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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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夫婦同姓に女性の過半数賛成 [2020年08月31日(Mon)]

9割は戸籍・日常とも夫の姓
女性の生き方多様に
選択的夫婦別姓の導入検討を!


先進国では唯一、法律で義務付けられている日本の夫婦同姓制度に、「どちらかといえば」も含めると18〜29歳の62・7%を筆頭に女性の56・8%が賛成、反対の19・8%を大きく上回り、現実に既婚女性の90・5%は戸籍、日常生活とも夫の姓を使っているー。日本財団が行った初の「1万人女性意識調査」でこんな結果が出た。

夫婦同姓に対しては国連が「差別的だ」として是正を勧告した経過があるほか、夫婦別姓を認める民法改正を模索する動きもあるが反対も根強く実現していない。しかし、調査でも職を持つ女性を中心に20人に1人弱(4・5%)は「戸籍は夫、日常生活は自分の姓」と現実的な使い分けをしており、こうした動きは今後、確実に増える。個人としては現行の夫婦同姓制度に加え、選択的夫婦別姓制度を導入するのが現実的な対応策と考える。

▼日本財団・1万人女性意識調査

調査は18歳から69歳までの女性を人口構成比に合わせて5グループに分け、7月17日から5日間、インターネットで調査し計1万人から回答を得た。夫婦同姓に対する回答は賛成21・7%、どちらかといえば賛成35・1%、反対6・6%、どちらかといえば反対13・2%、分からない23・5%。うち既婚者約6200人の現実の対応は「戸籍・日常とも夫の姓」が90・5%と圧倒的に多く、残りは「戸籍・日常とも自分の姓」3・8%、「戸籍は夫、日常は自分の姓」が4・5%、「その他」1・2%となっている。

年齢別では18〜29歳が賛成29・5%、どちらかといえば賛成33・2%。残る30代以上が50%台にとどまる中、高い数字となっている。理由(二つまで選択)では「子供のことを考えると夫婦同姓の方が現実的」、「夫婦同姓の方が家族になった実感が出る」が50・4〜41・6%。わが国でも選択的夫婦別姓制度を導入すべき、といった意見や「仕事を続けて行く上では夫婦別姓の方が都合がいい」といった声も18・5〜17・2%に上っている。

自由回答を見ると、夫婦同姓賛成派では「基本的に同姓の方が夫婦・家族と分かりやすくていい」、「夫婦になっておきながら無理に別姓にする方が不自然」、「墓や供養はどうするか? 別姓だと困る」といった意見が目立ち、反対派では「自身の苗字に誇りや歴史のある人が、強制的に変えなければいけないような制度はいらない」、「“女性が男性の家に入る”という古い価値観は受け入れられない」といった意見、「入籍・離婚時の手続きが面倒くさく非効率的」、「事実婚が増えており臨機応変に対応すべき」といった指摘も目に付いた。

▼家族の一体感に影響なし

夫婦同姓に関しては、女性の社会進出が進むにつれ結婚に伴う改姓手続きの不便や煩雑さを指摘する声が増え、法制審議会は1996年、選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案要綱を答申、同年と2010年には改正案も用意されたが、根強い反対意見で見送られた。

しかし、内閣府が昨年、家族の法制に関する世論調査で「夫婦・親子の名字(姓)が違うと、夫婦を中心とする家族の一体感(きずな)に何か影響が出てくるか」尋ねたところ、31.5%が「家族の一体感(きずな)が弱まると思う」と答えたものの2倍超の64.3%は「影響がないと思う」と答え、家族法制に関する別の調査では、4割を超す人が選択的夫婦別姓制度の導入に向けた民法改正を「構わない」としている。

今回の調査結果を見ると、女性の暮らしや働き方が多様化する中、なお夫婦同姓が広く行きわたっている一方で、社会の変化に即した対応を求める女性の声が一定の広がりを見せている現実も示している。今春には自民党の「女性議員飛躍の会」も選択的夫婦別姓制度に対する議論を始めた。同制度導入を巡る動きを、しばし見守りたいと思う。(了)

〚夫婦同姓制度〛民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、最高裁は2015年、「夫婦同氏(同姓)は社会に定着し、家族の呼称を一つに定めることには合理性がある」と合憲の判断を示した。日本のような法律の定めを持つ国は世界に少なく、歴史的に結婚後、妻が夫の姓に変えることが多かった欧米も、近年は「同姓、別姓いずれも選択できる」流れが主流になりつつある。
同じ東アジアの中国、韓国では出自を表す「家」を大切にする伝統を受け、夫、妻とも結婚後も自己の姓を名乗る。日本も、一般の人も姓を名乗れるようになった明治当初は「妻は実家の氏(姓)を用いる」と規定され別姓が主流だった。しかし同29年(1896年)、旧民法が夫婦同姓を打ち出し、戦後1947年の改正民法で現在の形となった。規定に従う限り、夫婦のどちらかが姓を変えない限り、法律的には結婚できない。
海の底はどうなっているか? [2020年06月25日(Thu)]
世界の海底地形の解明 19%に拡大
 3年弱で3倍増 100%地図化も視野に
日本財団-GEBCO Seabed 2030

 

地球最後のフロンティアといわれる海底地形の解明が3年前の6%から19%まで拡大していることが、国際水路デーの6月21日に公開された2020年版海底地形図で分かった。コロナ禍でニュースとしての扱いが今一つだったが、今後の海洋政策を占う上でも注目に値し、事業主体である「日本財団-GEBCO Seabed2030」が目指す30年の100%地図化も視野に入ってきた感じがする。

海底地形図は、現代海洋学の父と呼ばれたモナコ公国のアルベール一1世が20世紀初頭に提唱した。しかし国際社会の関心は低く、専門技術者の不足もあって進まなかった。そんな中で17年6月、海をテーマに初めて開催された国連海洋会議で日本財団の笹川陽平会長が、30年を目標に海底地形図の100%完成を目指す「Seabed2030」計画を提案、大洋水深総図(GEBCO)指導委員会と日本財団の協働作業として事業がスタートした。

