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満席の聴衆を魅了 三曲の真髄 [2011年12月15日(Thu)]

水を打ったような静けさ。電力ホールに詰め掛けた
ほぼ満員の聴衆が見守る中12月7日(水)18時
に「三曲特別演奏会」が幕を開けた。
仙台の郡川直樹が舞台の中央に座り「奥州三谷」を
瞑目のまま淡々と吹いていく。彼は八戸出身ながら
関西で活躍中に阪神淡路大震災に遭い、仙台に転居。
私が西宮在住の頃、隣町の武庫之荘に居てよく行き
来した仲であった。再度、震災に遭いどんな気持で
吹奏したのだろうか。

月に色んな思いを寄せ鋭くまた繊細に爪が糸を弾く。
尺八は柔らかく、包み込むような音色で流れていく。
沢井忠夫作曲の「上弦の曲」は今回の唯一の新曲。
井関の筝と菅原の尺八の掛け合いが見事であった。

歌枕で有名な玉川を六つ歌い込んだ「六玉川」は
山登松和、鈴木厚一の洗練された声が素晴らしく、
善養寺恵介の短管がピッタリとマッチしていた。
山田流の完成度抜群の曲に出会った感じであった。

仙台南郊の増田にあった虚無僧寺に伝わったとされ
る「布袋軒鈴慕」は長管を駆使し響かせていた三橋
貴風の余裕さえ感じさせる円熟した演奏であった。

人間国宝の富山清琴が得意とする「曲ねずみ」は
即興的な器楽部分でねずみがカリカリとかじる音を
出して、聴衆から笑い声が起こり盛り上がった。

最後の「八重衣」は百人一首の「衣」の言葉が含ま
れる和歌を5首、四季の順に並べた大曲。
超多忙の人間国宝の山本邦山師に依頼したときには
足が悪くて長時間座っていられない。また風邪で咳
が出るので休み休みに吹くよと云っておられた。
ところが本番は全曲26分ノーカットで通した。
実はこれには秘策が施された。ここで暴露すると。
舞台を積み上げ足を下ろせる穴を開ける。小さな
穴のために全体の舞台を積み上げ高くするのだ。
直に座るので低くなる分は座布団で高さを調整した。
リハで腰掛けた邦山師はにやっと笑い、上機嫌。

幕間に出てお話しをしていただいたのは中井猛氏。
高座に出ても通用する容姿と洒脱な話し方で固く
なりがちな場内の雰囲気を和やかにしていただいた。

今回は男性だけ14名の本格的な演奏となった。
私はリハーサルから聴いていて、さすがに疲れた。
加えて、アナウンス原稿の打ち合わせ、受付けでの
迎え、場内整理などで疲労感が募る。おまけに終幕
後、座席に財布が見つかり、落し主が戻るまで待つ
ことに。地下鉄で気付いた人に無事手渡し一件落着。
8時間にわたる長丁場の演奏会が成功裡に終え安堵。

演奏者の皆さんは今晩中に帰途についた。本当に
お疲れさまでした。多忙の師走に時間を割いて仙台
で私たちのために演奏をしてくれたことに対して、
心より御礼を申し上げたい。これに応えるには来年
からしっかりと立ち直り平常の活動をしていくこと。
そして先達から引き継いだ伝統音楽の三曲の火を絶
やすことなく、後輩に引き継ぎたいものと強く願う。
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