」を佐藤麻理菜さん(高2)が
堂々と演奏。彼女は宮城県高校筝曲コンクールで優勝しただけあ
って貫録十分の演奏だった。4曲目「歓喜の曲」は高2の田辺衣
純・林芙美香両名による無難な演奏。5曲目の「あこがれ」は
中1が4名、中2が2名による演奏。制服姿が凛々しく演奏もま
とまっていた。次の独奏曲「風のセレナーデ」は吉田奈々さん
(高2)の流れるような華麗な演奏に魅せられた。音色の美しさ
も際立っていた。7曲目は「花筏」。中学2が6名、高1が1名
の編成で、水の流れの強さと流れに乗る花弁の情景が目に浮かぶ
素晴らしい演奏であった。8曲目は「螺鈿」。高校生3人が着物で
登場。大人の雰囲気が漂う。17絃が初めて登場。この押手がと
ても効果的に筝に共鳴していた。最後は「さらし風手事」は佐沼
の中・高校生6名による演奏。実にテンポ良くきびきびと演奏し
今回の演奏会を締めくくった。

アナウンスは協会の宮城会大師範の呑山佳子さん。声楽もやるだ
けあって歯切れよく抑揚をつけた話し方はプロ顔負け。
雨の影響で客足が心配だったが、心配無用。200名を超す人が
客席を埋め、子供に盛んに拍手を送っていただいた。
また今回はプロのデザインを2人の高校生が仕上げとても好評。
めくりは芸協の執行理事の中塚仁先生に依頼。また初めて舞台に
花を飾った。やはり花は場を盛り上げる。終演後、子供たちが
記念に1本ずつ持ち帰った。

また今回、宮城県文化振興財団から助成金を受けられた。感謝。
来年は3月27日福祉プラザで開催が決定。また子供たちの成長
が今から楽しみである。




熱気と汗のほとばしり「鬼太鼓座」45周年 [2014年07月31日(Thu)]



低く唸るような音が続き、やがて雷鳴のような大きな波動が腹に響く。
太鼓座の元祖、鬼太鼓座45周年記念公演「畦道回帰」に立ち会った。

「何故畦道か?」団員が田植えから収穫まで体験し、この集団の創始
者である田耕氏の思想に立ち返り、原初のエネルギーを奮い起こそう
としているのだ。会場の紀尾井ホールの正面いっぱいにこのタイトル
が荒々しく太く墨で書かれている。その前に櫓が組まれ大小の太鼓が
所狭しと並んでいる。そこにねじりハジマキの着物姿の女性や褌姿の
若い男性が乱舞しながら、力一杯太鼓を叩き続ける。

7月の半ば梅雨の時期なのに真夏並みの暑さが続く。わざわざ仙台か
ら出かけるのも躊躇されたが、折角、招待券を送ってくれた座長の松
田惺山氏の活躍を久しぶりに見たい気持ちが勝り、新幹線に乗った。

彼は劇団をまとめ、経営やスケジュール調整、そして尺八や笛の演奏
をしながら舞台進行も務めるまさにスーパープレーヤーである。
「男子三日見ざれば括目して待つべし」というが、彼は無論の事、変
わった。私が尺八を教えていた子供の頃の幼い面影は姿を消し、若い
団員と一緒に世界を駆けた体には贅肉の一かけらも残っていなかった。
50才も半ばの頭髪は白を消すためか濃い茶に染めていたが、日に焼
けた顔は精悍そのものに変貌していた。しかしながら生来の優しさは
隠しようがなく、集団の雰囲気を和やかにしており、観客にも家族的
な雰囲気が十分に伝わってくるのだった。

太鼓の芸は素晴らしく鍛えられ、強弱多様に変化し、聴衆を魅了した。
驚いたのはけん玉である。尺八の音色が追い付かないくらい早く操り
しかも次第に大きなけん玉になり、終いには抱えるくらいの玉を見事
に差し込み場内を沸かせた。けん玉の世界選手権に出ても良い位だ。
太鼓の傍らけん玉までこなすのは大変な修練。まさに芸人である。
最後はチンドン屋に扮し、場内を回り出口で皆を見送るという趣向。
彼は「上を向いて歩こう」を吹いていたが、私を見ると驚いたらしく
吹くのを止めて駆け寄り、笑顔で握手してくれた。余熱を抱きながら
夜の帳の降りた上智大前の並木道を足取りも軽く帰途に就いた。