地球の72%を占める海を北太平洋・北極海、大西洋・インド洋、南太平洋・西太平洋、南極海の4海域に分けて進められ、地図化は事業開始後3年弱で13%拡大、全体の約5分の1まで進んだことになる。新たに解明された海底地形の面積は約6630平方㌖、オーストラリア大陸の8倍を超す計算だ。

更新された海底地形図はGEBCOの公式サイトやGOOGLEの検索サイトでも閲覧でき、海流や海底地震、津波の予測、気象変動、海面上昇から船舶の安全航行、海底資源の開発など極めて幅広い分野で活用される。

計画に先立ってGEBCO指導委員会と日本財団は04年から、米国のニューハンプシャー大学で海底地形図作成に当たるスペシャリストの育成をスタートし、ここで育った40ヶ国90人の専門家がSeabed2030に参加しているほか、スタート時点で約40団体だった協力国際機関や研究機関も現在は100団体を超えている。

13カ国16人の卒業生を中心にした「GEBCO-日本財団アルムナイチーム」が、水中探査ロボットによる4000m級の海底探査技術を1年がかりで競う国際コンペ「Shell Ocean Discovery XPRIZE」(米国・XPRIZE財団主催)で優勝、昨年9月には東京で優勝報告会も行われ、事業に弾みもついた。

世界には、1万bを超す西太平洋のマリアナ海溝・チャレンジャー海淵のように光も電波も届かない超深海も多く、技術面だけでなく資金面の制約、さらに安全保障面から手持ちの海底地形データの公表に消極的な国もあり、解明が進んでいなかった。地形的・地質的に陸とつながっていると認められれば200㌋を超えて大陸棚を設定することができる新しい「延長大陸棚」の考えが沿岸国を刺激し、作業を加速させた面もある。

しかし、それ以上に温暖化に伴う異常気象や海面上昇、プラスチックゴミによる海洋汚染の深刻化など、これ以上、海を野放図に使い続ければ人類の生存が危うくなる―といった「海に対する危機感」がようやく国際的にも共有されてきたと言えるのではないか。

Seabed2030が提案された17年当時、大接近時でも地球から5000万`b以上彼方にある火星の表面が衛星データでほぼ解明されているのに比べ、海底地形の解明が大幅に遅れている現実に、記事を書きながら驚いた記憶がある。事業では10年後の100%地図化に向け、今後、未開拓海域でのマッピング(地図化)、漁船など小型船によるデータ収集(クラウドソーシング)、技術革新を急ぐという。

調査では南極周辺の海域で約2万年前の最終氷期最盛期に氷河が急速に溶けたことを示す海底地形の痕跡も見つかっており、海底資源開発や海底地震・海底火山など学術研究面に活用できる有用なデータも豊富に得られよう。「人類の夢」とも言われた海底地形図の早期完成に期待したいと思う。
恐怖が先行する新コロナウイルス [2020年03月03日(Tue)]

「正しく怖れる」ことの難しさ
防止策が新たな不安を増幅
気になる「黄禍論」の可能性



中国・武漢に端を発した新型コロナウイルスによる感染が3月3日現在で世界71カ国・地域に広がっている。飛沫(ひまつ)感染、接触感染のほか、感染経路が分からない「市中感染」も確認され、現時点では有効な治療法がなく、ワクチン開発の目途も立っていない。先行き不透明の中で恐怖と不安が感染を上回るスピードで拡大し、防止対策を厳しくすれば、それに合わせて不安が増幅する事態も生まれている。

医学・疫学の知識がないまま軽々にモノを言うつもりはないが、1点、どうしても気になる点を記しておきたいと思う。感染の拡大とともに広がりを見せる偏見、差別である。何度か取材したハンセン病の歴史を見ても、偏見や差別は不安や恐怖から生まれる。

一連の報道を見ると、欧州で最初に感染者が確認されたフランスでは新聞に「黄色人種の危険」といった見出しも登場している。中国人だけでなく日本人や韓国人など東アジア系の人々が街中やソーシャルメディアで差別的な言葉を浴びせられるケースが増え、シンガポールやマレーシアでは中国人の入国を全面禁止するよう求めるオンライン署名活動に多くの人が賛同している、と報じられている。

当の中国では、「武漢人」がネット上で疫病の隠語や象徴として使われ、武漢人や武漢ナンバーである「鄂Aナンバー」のプレートを付けた車を歓迎しないと書いた横断幕を掲げる地域や武漢人を「出ていけ」などと罵倒する現象も起きている、といわれる。

日本でも厚生労働省の要請を受け、政府派遣のチャーター機で武漢から帰国した邦人や集団感染があったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」などで医療行為に当たった災害派遣医療チームの医師や看護師、その家族が、「バイ菌扱い」され、保育園・幼稚園から子どもの登園自粛を求められる事態も発生。日本災害医学会が2月22日、偏見や先入観に基づく差別を強く批判する抗議声明を発表している。

新型コロナウイルスに対するパニックが、欧米では中国人だけでなくアジア系全体、アジアでは発症国である中国や中国に次いで感染者が多い韓国や日本、そして中国や日本では武漢の関係者や感染者に接触した可能性がある人々に対する偏見・差別を生み、さらに激しさが増す気配にある。2月24日から中国などアジア5カ国・地域に続き、日本や韓国からの入国を禁止したイスラエルのようにアジアの人々の入国をシャットアウトする動きも増えそうだ。

2002年に中国・広東省を起源として32の国・地域に広がり世界を揺るがせたSARS(重症急性呼吸器症候群)も新型コロナウイルスの一種だった。遡れば1世紀前のスペイン風邪では、1918年から約2年間に当時の世界の人口の3割に当たる5億人が感染し、2000万人〜4500万人、日本でも当時の人口の0.8%強に当たる45万人が死亡した。ウイルス性感染に対する恐怖は人類のDNAに染みついている。

WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は消極的な印象も受けるが、71カ国・地域に感染が拡大した現状は、どうみてもパンデミック(世界的な大流行)の様相にある。致死率はSARSの9・6%に比べ低く、糖尿病や免疫抑制剤を使用している高齢者らを除けば症状も軽いとされるが、感染力の強さは尋常ではなく、この点が恐怖と不安を深める一因となっている。

中国の工場稼働率の低下でサプライチェーン(部品供給網)が寸断し、世界経済が減速し始めており、経済がさらに悪化すれば偏見・差別がさらに膨張しよう。1月29日付の中国・人民日報は「私たちの共通の敵は疫病であり武漢の人ではない」と訴える記事を掲載しているが、人々が冷静さを取り戻し、染み付いた恐怖や偏見が消えるには時間が掛かる。東日本大震災の被災地、とりわけ原発事故があった福島の農水産物は放射性物質が基準値を下回った今も、購入をためらう人が国内でも10%を超え、風評被害から抜け切れないでいる。

気になるのは、今回の新型コロナウイルスに関連して、19世紀後半から20世紀前半に欧米に現れた「黄禍論」が再び頭をもたげる可能性がいくつか指摘されている点だ。近年の中国の経済大国化や経済摩擦など他の要因もあろうが、冒頭でも触れたように、中国人だけでなくアジア人全体を一括りにして差別する動きが欧米に出ているのは間違いない気がする。日本も含め当のアジア各国にも、同様に差別意識を露わにした書き込みなどが目立ってきている。

「正しく怖れる」という言い方がある。しかし、新型コロナウイルスの正体が解明され、治療法が確立されない限り正しく怖れることは難しい。騒ぎが長引き、被害が拡大すれば、グローバル化で極限まで拡大した格差など他の要素も絡み、偏見や差別は社会の底辺に広く沈潜し、その後遺症も長く残る。

安倍内閣が打ち出した小中高校の一斉休校要請に対し、その根拠を問う声も出ている。しかし、新型コロナウイルスの被害が今後どう進むか、現時点で分からない以上、可能な限りの封じ込め策をとり、関連して発生する不都合にその都度、対処していくしか方法はないのではないか。評価は常に後付けである。結果が悪ければ、それでも手ぬるかったということになる。結局、必要と判断した対策を進めるしかない。そんな思いで事態の推移を見守りたく思う。


一方的なミャンマー政府批判は拙速 [2018年03月23日(Fri)]

八方塞がりの「ロヒンギャ」問題
動きとれぬスー・チー国家顧問


ベンガル系のイスラム教徒「ロヒンギャ」問題で欧米各国を中心にした国際社会のミャンマー政府批判が激しさを増している。放火、殺人、略奪、強姦など激しい迫害で約80万人が国外に避難しているとされ難民救済が喫緊の課題であるのは言うまでもない。

しかし問題の背景には英国の植民地時代も含めた複雑な歴史、135もの少数民族が住み独立後70年を経た現在も一部少数民族武装勢力との内戦が続くこの国にとって、民族・宗教問題が複雑に絡むこの問題の解決はあまりに難しい。有効な解決策を示さないまま一方的に非難するのは事態をかえって混乱させる結果になりかねない。

批判の背景には、民主化運動で軍政からの政権交代を実現しノーベル平和賞も受賞したアウン・サン・スー・チー国家顧問に対する過大な期待があると思われるが、一人の決断で事態が好転するほど生易しい問題ではない。政権を取ったとはいえ与党の国民民主連盟(NLD)にこうした問題に対応できる人材は育っていないと思われ、軍と警察、国境問題は憲法上、軍のコントロール下にある。

加えて国際世論も割れている。例えばミャンマー政府に軍事力行使の停止や制限のない人道支援を認めるよう求めた国連総会の決議案。2017年11月、135カ国の賛成で採択されたが、中国、ロシアなど10カ国は反対、日本、インドなど26カ国は棄権した。難民の避難先となるタイやバングラデシュ、インドネシア、マレーシアなど周辺国に難民認定の動きはなく入国すれば不法滞在者の扱いとなる。

「ロヒンギャ」と名乗るイスラム系少数民族は全体で約200万人弱、約半数がバングラデシュと接するラカイン州に住む。しかし何時からミャンマーに住み、どうしてロヒンギャを名乗るようになったのか、その意味を含めはっきりしない点が多くミャンマー政府は土着の民族と認めていない。ミャンマーを訪れる度に政府やNGO関係者らにこの点を尋ねたが、誰もが「他の少数民族とは違う」と答え、日本政府も「ベンガル系イスラム教徒」、「ラカイン州のムスリム」といった表現を使っている。

ラカイン州には仏教徒であるアラカン人が多く住み、ミャンマー国民の7割を占める支配勢力ビルマ族と対立、2015年10月に武装勢力「アラカン解放党」(ALP)がミャンマー政府との停戦署名に応ずるまで内戦を続ける一方でイスラム教徒とも激しく対立してきた。ミャンマー国軍や警察、自警団によるイスラム教徒ムスリムへの殺人や放火、強姦など迫害が続く中、ムスリム過激派の「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)による駐在所攻撃なども発生、対立は激しさを増している。

こうした中、ミャンマー政府は国連人権理事会が派遣を決議した国際調査団の受け入れを拒否し外国メディアの取材も制限している。個人としては問題点を国際的に明らかにするためにも、調査団の受け入れを前向きに検討すべきと考えるが、国連とミャンマー政府の考えには大きな隔たりがある。

外電によると3月16日、オーストラリア人弁護士がスー・チー国家顧問を「人道に対する罪」で裁くようオーストラリアの地方裁判所に申し立てた。オーストラリアは国家や加害者の国籍に関係なく人道犯罪や戦争犯罪を自国で裁ける「普遍的管轄権」を採用しており、これに基づく申し立てというが、他の紛争地を見るまでもなく宗教・民族問題の解決は難しく時間が掛かる。一方的な申し立ては、ただでさえ身動きがとれぬスー・チー国家顧問をさらに難しい立場に追いやることになる。

