福田栄香「三曲の魅力」を見事に発揮 [2010年07月13日(Tue)]
![]() 福田栄香が三曲の魅力を分かり易く伝えてくれた。 7月2日、練馬文化センターで三曲演奏会を聴いた。 千栄子改め栄香。地唄の名手祖母の名を昨年継いだ。 彼女は三曲をどうしたら多くの人に理解されるか。 常に考え、工夫を凝らしている。今回も楽しみだ。 それを実感できたのは「新浮舟」。源氏物語の浮舟 を分かり易く脚本したものを彼女が朗読した。 これが実に良かった。間の取り方、感情のこもった 声の表情。プロの声優も顔負けな位。 曲を3つに分け、朗読と三曲が交互に流れ、聴く人 の心に、自然に沁み込んで来る。 これには素直に脱帽し、感服するほか無い。ただし この方式は栄香さんでなければ出来ない芸である。 もう一つ感心したのは「五段砧」の中に「六段」の 5段目がそっくり入っていることを知らせるのに どうしたか。むろん演奏を止めてはいけない。 何と演奏がその箇所に来た時に、照明を落とした。 このアイデアの素晴らしいこと。「あったまいい」 彼女は外国で演奏を重ねているうちに、日本人にし か出来ない「日本の音」の神秘性を感じ、これを どうしても伝える使命感に駆られたと言っている。 この気持ちが溢れるほど伝わった演奏会であった。 彼女とは5年前に仙台で「四季の眺」をご一緒させ ていただいた。その会に予備の三絃として家内のを 用意したが、リハの後、遅い時間にホテルに持ち帰 り、糸も張替え、何度も練習。さて本番やいかに。 「八重衣」の演奏中に糸が切れ、予備の三絃の出番。 事なきを得た。何か予感めいたものがあったのか。 さすがと感心。まさにプロ根性を見た思いであった。 亡妻も少しはお役に立ち、きっと喜んだことだろう。 今回の彼女からの礼状に「仙台で糸が切れたことを 舞台で思い出しました」と添え書きがあった。 |