竹友社創立120周年記念尺八演奏会 [2013年06月27日(Thu)]



「伝えよう古典の韻 和の心」と題し、琴古流を代表する竹友社が
創立120周年記念の尺八演奏会を宮城県多賀城市の文化センター
で開催した。5月26日、車で盛岡の弟トクと聴きに出かけた。

実はトクも定年後、小唄三味線と尺八を始めた。尺八は私の都山流
ではなく、琴古流の尺八。なんでも先生の人柄に惚れたという。
それとなく指導を頼んでいた盛岡の都山流の先生には申し訳なかっ
たが、まあ老後の楽しみだからいいかと大目に見ることにした。
私の持っていた琴古流の尺八を吹いている。彼の先生がこの演奏会
に出演するので前の日から泊りがけで出てきたという訳。

私は実行委員長の三塚竹幽氏からの招待のプログラムを持参した。
絃方の人間国宝米川文子氏と敏子氏の二人と三塚氏の「御山獅子」
の三曲合奏と宗家の川瀬順輔・庸輔親子の「鹿の遠音」も聴き所。

全国から集まった300名を超す会員が古曲や本曲に取り組んだ。
この絃方を見て奇異に感じたのは仙台三曲協会に加入していない会
派が多いことだった。「生田流筝貴会」「坂本派菊池社中」「山田流井
仙会」「生田流研箏会」「生田流八雲会」の5社中。協会加盟は3社
中のみ。竹友社のまだ充分に仙台の三曲に浸透していない姿なのか。
逆に参加していない社中を集めても大きな会が出来るということか。

ちょいと複雑な思いであった。また箏の数より圧倒的に尺八の数が
多く、このアンバランスでどうかと心配していた。ところが尺八の
不思議なところで、結構一本の響きに聞こえ、さして違和感は無か
った。昼飯に途中、抜けただけで目一杯16曲を聴いた。疲れた。

アメリカのコロラドで尺八をしているデビット勘輔ウィラー氏が募
金1万ドルを多賀城市長に手渡した。彼は学生時代、日本で尺八に
出会い、今やプロとして米国で尺八を普及させている。「鶴の巣篭も
り」を披露した。なかなかの腕前に場内から果敢な拍手が送られた。

トクの師匠とも話が出来た。聞くと私の福島大学時代の玉山経済学
部長の甥っ子に当るという。竹友社玉山竹乗氏との縁が出来た。


「歌の魅力」大間隆之師の講演 第6回協会主催研修会 [2013年03月21日(Thu)]


2月17日(日)13時30分から旭ヶ丘市民センター
で山田流筝曲家大間隆之師による講演が開催された。

協会の研修は田口尚幸氏による歌詞の解説が3回続
いた後の第6回目の研修会となり、題は「歌の魅力」。
さすが山田流の会員が多かったが、生田流の方も多く
見え、予想を大きく上回る81名の参加となった。

東京芸大の非常勤講師を務められているだけにお話
は整理され、系統だったもので分かりやすかった。
早口との評判を気にされてか、落ち着いた話しぶり。

山田流の特徴を生田流と比較して、例えば生田は一
人弾きが多いが、山田はお饅頭方式でお嬢さんに恥
を掻かせないため、周りを囲み、皆で弾くのが多い。

また三曲は家庭音楽だが長唄は劇場音楽でお囃子を
賑々しくして歌の内容も分かりやすい。方や三曲は
教養の高い人を相手にやってきたので表現が控え目
で分かり難い。他部門が入った邦楽演奏会では三曲
の出番になると、いくら人間国宝が出るにしても、
客席はがら空きとなる。お弁当を食べに席を立つ。
哀しいかな、三曲はお弁当タイムになってしまう。
これをどうしたらよいかと問題提起をされていた。

邦楽に携わるものにとっては、なんとも情け無い、
哀しい現象である。色んな新しいジャンルや方式に
取り組みたい気もする。最後に講師はこれまで聴い
たことの無い「夏痩せ」という三味線唄を弾き語り
してくれた。頭がつるりとし巨体の入道を連想させ
る体躯の講師が恋をして痩せる女心を歌うとは驚き
で、会場がどっと沸き、場が和んだ。質問も活発に
なされ、実りある研修はたっぷり2時間に及んだ。