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仏教徒、ムスリムの子どもたちが通うラカイン州の小学校=BAJ提供=


解決の糸口が見えない中、日本財団がNPO法人ブリッジエーシアジャパン(BAJ)とともにラカイン州で進めた学校建設事業が3月、100校完成の節目を迎え、その記念式に出席した。うち8校は仏教徒、ムスリム、ヒンドゥーなど宗教も民族も違う子供たちが通う学校となっており、訪問時は学年末の休暇中だったが特段の混乱は起きていないという。八方塞がりの状態にあるロヒンギャ問題の解決は、こんな息の長い取り組みの先にしか見えてこない気もする。
異例の展開の総選挙に思う [2017年10月27日(Fri)]

「排除」は当然、理念・政策の一致こそ
「高齢化」対策が語られない不思議



臨時国会の冒頭解散に始まった今回の総選挙は、希望の党の立ち上げと民進党の合流、立憲民主党の結党、大型台風が列島を直撃する中での投票日、自民党の予想を越える大勝と、目まぐるしく事態が展開し “極めて興味深い選挙”となった。特に印象の強い2点に絞り感想を記したい。

▼“落としどころ”が希薄な危うさ

まずは小池百合子・希望の党代表の「排除」発言。「排除します」の一言には傲慢な印象が付きまとい、小池代表は明らかに言葉の選択を誤った。希望の党に対する期待は一挙にしぼみ、小池代表も25日開催された同党の両院議員懇談会で謝罪した。しかし新党を立ち上げる以上、理念・政策を同じくする人物を糾合するのは当然で、希望の党に変わって躍進した立憲民主党の枝野幸夫代表が選挙後に示した「我々の旗の下、同じ考え方の皆さんと勢力を広げたい」との考えも、表現こそ違え意味は同じである。

無原則に受け入れたのでは左右両派が同居し迷走した民進党の二の舞になり、それこそ有権者にとって迷惑な話である。民進党は希望の党、立憲民主党、無所属の3つに分れて選挙に臨み、報道によれば計108人が当選、衆院解散時に比べ11議席増えたとされている。離党者が相次いだ民進党のままで選挙に臨んでいれば、これだけの数が当選することは、まず有り得なかった。

その意味でも「排除の論理」は正しく、それを持って小池氏が党代表を退く必要はない。ただし都政を見るまでもなく、小池代表には、いろいろな問題を提起して衆目を集める一方で、 当然、用意されるべき“落としどころ”が希薄な危うさがある。「都民ファースト」を唱えるだけでは事態は進まず、都政にしろ、国政にしろ、早晩行き詰まる。当面は国民の関心が高い2020年の東京五輪・パラリンピックの無事開催に向け、都政に邁進すべきと思う。

▼見えない社会保障の将来

次いで、安倍信三首相が「国難」と表現する「少子高齢化」。乱暴に言えば、65歳以上の高齢人口に関わる年金、医療、介護など社会保障費をどう確保し、現役世代や次世代の子どもの負担をどこまで軽減するか、さらに高齢者に偏った社会保障をどのように全世代型に変えていくかが、この問題の焦点である。70歳を超えた自らの立場からも注目したが、教育や保育の無償化など「少子」対策には各党が活発に言及したものの、「高齢化」対策は不思議なほど語られなかった気がする。

最終的な解決策としては、「入り」を増やすか、「出」を減らすしかない。しかし社会保障費の財源の多くを赤字国債に頼ってきた結果、国の借金は1070兆円と危険水域にあり、このままでは破綻しかねない。さりとて景気回復による大幅な税収増が当面、期待薄である以上、「入り」を増やすには消費税の引き上げしかない。既に医療費の本人負担の引き上げなど見直しが進められている「出」の削減も、今後の急速な高齢化を前にすれば、余程大胆な策を採らない限り帳尻は合わない。

一方で、今回の総選挙を見るまでもなく、投票率は60歳代以上が他世代より高く、票への影響を考えると各党が大胆な提案に二の足を踏むのも分らない訳ではない。しかし昨年9月時点で3494万人、人口の27・3%に達した高齢人口は今後も増加が続き、14歳〜64歳の生産年齢人口2・2人で高齢者一人を支える社会構造はさらに厳しさを増す。社会保障制度の将来が見えない状況は今後も続き、家計金融資産が過去最高の1800兆円になっても、こうした不安を抱えたままでは国内消費の伸びも期待できない。

それでは打つ手は全くないのか。きめ細かな対策を採ることで事態を緩和する策はいろいろあると思う。毎年1兆円以上拡大し2015年で41・5兆円に達した国民総医療費ひとつとっても、医療費の伸びを抑制する多彩な手段がもっと工夫されていいのではないか。

例えば、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間を指す「健康寿命」と「平均寿命」の間には男性で約9年、女性は12年を超す差があり、この期間をどう過ごすかが、高齢者の最大の不安となっている。厚生労働省の資料によると、日本人が生涯に費やす医療費は2566万円(2013年度)。男性はうち46%、女性は53%を70歳以上に使い、健康寿命が終了すると医療費も激増する。となると健康寿命を引き上げることができれば、医療費も減る理屈。高齢者が利用できる運動プログラムや施設の整備が、もっと積極的に提案されていいように思う。

一方で元気な老人は増え、2017年現在、4・5人に1人、770万人が何らかの形で働いている。高度の技術、知識を持った人も多い。就業の機会を含め社会参加する受け皿を増やし、何らかの形で多少の収入が得られる制度を整備すれば、年金や介護費用の圧縮も期待できる。

少子高齢化の最先端を走る日本の試みには世界も注目している。どのような社会を創るにせよ政治の決断は欠かせず、与野党から責任ある提案が積極的になされる必要がある。そのためにも「数合わせ」の再編より、各党が自らの理念・政策を競い合う政界の姿の方が時代に合っている気がする。

