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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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一方的なミャンマー政府批判は拙速 [2018年03月23日(Fri)]

八方塞がりの「ロヒンギャ」問題
動きとれぬスー・チー国家顧問


ベンガル系のイスラム教徒「ロヒンギャ」問題で欧米各国を中心にした国際社会のミャンマー政府批判が激しさを増している。放火、殺人、略奪、強姦など激しい迫害で約80万人が国外に避難しているとされ難民救済が喫緊の課題であるのは言うまでもない。

しかし問題の背景には英国の植民地時代も含めた複雑な歴史、135もの少数民族が住み独立後70年を経た現在も一部少数民族武装勢力との内戦が続くこの国にとって、民族・宗教問題が複雑に絡むこの問題の解決はあまりに難しい。有効な解決策を示さないまま一方的に非難するのは事態をかえって混乱させる結果になりかねない。

批判の背景には、民主化運動で軍政からの政権交代を実現しノーベル平和賞も受賞したアウン・サン・スー・チー国家顧問に対する過大な期待があると思われるが、一人の決断で事態が好転するほど生易しい問題ではない。政権を取ったとはいえ与党の国民民主連盟(NLD)にこうした問題に対応できる人材は育っていないと思われ、軍と警察、国境問題は憲法上、軍のコントロール下にある。

加えて国際世論も割れている。例えばミャンマー政府に軍事力行使の停止や制限のない人道支援を認めるよう求めた国連総会の決議案。2017年11月、135カ国の賛成で採択されたが、中国、ロシアなど10カ国は反対、日本、インドなど26カ国は棄権した。難民の避難先となるタイやバングラデシュ、インドネシア、マレーシアなど周辺国に難民認定の動きはなく入国すれば不法滞在者の扱いとなる。

「ロヒンギャ」と名乗るイスラム系少数民族は全体で約200万人弱、約半数がバングラデシュと接するラカイン州に住む。しかし何時からミャンマーに住み、どうしてロヒンギャを名乗るようになったのか、その意味を含めはっきりしない点が多くミャンマー政府は土着の民族と認めていない。ミャンマーを訪れる度に政府やNGO関係者らにこの点を尋ねたが、誰もが「他の少数民族とは違う」と答え、日本政府も「ベンガル系イスラム教徒」、「ラカイン州のムスリム」といった表現を使っている。

ラカイン州には仏教徒であるアラカン人が多く住み、ミャンマー国民の7割を占める支配勢力ビルマ族と対立、2015年10月に武装勢力「アラカン解放党」(ALP)がミャンマー政府との停戦署名に応ずるまで内戦を続ける一方でイスラム教徒とも激しく対立してきた。ミャンマー国軍や警察、自警団によるイスラム教徒ムスリムへの殺人や放火、強姦など迫害が続く中、ムスリム過激派の「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)による駐在所攻撃なども発生、対立は激しさを増している。

こうした中、ミャンマー政府は国連人権理事会が派遣を決議した国際調査団の受け入れを拒否し外国メディアの取材も制限している。個人としては問題点を国際的に明らかにするためにも、調査団の受け入れを前向きに検討すべきと考えるが、国連とミャンマー政府の考えには大きな隔たりがある。

外電によると3月16日、オーストラリア人弁護士がスー・チー国家顧問を「人道に対する罪」で裁くようオーストラリアの地方裁判所に申し立てた。オーストラリアは国家や加害者の国籍に関係なく人道犯罪や戦争犯罪を自国で裁ける「普遍的管轄権」を採用しており、これに基づく申し立てというが、他の紛争地を見るまでもなく宗教・民族問題の解決は難しく時間が掛かる。一方的な申し立ては、ただでさえ身動きがとれぬスー・チー国家顧問をさらに難しい立場に追いやることになる。

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仏教徒、ムスリムの子どもたちが通うラカイン州の小学校=BAJ提供=


解決の糸口が見えない中、日本財団がNPO法人ブリッジエーシアジャパン(BAJ)とともにラカイン州で進めた学校建設事業が3月、100校完成の節目を迎え、その記念式に出席した。うち8校は仏教徒、ムスリム、ヒンドゥーなど宗教も民族も違う子供たちが通う学校となっており、訪問時は学年末の休暇中だったが特段の混乱は起きていないという。八方塞がりの状態にあるロヒンギャ問題の解決は、こんな息の長い取り組みの先にしか見えてこない気もする。
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