歌声をもっと聴きたかったとの声が多く、次回の
検討の材料にしたい。準備は企画委員が椅子の並
べたり、受付、進行、講師の世話などしてくれる。
次回も新たな知識をワクワクして待つことにする。

山田流筝曲の真髄「曠の会」(こうのかい) [2012年12月29日(Sat)]



前から聴きたいと願っていた「曠の会」。ついに念願
が適い、東京は紀尾井ホールで聴くことが出来た。

山田流筝曲の演奏であるが、名だたる演奏家ばかり。
それに尺八が琴古・都山流の練達揃い。今回は12回
目で平家物語に関連する曲を7曲そろえた。

開幕曲は「嵯峨の秋」。糸方8名、尺八6名の総員で
の演奏。竹と糸がびんびんと響き合い歌が乗っていく。
山田流の迫力を存分に味わった。やはり山田は歌だと
感じたのは萩岡松韻、山登松和氏の声の良さであった。

しかし今回は新たな驚きがあった。それは宮城県出身
で仙台三曲協会にも所属している千葉真佐輝氏の歌の
上手さである。強弱の抑揚は裏声の繊細な美しさから
朗々たる低音まで自由に行き来する。これに歯切れの
良い筝の音が絡んで見事なハーモニーを紡ぎ出す。

萩岡先生についているとのことであるが、もはや誰に
も臆すること無い、名手の仲間入りをしたと私は見た。
芸大を卒業し、今は結婚して東京に在住している若手
であるが、宮城県が生んだ立派な芸術家になることは
間違いない。慢心を戒め、精進されんことを祈る。

歌の上手に、も一人出会った。三古谷裕氏である。
初めて聴いたが、素晴らしい声と歌い方である。「扇
の的」の三絃の手付けをしていた。尺八では徳丸十盟、
青木彰時の両氏と都山流では藤原道山氏の音色は大き
く緩急自在であった。

開幕時間までの2時間ばかり、上野界隈を歩き、疲
れが会場の暖房に溶け出してしまい、何度か眠りに
誘われたが、さすがにこれはという演奏には背筋が
ピンと伸びて聴き入ってしまった。3時間余の演奏
が終わると疲労感が溜まったが、質の良い芸術に触
れた充足感にも満たされていた。平家物語のせいか
街路樹の上の雲間の月は、か細くはかなげであった。
感興を抱いて、上智大の前を四谷駅に向かい歩いた。

今回はすぐ券が完売されるのを戸部先生が出演する
大間隆之師に依頼して券を手に入れることが出来た。
大間師は仙台に馴染みの先生である。人のつながり
の有難さを感じる。来年も是非、聴きたいものだ。

いずみオッチェンコール演奏会 [2012年12月09日(Sun)]


先日、友人の羽田野氏が出演する男性合唱「いずみ
オッチェンコール」第5回演奏会を聴いてきた。

千数百人は入るイズミテイ21大ホールがほぼ満員。
千円の入場料なのに驚いた。圧倒的に高齢者が多い。
それもそのはず団員66名の平均年齢は72才という。
私の年令にピッタシ。合唱団の名前がおっさんなら
ぬ「オッチェン」コールと言う。意味を友人に聞く
とドイツ語で女性はメッチェン。男性はオッチェン
かというとそれは無い。でも日本語おっさんに近い
からこれを使うことにしたらしい。実に分かりいい。

11年前に9人でスタート。指揮は有名な大泉勉氏。
今回から県の中学校の合唱や吹奏楽で著名な千田彰
武氏。プロローグとして大泉氏作曲の団歌「碧き空」
から入る。滑らかな歌声だ。第一ステージは「鎮魂
とふるさとへの想い」埴生の宿など5曲。2部は
「ロシア民謡」でバイカル湖のほとりなど懐かしい
曲5曲。休憩をはさみ、3部は「心の四季」から
4曲。4部は「日本の叙情歌」で椰子の実など5曲。

そして終曲は小林さかえ作詞・作曲の「忘れない
忘れまい」この歌詞を聴いて涙が溢れてきた。
「ふるさとの緑 ふるさとの匂い 山の形も 磯の
香りも 今はすべて記憶の中」から始まり、終わり
は「忘れない忘れない 忘れまい忘れまい そこに
ふるさとという名の 宝物が あったこと」