臓器移植法施行20年―低迷する日本の移植医療  [2017年08月09日(Wed)]

5年後、現在の10倍・年間1000件目指す
世界最低水準 欧米では既に一般医療に



脳死を中心とした臓器移植が一般医療として各国で広く定着する中、日本だけが大きく取り残されているー。日本財団がこの度、日本臓器移植ネットワーク(JOT)の運営支援に乗り出すのを受け、日本医学会会長でもある門田守人JOT理事長らから話しを聞くうち、かつて厚生省(現厚生労働省)クラブ詰めとして我国の脳死判定基準を取材した1985年当時に比べ、各国との差が著しく拡大しているのを改めて実感する。

脳死ドナー数の推移.png

日本移植学会・ファクトブック2016より

1968年に札幌医科大で行われた我国初の「和田心臓移植」に対する疑念や心停止をもって人の死とする傾向が強い日本人の死生観など、いくつかの原因が考えられるが、少なくとも和田心臓移植が行われた50年前、日本の移植医療は世界のほぼ最先端にあった。

人工臓器の開発やがん治療における先進医療の発展など医学の世界は大きく進歩しているが、小児の心臓疾患など臓器移植でしか治療の見込みのない疾患は多く、超高齢化社会の到来で臓器移植を必要とする高齢者も確実に増えつつある。

▼日本人お断り

JOTによると臓器移植法の施行(1997年)から20年経った現在の我国の臓器提供数は人口100万人当たり0・7人、“移植大国”と呼ばれる米国の37分の1、隣国・韓国の12分の1と世界でも最も低い水準にあり、2016年の臓器提供数は脳死後64件、心停止後32件に留まる。

この結果、これまでに1341人がJOTに登録した心臓移植で見ると、実際に移植を受けられた人は338人、ほぼ同数の313人は移植を受けることなく死亡している。こうした事情もあって1984年から2013年までに156人が海外で心臓移植を受けている(日本移植学会資料)が、2008年、国際移植学会はイスタンブール宣言で「自国民の臓器移植は自国で行うよう」各国に求め、欧州各国や豪州は日本人の受け入れを禁止する措置を取っている。

臓器提供数の少なさを反映して我国では、親族など生存中のドナーが肝臓や腎臓を提供する生体移植が多いが、健康な生体にメスを入れるのは医療の在り方としても問題がある。そうした認識に立ち、ドナーと移植希望者(レシピエント)をつなぐ国内唯一の機関であるJOTと日本財団が脳死や心停止後の臓器移植の拡大を目指すことになった。当面、5年後の脳死移植を現在の10倍、1000件まで増やすのを目標に、脳死に対する啓蒙活動や臓器提供(摘出手術)が可能な約900の大学附属病院など医療施設のネットワーク化、臓器移植コーディネーターの増員などを急ぐことになった。

2010年の改正臓器移植法で本人の意思が不明な場合も家族の承諾があれば脳死後の臓器提供が可能となり、脳死移植に対する国民の理解も改善傾向にある。JOTによると「臓器提供をしたい」とする人は、この15年間で10%以上増加、2013年現在43・1%と「提供したくない」(23・8%)を上回っており、今後の取り組み次第で我国の臓器移植が大きく前進する可能性もある。

▼高齢者の社会参画促すためにも

高齢化時代を迎え大きな課題となっている腎不全を見ても、今年4月現在の人工透析患者は32万人に上り、腎臓移植は生体、献腎を合わせ1670件、0・5%に過ぎない。人工透析は週に3回程度、1回5時間も掛かり、患者は行動を大きく制約されるが、腎臓移植の場合は健康な人とほぼ同様の日常生活が可能。費用も人工透析が年間600万円前後掛かるのに対し、臓器移植の場合は初年度こそほぼ同額が必要だが、2年目以降は3分の1程度で済むとされる。一人でも多くの高齢者の社会参加を求める高齢化社会の要請に応えるためにも臓器移植の普及が望ましいのは言うまでもない。

現在、心臓移植で日本人を受け入れているのは米国とカナダに限られる。関係者によると、米国が外国人の受け入れを認めているのは米国籍を持たない人からの臓器提供が全体の10%以上を占める現実があるからであり、カナダは外国人の受け入れを移植施設ごとに前年実績の5%以下に限定している。いずれにしても日本のように経済的に豊かで医療技術も発達している国が、何時までも外国での臓器提供に頼るのは許されないということだ。

JOTが目指す年間1000件は、イスラエル、韓国、ニュージーランドのレベルを指す。好むと好まざるにかかわらず移植医療を拡大させない限り、国民の健康、ひいては保健医療制度を健全に維持していくことが難しい時代となっていることを広く認識される必要がある。
九州北部豪雨災害 間伐不足が被害拡大 [2017年07月18日(Tue)]

森林、人工林の復活に間伐材の活用を
多くが伐採の適期 経済性をどう取り戻す


九州北部を襲った豪雨災害では限られた地域に猛烈な雨が降り、福岡県朝倉市や東峰村山間部のいたるところで表層崩壊が発生、大量の流木が中小河川を塞き止め被害が拡大した。記録された雨量は24時間で500_を超え、「30年に一度」、「50年に一度」といった豪雨を前にすると、人間の社会活動が地球温暖化―異常気象の大きな原因となっているのは最早、疑いようがない。

同時に今回は、これまでの災害で見られなかった圧倒的な流木が被害を一層、大きくした。報道などによると、この地域の山間部は風化しやすい火山性の地質で、猛烈な雨により、いたるところで表層崩落が起きたのが原因とされ、間伐など手入れの行き届かない人工林の問題も改めて浮き彫りになった。

わが国は国土の67%が森林、うち約40%は人工林と言われる。温暖化の進行で豪雨は今後も起き、人工林の手入れが行き届かない現状では、特殊な地質でなくとも、同様の災害は避けられない。間伐材のバイオマスエネルギーへの活用など森林を復活させる取り組みが改めて急務となる。

