歴史のわだかまり、どう解消?
[2015年10月27日(Tue)]
日本で楽観、中国で悲観増える
韓国に根強い“戦勝国願望”
笹川平和財団・日中友好基金が10月20日に開催した講演会「中国の現状と課題」で現代中国人の日本感について講演者の一人は、「近代化の面において中国に前向きな影響を与えた国家であると同時に、世界の国の中で中国に最大の苦痛をもたらした国として複雑で矛盾した感情と認識を持っている」と指摘した。
先の大戦で「損害と苦痛を与えられた国」故の感情といえ、相前後して言論NPOと中国国際出版集団が発表した2015年の日中共同世論調査でも、日本では「日中関係が進展するにつれ歴史問題は徐々に解決する」との楽観的認識が30%近くまで上昇しているのに対し、中国では逆に「歴史問題が解決しなければ、中日関係は発展しない」と考える人が前年の30%強から半数近くまで急増している実態が浮き彫りになった。
やや性格は異なるが、9月3日に中国・北京で行われた「抗日戦争勝利70周年」式典に出席した朴槿恵韓国大統領の動きも、歴史面から見ると理解しやすいような気がする。朴大統領の式典出席に関しては、中韓貿易の拡大や北朝鮮に対する中国の影響力、中国から大きな脅威・影響を受けてきた韓国の歴史的・地政学的立場から解説する向きが多いように思う。
それ自体に異論はないが、式典の狙いは、第2次大戦で抗日戦争を主導したのは蒋介石率いる国民党という歴史的事実に対し、「中国共産党こそ、その主役だった」とアピールする点にあり、抗日戦争との関係では韓国も似た立場にある。
韓国は大戦後のサンフランシスコ講和条約に戦勝国としての参加を望んだが認められなかった。日本と戦った実績がないというのが理由のようだが、大手紙に掲載された木村幹・神戸大教授の解説によると、韓国は日本の植民地時代に上海に樹立された「大韓民国臨時政府」の国名を引き継いでおり、「戦勝国」を建前としている。
となると大統領の式典出席は、「韓国も戦勝国」のメッセージを国際社会に送るのが狙いであり、歴史に対する国民の不満の解消にもつながる。こう解釈した方が、同盟国・米国の反対を押し切ってまで強硬出席した大統領の行動は理解しやすいように思う。結果、歴史問題を軸にした中韓両国の共闘、日本攻撃は今後、一段とエスカレートすると見るのが自然。冒頭の日本感を披露した上海師範大学人文学院の簫功秦教授も「日本に対する疑念と不信感が解消されるまでには長い年月が必要」と指摘している。
日本に関する議論に幅があるのもこのためだ。例えば2年前、韓国で出版された「日本は今、何を考えているか」の中国語版出版記念会に関連して10月初旬、北京で開催された専門家懇談会。本は韓国・延世大学の文正仁教授ら2人が日本の有識者14人に日本の戦略構想や外交戦略、安全保障などについてインタビューした結果をまとめ、韓国でも評判になったという。
14人には山口昇・防衛大学教授や元朝日新聞主筆の船橋洋一氏、政策研究大学院大学の白石隆学長ら多彩な識者が名を連ね、中国語版の出版は日本の観点を知ってもらう上でも意味がある。日本財団の関連団体が中国語版の出版を支援した経過もあり筆者もオブザーバーの形で出席した。
しかし関連して行われた専門家懇談会は、わが国の一連の安全保障法制が可決された直後ということもあったのだろうか、安倍晋三首相の8・15談話を「戦争を反省していない」、「慰安婦問題を他人事のように論じている」と非難、「日本は戦後の国際秩序を変えようとしている」などの日本批判が吹き出す展開となった。
一方、冒頭の「中国の現状と課題」の講演会では、中国の研究者が「日本は世界の国の中で中国に最大の苦痛をもたらした」、「(日清戦争と日中戦争の)2度にわたり中国の近代化を止めた」など厳しい指摘をする一方、「日本の支援によって中国の近代化が実現した」、「中国は、日本社会が軍国主義から離れている現実を知るべきだ」など冷静な意見や「互いが相手を知るためにも交流を増やすべきだ」、「双方の安定的発展こそ双方の利益」といった前向きの提案も出された。
日中共同世論調査結果でも、中国では日本を「軍国主義」とみる人が46%と前年に比べ10%近く上昇、軍事的脅威を感ずる国・地域に関しても日本が81・8%と米国を抜き1位に跳ね上がっている半面で日本人の58%、中国人の47%は平和的な共存共栄を望んでいる。
簫教授は今後の中国について@ナショナリズムが弱まり、日本に対する過剰な反応が徐徐に解消されるA双方の矛盾か解消できないまま相互不信が深まり、摩擦・衝突にまでエスカレートするーの二つの可能性を指摘、「現実は後者の可能性がますます高くなっている」と警告した。
どの国にも、その国の立場があり、様々に対立する多様な意見がある。歴史に対するわだかまりを解消するのは容易ではない。打開策のない現状に戸惑うばかりだが、少なくとも歴史問題を中心に各国で高揚するナショナリズムが、日中韓3国の将来に「有益な何か」を生み出す可能性がないことだけは、はっきりしている。(了)
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