拍手が鳴り止まなかった。アンコールにもう一度歌
ってくれた。団員の中にも被害に遭われた方がいる
だろうに、しっかりとハーモニーをとりあっている。

震災前にはオペラの本場であるイタリアまで遠征し
交流を深めて来ている。72才はまだ若い。私も大い
に勇気付けられた。オッチェンの歌声よ響き渡れ。
宮城野の新ホールで「宮城野萩」を合唱 [2012年11月01日(Thu)]


昨日、新築した宮城野文化センター「パトナホール」の舞台
に立った。音響はバッチシの音楽ホール。天井がやたら高い。
客席は手頃の384席。幕は無い。オープンな雰囲気が漂う。

この地下をJRの仙石線が走る。陸前原ノ町駅の目前にある。
区役所にも隣接している。絶好の土地をよく獲得できたもの。
在来線が地下にもぐったお陰でスペースが開いた。すかさず
図書館や市民センター、児童館まで収容する文化会館建設を
やってのけた仙台市の関係者に敬意を表する。高い市民税も
「敬老乗車券」同様、生きていると実感する。

さて、私がどうして晴がましい舞台で歌えたのか?これまた
不思議な話ではある。今年3月、近所の中学校の校歌を作曲
した曽我先生に惹かれて町内の老人元気会の「童謡を歌う会」
に入会したのがきっかけ。月に一度大きな声で懐かしい歌を
思い切り歌ってくると気分がスッキリする。曽我先生の教え
方も実に分かりやすい。50名を超す会員はおばさんが圧倒的。
先生の手にかかるとまるで女学生のごとき若々しい声に変身。

無論この先生只者では無い。なんと合唱で南材小学校を全国
一に3度も導いた指導者なのだ。市内の20校の校歌も作曲。
この時の教え子が町内の元気会にお呼びして来たと言う訳。
往年のNHKのジュニア合唱団も指揮していて、実は今回の
舞台はこの人達が主役。しかし宮城野に出来たこのホールで
「宮城野萩」を歌うのは宮城野区で歌っているグループが良。
しかも指揮者が共通ときている。高名な先生のお陰である。

3幕までHKコーラスが続き、4幕目にいよいよ我々が登場。
HKコーラスは8名。これに40名超の大部隊が合流した。
おばさんパワーは桁違いの迫力。海鉾義美作曲の「東北うた
の本」から「宮城野萩」「春の足音」「仲よしの歌」の3曲を
合唱した。これには会場も大拍手。盛り上がったお客さんを
先生は小節ごとに指導して、全員で「宮城野萩」を合唱した。

作曲者の海鋒義美先生は私の母校である仙台高校の音楽教師。
私は美術専攻で直接お会いしなかったが、当時から著名人。
戦後、荒廃した世に子供達が歌う歌が無かった。そこで良い
歌を作ろうと先頭に立ったのが海鋒先生。全国の教科書でも
取り上げられた歌が「仲よしの歌」。実に元気が出る歌である。

海鋒先生のご長男の弘美氏がHKコーラスで出演してくれた。
不思議な縁を感じる。河北の先輩である小泉恵一氏も出演。
氏は私の行動範囲の大半に顔を合わせる不思議な人である。
河北OB会、絵画、尺八、ゴルフ、カラオケと酒。そして
このブログの愛読者でもある。貴重な先輩である。感謝。

今回の元気会男性はわずか6名。会長を除いて、教室では
口を利いたことが無い人ばかり。狭い控え室で自然発生的
に話を始め、大いに話が弾み、終いにはお互い名乗り出し、
すっかり打ち解けて、これからもよろしくとなった。
歌の好きな人は気持ちが素直で良いなあ。

帰途、歌が尾を引き、頭を巡り、知らずに口ずさんでいた。
舞台に立ち、色んな出会いがあったせいか、妙に興奮した。
翌朝3時目覚め、この原稿を打っている。歌の力、音楽の
素晴らしさを記したかった。澄んだ秋の夜に洗心の思い。
満席の聴衆を魅了 三曲の真髄 [2011年12月15日(Thu)]