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根が付いたまま流れ着いたスギの大木

九州山林管理局などの調査によると、土砂崩れは朝倉市と東峰村の山間部約300ヵ所で発生、大量の土砂と流木が10の河川に殺到。橋に引っかかる形で川をせき止め、あふれた濁流が地域を襲った。福岡県は流木の量を36万立法b、20万dとしているが、土砂に埋まったままの流木や海に流された分は含まれず、実際の量はもっと多いと推測されている。

朝倉市杷木地区で支援活動に取り組む日本財団メンバーによると、近く流れる寒水(そうず)川の長さ7〜8bの若鳩橋周辺にも大量の流木が重なり、流されるうちに表皮がはがれ、根が付いたままの流木も多く、中には直径70a、長さ15bにも成長した巨木も目に付くという。この地域は林業もさかん、人工林からも大量のスギやヒノキが流出したと見られている。

▼建材として出荷までに70年

 全国森林組合連合会のWebサイトなどによると、人工林は戦後、全国的な造林運動として造成され、成長が早く、密集して植えることでまっすぐに育つ特性を持つスギやヒノキ、マツなど針葉樹が植えられた。最も多いスギの場合だと、最初に1f当たり3000本前後の苗木を植え、木の生長に合わせ数年ごとに間伐を繰り返しながら適正数を保ち、最終的に500〜600本まで間伐する。

最初の5〜7年はつる草の除去など下刈り作業。8〜10年頃から育ちの悪い木や邪魔になる広葉樹などを伐採し、10年過ぎから木を真っすぐに成長させるための枝打ち作業を進め、高級建材として最終的に出荷できるまでに70年近く掛かる。この間、15年目ぐらいから間伐材でも一定の商品価値が出るが、当初は何の価値もなく、ひたすら気の遠くなるような作業が続く。

▼80%以上が間伐実施せず

森林の70%以上は個人が所有する私有林。多くが植林後60〜70年、伐採の適期を迎えているが、安価な外材に押されて値崩れし、建設ラッシュにもかかわらず、2000年の立木価格は20年前の34%まで落ち込んでいるという。かつて薪や木炭として使われた間伐材は石油やガスに代わり、一方で伐採に掛かる費用や苗木価格が上昇。人手不足もあって、同年の調査では、3ヘクタール以上の森林経営者のうち82・3%が間伐を実施していない、と答えているという。

森林は手入れを怠れば、葉が茂っている樹冠部分が重なって地面に光が射さず下草が生えない。結果、栄養を含んだ土は雨に流され、根が十分張らないため幹が太らない線香林が増え、風雪害で折れ、大雨で根こそぎ流される。針葉樹は広葉樹に比べ根が浅く、九州北部の豪雨災害では、崩れやすいこの地特有の地質も加わって、圧倒的な豪雨に耐えられなかったようだ。

現状のままでは、森林、特に人工林の経済性は成り立たない。しかし森林の保水力や水質浄化力、さらには今回のような表層崩壊の防止力を見込めば、抜本的な森林対策、人口林対策を進めることで得られる価値は限りなく大きい。しかも「〇〇年に一度」といった豪雨は、今後も間違いなく頻繁に起きる。

間伐材をバイオエネルギーとして活用する試みも進んでいると聞く。東日本大震災での東電原発事故を受け、原子力エネルギーの活用が難しい情勢にある。間伐材を有効に活用する道は十分あるのではないか。そうすれば森林や人工林の手入れを復活させる道も開け、災害対策だけでなく地域おこしにもつながる。未曽有の豪雨被害を前にそんな思いを強くする。(了)
トランプ政権への過度の期待は危険 [2017年06月21日(Wed)]

自分ファーストのパリ協定離脱
国内、国際社会での孤立進む



海をテーマにした初の国連海洋会議が6月初旬、米ニューヨークの国連本部で開催された。温暖化や酸性化、さらにはサンゴの白化現象が急速に進む海の現状に対する危機感がようやく国際的にも共有され始めた感じだ。

そうした中で米トランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的枠組みを決めた「パリ協定」からの離脱を宣言、その後の先進7カ国(G7)環境相会合も米国を除く6カ国がパリ協定を実行する旨の共同声明を出したものの、米国に関しては「脚注」で独自に温暖化対策に取り組むと記すにとどめた。

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国連総会本会議で政府間パネルの設置を提案する笹川陽平・日本財団会長

地球環境は現在、温暖化の原因となる世界の2酸化炭素(CO2)濃度が18世紀後半から19世紀にかけた産業革命前に比べ40%、平均気温も1度上昇し、母なる海の温暖化・酸性化が進み、北極、南極の海氷面積は減少、沖縄やオーストラリアのサンゴが死滅する恐れも出ている。

このためパリ協定では、地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標を設定、世界196ヶ国・地域が締結し2016年発効した。各国がCO2の削減目標を独自に定め、その実現に努力する内容で、目標が現実に達成された場合も、地球温度は産業革命前に比べ3度近く上昇すると言われている。

初の国連海洋会議はこうした危機感を受けて開催され、国連本部で6月9日に開催された国連総会本会議では、異例の措置として民間からの「提案」にも門戸を開放。長年、海に取り組んできた日本財団の笹川陽平会長はIMO(国際海事機関)やFAO(国連食糧農業機関)など、いくつもの組織が独自に問題に対処する縦割りの弊害を正すため、海洋の諸問題を横断的に管理する政府間パネルの設置や未だ80%以上が未解明となっている海底地形図の作成などを提案した。

トランプ大統領のパリ協定離脱表明は、こうした国際社会の流れに明らかに逆行する。パリ協定は先進国だけに排出規制を義務付けた京都議定書に代わって先進国、途上国を問わず全員参加方式で各国が排出規制を進める枠組みとなっており、その土台となる国連気候変動枠組条約を含め、主導したのは米国のオバマ前政権である。政権が変わったからと言って、国としての国際公約をいとも簡単に変更するのはあまりに無責任と言うしかない。

