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黒き瞳との出会い [2014年07月13日(Sun)]



ある朝、玄関で空を見上げていると、何やら家の裏の細い路地に動く気配。
見ると、何と生まれたばかりの小さな子猫が草むらの中で跳ねている。
しかも一匹ではない。その時は3匹見つけたが、正確には5匹いたのだ。

近寄ると、走って逃げた先が洗面所の下の通気口。ここで生まれたのか。
そういえば黒猫を家の周りでよく見かけていた。まさか私の家の下で生む
とはと大いに驚く。ウ〜ン 生んだばかりの子猫をむげに追い出す訳にも
いかない。しばらくはそっとしておくことにして家人にも内緒にしていた。
子猫は成長とともに行動範囲が広がり、遊びに来ていた弟にも見つかった。
「猫の習性で子猫を連れて出ていくよ」と言う。

そのうち親猫とバッチし会ってしまった。しかも目の前1mくらい間近。
風呂に入ろうと窓の方を見ると何と網戸越しにこちらをじっと凝視する
黒い瞳にくぎ付けになってしまった。
体は黒いが瞳はもっと黒く輝き、強い意志を感じられ魅入ってしまう。
裸のまま見つめ合っていた。彼女は外の階段の遊び場で子猫に乳をやり
ながら寝そべっていたのだ。私の目に敵意がないのを見抜いたのか逃げ
ようとしなかった。それから間もなく黒猫一家はふっと姿を消した。

5匹はすべて黒であるがみんな特徴があった。ネズミ色や鼻白、胸が白、
毛がもじゃもじゃな奴もいた。密やかに観察する楽しみを失ってしまった。
ついでがあったので、知り合いの大工さんに通気口に網を張ってもらった。
張り終わったその日の夕刻、黒猫一家が姿を現した。

子猫は2匹に減っていた。風呂場でまた再会する。体はやつれていたが、
黒き瞳は依然と少しも変わらずに凛としていた。
3匹はどこで失ってしまったのか聞く由もないが、2匹を抱えた姿はいじ
らしい。子猫の鼻白と胸白はだいぶ大きくなったが、まだ乳を飲む仕草を
する。梅雨時に家をロックアウトされた境遇に何か気の毒な気がした。
この日から餌を与えることにした。食べ物の余りもので冷蔵庫にいつまで
も眠っているものなどを近所の目がうるさいので、こっそりと裏の路地に
箱を置き、入れている。4〜5日してまた姿を消した。しかし餌は必ず空
になっている。黒き瞳はたくましく子育てしているのだろう。
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