水を打ったような静けさ。電力ホールに詰め掛けた
ほぼ満員の聴衆が見守る中12月7日(水)18時
に「三曲特別演奏会」が幕を開けた。
仙台の郡川直樹が舞台の中央に座り「奥州三谷」を
瞑目のまま淡々と吹いていく。彼は八戸出身ながら
関西で活躍中に阪神淡路大震災に遭い、仙台に転居。
私が西宮在住の頃、隣町の武庫之荘に居てよく行き
来した仲であった。再度、震災に遭いどんな気持で
吹奏したのだろうか。

月に色んな思いを寄せ鋭くまた繊細に爪が糸を弾く。
尺八は柔らかく、包み込むような音色で流れていく。
沢井忠夫作曲の「上弦の曲」は今回の唯一の新曲。
井関の筝と菅原の尺八の掛け合いが見事であった。

歌枕で有名な玉川を六つ歌い込んだ「六玉川」は
山登松和、鈴木厚一の洗練された声が素晴らしく、
善養寺恵介の短管がピッタリとマッチしていた。
山田流の完成度抜群の曲に出会った感じであった。

仙台南郊の増田にあった虚無僧寺に伝わったとされ
る「布袋軒鈴慕」は長管を駆使し響かせていた三橋
貴風の余裕さえ感じさせる円熟した演奏であった。

人間国宝の富山清琴が得意とする「曲ねずみ」は
即興的な器楽部分でねずみがカリカリとかじる音を
出して、聴衆から笑い声が起こり盛り上がった。

最後の「八重衣」は百人一首の「衣」の言葉が含ま
れる和歌を5首、四季の順に並べた大曲。
超多忙の人間国宝の山本邦山師に依頼したときには
足が悪くて長時間座っていられない。また風邪で咳
が出るので休み休みに吹くよと云っておられた。
ところが本番は全曲26分ノーカットで通した。
実はこれには秘策が施された。ここで暴露すると。
舞台を積み上げ足を下ろせる穴を開ける。小さな
穴のために全体の舞台を積み上げ高くするのだ。
直に座るので低くなる分は座布団で高さを調整した。
リハで腰掛けた邦山師はにやっと笑い、上機嫌。

幕間に出てお話しをしていただいたのは中井猛氏。
高座に出ても通用する容姿と洒脱な話し方で固く
なりがちな場内の雰囲気を和やかにしていただいた。

今回は男性だけ14名の本格的な演奏となった。
私はリハーサルから聴いていて、さすがに疲れた。
加えて、アナウンス原稿の打ち合わせ、受付けでの
迎え、場内整理などで疲労感が募る。おまけに終幕
後、座席に財布が見つかり、落し主が戻るまで待つ
ことに。地下鉄で気付いた人に無事手渡し一件落着。
8時間にわたる長丁場の演奏会が成功裡に終え安堵。

演奏者の皆さんは今晩中に帰途についた。本当に
お疲れさまでした。多忙の師走に時間を割いて仙台
で私たちのために演奏をしてくれたことに対して、
心より御礼を申し上げたい。これに応えるには来年
からしっかりと立ち直り平常の活動をしていくこと。
そして先達から引き継いだ伝統音楽の三曲の火を絶
やすことなく、後輩に引き継ぎたいものと強く願う。
お雛さま 笑顔のかげに涙あり [2011年04月02日(Sat)]