「中国、インドに比べ内容が不公平」、「米国経済に害を与える」を離脱の理由としており、トランプ大統領の支持基盤である中西部・ラストベルト(錆び付いた工業地帯)の石炭産業の活性化が狙いとも言われている。国連気候変動枠組条約には留まる見通しと言われるが、中西部の石炭産業が下火になった最大の原因はシュールガスの登場であり、一方で温暖化対策を念頭においた電気自動車や再生可能エネルギーの開発など新しい産業も成長、社会は温暖化対策と経済成長を両立させる方向に向かっている。

トランプ大統領の決断は中国に次ぐ温室効果ガスの発生国として責任を放棄した形で、時代錯誤的でさえある。離脱表明直後にABCテレビなどが実施した世論調査では離脱反対が59%と賛成の28%を大きく上回ったと報道されており、米国の世論を二分するどころか、トランプ大統領の支持率はさらに低下する可能性もある。

乱暴を承知で言えば、トランプ大統領は世界や米国の利益より自らの利益を優先したと言え、「米国ファースト」と言うより「自分ファースト」と言うしかない。この場合、気になるのは日米同盟との関係である。中華秩序の復興を軸に覇権を求める中国や北朝鮮・金正恩政権の冒険主義とも言える危うさを前にすると、日本の外交・安全保障は今後も日米同盟が基軸となる。

しかし、北朝鮮の核・ICBM開発ひとつとっても、トランプ流の自分ファーストに従えば、ICBMが米国に届くか否かが問題であって、そうでなければ問題はなく「日本の防衛は視界の外」となる可能性さえ出てくる。

日米同盟を軸に我国の安全保障を考えるのは、ある意味、当然として、両国関係を安倍首相とトランプ大統領の信頼・親密な関係に過度に依拠するのは危険ということになる。温暖化の原因に関しては諸説があるが、地球的規模で被害が広がる巨大台風やハリケーンなどを前にすると、人間の活動が原因の一つになっていることは否定できず、パリ協定からの離脱に対する批判はさらに増え、国際社会における米国の孤立も進む。

大統領選ではクリントン候補の“変わり身の早さ”が気になり、どちらが米国の指導者に相応しいのか、判断を迷う面があったが、その後の経過を見る限り、トランプ政権の今後はあまりに危うい。本来、首脳同士の信頼関係は国と国の相互信頼の要となるが、今度ばかりは、過度の期待をおくのは危険な気がする。(了)
クリントンとともに敗れた米国メディア [2016年11月17日(Thu)]

米大統領選に見る影響力の低下
ヒラリー大勝利は“蜃気楼”の事前指摘も

米大統領選で不動産王ドナルド・トランプ氏が勝利した。「何でもあり」の大統領選、さらに暴言・不規則発言を重ねたトランプ氏の当選に正直、驚いた。加えて米国の有力100紙の過半がヒラリー・クリントン氏を支持しながら、「トランプ大統領」の誕生を阻止できなかった事実を前にすると、米国社会での伝統的なメディアの影響力の低下を再確認させられた気もする。「クリントン氏とともにメディアもトランプ氏に敗れた」ということである。

各種報道によると、今回の大統領選では米国の有力紙100社のうち57紙がクリントン支持を打ち出し、トランプ支持はわずかに2紙に留まった。ニューヨークタイムスやワシントンポストなど多くが、人種、女性問題などで過激な発言を繰り返すトランプ氏を批判し、「陰謀」、「うそ」と逆襲するトランプ氏と対立した。

日米のメディアは同じ客観報道の立場を取る。しかし事実を報ずる一般ニュース記事はともかく、社説・論評では、米国の新聞が社の姿勢、意見を明確に打ち出すのに対し、日本の新聞は最近でこそ原発や憲法改正などで社論を明確にする姿勢を強めているが、選挙で米国のように特定の候補の支持を明確に打ち出すことはない。

同時に、大多数の新聞やテレビにあれだけ激しく批判された候補者が当選することも、まず有り得ない。一連の女性蔑視発言を例にとれば「トランプは孤立している」、「女性蔑視発言で婦人や若者の票を完全に失った」といった報道が相次いだが、CNNの出口調査によると白人女性の53%がトランプ氏に投票したと報じられており、報道内容と結果には大きな開きがある。

米国民のニュースの取得先は新聞が20%、テレビ57%、インターネット38%といった調査結果もあるようだ。この数字に従うと5人に一人しか新聞を読んでいない、ということにもなり、新聞論調の内容云々より言論機関としての影響力そのものが大幅に落ち込んでいる、ということにもなる。新聞のトランプ氏批判よりも、SNSなどを通じトランプ氏のメディア批判を読んでいた有権者の方が多かった可能性さえある。

新聞やテレビの世論調査も適格性を欠いた。確かにクリントン氏の得票率は50・08%と過半数を超え、この点で最終的にクリントン氏が1〜2%有利とした世論調査の数字は、それなりに正確だったようにも見える。しかし現実にはトランプ氏が接戦州のほぼ全てを制し、最終選挙人獲得数で70人以上の大差をつけ勝利した。

クリントン氏は私用メール問題で連邦捜査局(FBI)が再捜査を決定したことで「勢いを止められた」と最大の敗因に挙げている。影響があったのは否定できないが、コミーFBI長官は投票日2日前に「訴追見送り」を明らかにしており、再捜査の事実だけで、これだけの大差はつくとは説明しにくい。もともと、クリントン氏優勢を裏付けるような客観状勢がなかった可能性もある。

クリントン氏にはトランプ氏の「偉大なアメリカの復活」に対抗する分かりやすいキャッチフレーズがなかった、あるいはワシントン政界の生活が長く“新味”に欠けた点なども敗因のひとつであろう。従来の大統領選で投票率が低かった白人低所得者層の投票率が大幅にアップした、事前の世論調査では明らかにならなかった“隠れトランプ支持派”が予想以上に多かった、ヒスパニック系のトランプ支持率が予測より高かったーなどの点も指摘されている。

詳しくは専門家の分析を待つとして、トランプ氏勝利の選挙結果を前に気になっている記事がある。元NHKアメリカ総局長を務めた日高義樹ハドソン研究所主席研究員が投票日前の11月1日発売の月刊誌「リベラルタイム」のコラム「THE POWER of U.S.A」に掲載した「マスコミが作り上げた『ヒラリー大勝利』」の一文だ。

日高氏はこの中で「アメリカのマスコミは、ヒラリー・クリントンを何としてもホワイトハウスに送り込まなければならないと考えているウォール街やアメリカ企業等の強い影響の下にある」と指摘した上で「アメリカ中に広がっている『ヒラリー・クリントン大勝利』というイメージは、いわば蜃気楼である。その蜃気楼に映っている幻影は、アメリカのリベラルなマスコミがつくり上げたものだと私は考えている」と言っている。

読み方はいろいろあろうが、記事は同誌の締め切りから、大統領選投票(11月8日)の3週間ほど前に書かれたとみられ、当時の報道は、クリントン楽勝が圧倒的だった。ちなみに前回10月31日付のマイブログの拙稿「TPPにみる米大統領選の“無責任”」でも、見出しの1本に「元下院議員はクリントン氏大勝の予測」を立てた。既に私用メール問題の再捜査が明らかになっていたが、マイナス影響があったとしてもクリントン候補の優位は動かないとの判断で、日本財団の姉妹団体・笹川平和財団のシンポジウムでの元民主党下院議員の発言をそのまま見出しにした。そうした経過もあるだけに、日高氏の記事が余計、印象に残っている。

今回の大統領選報道が何故これほど外れたのか。事前の世論調査一つを取っても、固定電話所有者を主な調査対象とする日米のメディアの調査方法には限界があり、調査に応じる有権者の減少など問題も多い。新聞やテレビが影響力を取り戻す方策は有り得るのか、さらにこれほど激しく敵対したメディアとトランプ新大統領の関係はどうなるのか、新大統領の政策、国際社会への影響を含め注目したい。(了)

5年後に向けどう動く「フジモリ家」 [2016年06月13日(Mon)]

「負の遺産」解消 対立関係の融和こそ
戦術面でケイコ、ケンジ姉弟に確執?


ペルー大統領選に挑んだアルベルト・フジモリ元大統領の長女ケイコ氏が、前回2011年の大統領選に続き再び決選投票で涙を飲んだ。7月に大統領に就任する元首相のペドロ・クチンスキー氏とは極めて僅差。定数130の国会(一院制)で73議席を占める「人民勢力党」の党首でもあり、41歳の年齢からいっても当然、5年後の大統領選で雪辱を期すことになるのではないか。

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「政治」を語るフジモリ・ケイコ氏、2011年6月リマの自宅で

そのためにも国を2分する「フジモリ」対「反フジモリ」の対立構造、フジモリ元大統領への抵抗感をどう解消していくかが、今後の課題となる。その中で一つ気になる点がある。一連の現地電によると、弟で国会議員でもあるケンジ氏は「ケイコが敗れた場合、2021年の次期大統領選には自分が立候補する」と語るとともに決選投票での投票を見送ったというのだ。

背景には、今回の選挙で「父の時代には誤りもあった」と、とかくマイナスイメージが強い父親と距離を置く戦術をとったケイコ氏との間に確執があったとも報じられている。少数与党のクチンスキー氏は当選確定後、「団結と対話」を訴え、2010年1月に最高裁刑事法廷で禁固25年の有罪が確定、服役中の元大統領について、議会の承認を条件に自宅軟禁に切り替えることも可能との考えを示している。

報道以上に姉弟の関係を知る材料はないが、既に77歳、舌部の腫瘍も抱える父親の処遇も含め二人がクチンスキー氏の提案や今後の国内融和をどう考えるのか、是非、聞きたい気がする。

元大統領は2000年末から約5年間、日本で亡命生活を送った。一時期、曽野綾子日本財団会長(当時)宅の食客となるなど日本財団と交流があり、2011年の大統領選直後、尾形武寿理事長がケイコ氏を自宅に、元大統領を服役先の軍警察施設に訪ねた際、同席したことがある。

この時、ケイコ氏は「(敗れたとはいえ)結果には誇りを持っている」、「過去、第2戦(決選投票)に進んだ政治家は全員、大統領になっている」と5年後の大統領選に並々ならぬ意欲を語った。

また元大統領は「政治的発言は禁じられている」としながらも、「(有罪を認める結果になる)恩赦は受けない」と言葉少なに語るとともに、「ケイコとケンジには誇りと期待を持っている」などと述べた。

あくまでその場の印象だが、元大統領の断片的な言葉の中に、ケンジ氏の将来により大きな期待を持っている感じも受けた。ケイコ氏は1994年の両親離婚後、母に代わってファーストレディ役を務め、国民から見れば、その分、元大統領のイメージが強い。負けたケイコ氏よりケンジ氏の方が次の大統領選を戦いやすい、という判断かと勝手に推測した記憶がある。

クチンスキー氏は前回大統領選の第1回投票で3位となり、決選投票ではケイコ氏を支持している。ともに自由貿易を推進する中道右派の立場にあり、決選投票では政策よりもフジモリ元大統領の功罪が争点となった。フジモリ派には元大統領が進めた強硬策も「あの時代はテロの撲滅を最優先しなければならなかった」と肯定的に見る向きが強い。

しかし今回の選挙では、フジモリ元大統領の評価を軸にした政局に対する若者の抵抗感も強かったと聞く。「負の遺産」を解消するには、対立構造の融和こそ欠かせない。クチンスキー新大統領の下、「フジモリ家」がどう動くのか、興味を持って見守りたいと思う。(了)
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