大震災で遠い過去のような気がするが、記憶に残
したい演奏会がわずか1か月もしない先月行われた。
3月5日(土)13時30分から「第11回筝・三絃・
尺八演奏会」が戦災復興記念ホールで開催された。
いわゆる若手の三曲協会会員による演奏会である。
昨年に続き、小学1年から中学2年までの子供たち
が参加。今年の出演者は24名。開幕曲「花かげ変
奏曲」は筝1・2、17絃、三絃の4つのパートに
分れ17名が参加した。最初は皆、緊張の面持ちで
あったが、本番は落ち着いて演奏を終えた。
続いて「祭花」は18名が参加、早い曲調を見事に
演奏。2日間、指導してきた田村雅楽徽、鶴巻春雲
両企画委員も練習を通して一番良かったと、ホット
安堵の表情。本当に子供たちは本番の舞台に強いと
感心。その最たる例が孫のリッちゃん。練習にかけ
る熱に波が多すぎ、半年以上かけても仕上がらない。
1月の総練習で自分ながら目途がついたのか、サボ
る日が出てきた。こちらも焦りを表に出さず、練習
しろとは我慢して、言わないようにしていた。
いよいよ3日前になって、隣の部屋で聴いていると、
ちょくちょく引っかかっている。そこで腹を決めて、
正面に座って、「お前のお陰で折角一生懸命やって
きた子が迷惑をする。出演を辞退しなさい」とはっ
きり言って聞かせた。いつものジイと違う態度にジ
ッと顔を俯けたまま、声を出さずに泣いていた。
次の日、筝の寿好先生に話したところ、リッちゃん
を呼んで稽古してくれた。その時の様子は神妙で、
真剣な態度だったと知らせてくれた。そこで私は先
生から出ても良いとお許しが出たよ。良かったね。
キッチリやろうね」と話すと、素直に大きくうなず
いてくれた。
藤崎の京都展で白酒と菓子を買って、3日の雛祭り
を祝った。次の日、まだつまずいており、不安あり。
本番の朝、車に乗せて行く。「何か今日やるって気が
しない」と話しながらもほとんど無口。緊張が伝わ
ってくる。会場では子供たちが一杯来ていて、気持
が和らいだのか、いつもの笑顔が戻っていた。
本番を終え、顔をほころばせながら私の隣の席に来
て、他の演奏を聴いていた。
帰宅時に三越の金沢展でシュークリームを買って、
一回り大きくなったリッちゃんに届けた。
関係者の皆さん本当に「お疲れさまでした」。

震災で演奏会場が相当傷んでおり、予定の演奏会は
ほとんど中止に追い込まれている。舞台が無いのは
目標が無くなり、拍子抜けの状態。一日も早い復興
を願うが、生活、大きくは経済が最優先になり文化
関係は後回し。忍の一字で我慢をせざるを得まい。
にほんの音・美「邦楽爛漫・川」 [2011年02月17日(Thu)]





浅草。2月6日は暖かい日曜とあって、大層な人出だ。
屋台の立ち並ぶ参道はまるでお祭り。前進困難だ。
並行している脇道から会場「浅草公会堂」に到着。
上野・浅草―にほんの音・美「邦楽爛漫・川」。
「邦楽ジャーナル」でタイトルが目に入り、今回
の旅の目的に入れた。但し、内容は分らなかった。
開演前なのに7割方、客席が埋まる。期待高まる。
最初は能楽、舞囃子「桜川」。お囃子に合わせシテ
が舞う。地謡の朗々とした歌声が良い。
2番手は雅楽の管弦「黄鐘調音頭(おうしきちょう
のねとり)蘇合急(そこうのきゅう)」芸大の生徒
達か若い奏者9名が古式の衣装を調え、ゆったりと
した雅楽の調べを奏する。奈良の野にいるようだ。
次は邦楽組曲KAWA[雪の晨(あした)]これは4代
萩岡松韻の作曲で、ご本人が唄・筝で出演。娘さん
の未貴、信乃姉妹、仙台で馴染みの大間隆之、千葉
真佐輝の両氏も出演。立方が男女二名の大舞台。
雪の降る場面は大太鼓がドドドドドと低く打ち出す。
見事な効果だ。休憩後、都山流「尺八二重奏 竹」。
山本邦山作曲。幕が開いて驚く。若い女性二名を入
れ、川村泰山師以下出演者五名とも暗譜なのだ。
三楽章まで一糸乱れず、緩急、強弱をつけた見事な
演奏を吹き終え、場内から大きな拍手が湧き起こる。
こんな演奏に出会えるとは夢にも思わなかった。
最後は長唄「風流船揃(ふなぞろい)」で艶っぽく
締めくくった。台東区芸術文化財団主催で東京芸大
の後援なので、若若しく生きが良く質の良い演奏が
聴くことが出来た。これも江の島の弁天さんのお陰
かも。感謝しながら、出口に出て下を見ると、何と
手形が一杯並んでいる。美空ひばりを始め、芸能人
の手形だ。私の手に合いそうな形を見つけ、合わせ
て見るとピッタリ。原信夫だ。山本邦山とジャズを
共演。これで手形ピッタリは宮城道雄師と二人。
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