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四季折々の雑記

 30年以上在籍したメディアでは「公」の動きを、その後10年以上は「民」の活動を中心に世の中を見てきた。先行き不透明な縮小社会に中にも、時に「民の活力」という、かすかな光明が見えてきた気もする。そんな思いを記したく思います。


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―参院選公約 消費税減税ー [2025年04月28日(Mon)]

財源明示が公党としての責任
“明日の日本”に向け党派超えた議論を

 7月の参院選に向け野党第一党の立憲民主党は4月28日、食料品にかかる消費税を1年間0%とする案を公約に盛り込むことを臨時執行委員会で決めた。

国民民主党やれいわ新選組が消費税の税率引き下げや廃止を公約に打ち出す中、立憲民主党は枝野幸男元代表が「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党を作ってください」と減税を求める動きを牽制するなど党内の意見が割れ、対応が注目されていた。

苦渋の選択

野田佳彦代表は民主党政権下で首相を務めた2012年、増加する社会保障財源の確保に向け「社会保障と税の一体改革」と銘打って消費税を段階的に10%に引き上げる方針を打ち出し、同12月の総選挙で惨敗・退陣した。

当時、国債や借入金を合わせた国の借金は990兆円を超え、財政を立て直すには国民に等しく負担を求める消費税の引き上げの可否が焦点となっていた。

増税にはいつの時代も国民の反発が強い。筆者はあえて増税を打ち出した野田氏の退陣に当たり「評価されるべき野田前首相の覚悟」の一文をブログ(*)に載せた記憶がある。そんなこともあり、今回の方針決定に改めて私見を述べたい。
https://blog.canpan.info/miyazaki/archive/93

発表会見で野田氏は「悩み、困り、悶絶した」と方針決定が苦渋の選択であったことを明らかにするとともに減税は経済情勢に応じ1回限り延長可能、赤字国債に頼ることはしないと言明した。

食料品には軽減税率が適用され消費税は8%。財務省などの試算によると、0%にした場合の減収は国と地方を合わせ約5兆円に上る。野田代表は「地方財政にも未来世代にも負担を及ぼさない」方策を検討するとしたものの、具体的な財源策は示さなかった。

参院選を前に現状では、消費税減税を掲げる野党各党が支持率を伸ばし、与党自民党からも参議院議員を中心に減税を求める声が高まっている。苦渋の選択の背景には、消費税減税に全く触れなければ党が埋没しかねない、あるいは小沢一郎衆院議員らが増税に反対して集団離党した12年のような事態が再び起きかねない、といった党代表としての判断があったと推測する。

国の借金GDPの約2倍

国の財政は、その後の赤字国債の発行で悪化の一途をたどり、今や国の借金残高はGDP(国民総生産)の約2倍1300兆円にも膨れ上がり、先進国でも最も深刻な財政状況にある。

国の財政はどうあるべきかー。資料などによると財政の健全化を目指す財政規律派、金融政策で市場への資金供給量を増やすリフレ派、自国通貨を発行する我が国が円建て国債をいくら発行しても財政が破綻することはないとするMMT派に大別されるようだ。

財政・経済に関する知識は持たないが、国の財政も家計と同様、歳入と歳出のバランスが必要で、国の借金がGDPの2倍にも達する現状はあまりに異常。ツケを追う将来世代に対しても無責任だと思う。

総額115兆円と過去最大となった25年度一般会計予算も、ほぼ4分の1を公債の発行でまかなっており借金残高はさらに膨らむ。発行した国債の償還や利子など国債費が歳出のほぼ4分の1を占め、その分、政策選択の幅が狭まる結果も招いている。

減税など各党の公約は財源の裏付けが示されない限り、どこまで実現性があるのか有権者には分からない。財源確保策を示さないまま聞こえのいい政策を打ち出すのは財政ポピュリズムと言うしかなく、公党としての責任を果たしたことにはならない。

大きい政治が果たす役割

「失われた30年」の中で日本の賃金水準は国際的にも大きく落ち込み、一方で近年は諸物価の高騰が目立つ。高齢化に伴う社会保障費の膨張、急速な少子化に伴う労働力の減少などを前にすると、この国の将来は一層、厳しさを増す。 “耐え忍ぶ覚悟”が必要な時代を迎えている気もする。

ウクライナ戦争やトランプ米大統領が2期目の就任以降、矢継ぎ早に打ち出す自国第一主義の関税政策などを前にすると国際社会も確実に大きな転換期・動乱期に入っている。

次代をどう切り開いていくか、政治が果たすべき役割はこれまでになく大きい。そうした中で行われる参院選。聞こえのいい公約ばかりを並べ集票を競い合う姿は感心しない。 “国の明日”に向け、党派を超えた真剣な論戦が展開されるよう期待する。
失われた30年 [2025年02月08日(Sat)]

国際競争力大きく後退
賃金停滞の後遺症今も


25年春闘が始まった。労使とも23、24年度春闘の“実績”を受け「賃上げの定着」を目指すとしている。しかし国際社会の中で日本の賃金水準は引き続き低下している。さまざまな原因が指摘されているが、素人目には「失われた30年」の後遺症からいまだに抜け切れていない気がする。加速する少子化、政治の低迷、国際社会の分断等、マイナス材料も加わり「失われた40年」になる事態を危惧する。

「失われた30年」は1990年代初頭のバブル崩壊から始まり、当初は「失われた10年」などと表現された。しかし、回復の兆しが出始めたところで2008年9月に米投資銀行の経営破綻を発端にしたリーマン・ショック、2011年3月には未曽有の大災害「東日本大震災」、さらに最近では2019年末に中国・武漢市で最初の感染者が報告され瞬く間にパンデミック(世界的大流行)に発展した新型コロナウイルス禍が続き、30年以上、低迷が続いた結果、日本は国際社会の多くの分野で後退した。

まず賃金水準。1990年代初頭、当時24カ国が加盟した経済協力開発機構(OECD)の中で最高水準にあった日本の賃金は2022年、加盟38カ国中25位に。日本の研究者が発表した論文がほかの論文にどれだけ引用されているかを示すTOP10%補正論文数も1990年代後半の4位から2015〜17年には11位に後退。IMD(国際経営開発研究所・スイス)が毎年発表する国際競争力ランキングも2024年は38位。1989年から4年間、アメリカを抜いて第1位だった過去を振り返ると隔世の感がある。

さまざまな原因が指摘されているが、バブル崩壊やリーマン・ショックに直面した結果、企業が不況に備え新規の設備投資や人件費への資金投入を控え手元資金をため込む動きが進んだ点が大きい。現に財務省の法人企業統計によると、企業の利益から税金や配当を差し引いた「内部留保(利益剰余金)」は2023年度末で約601兆円。12年連続で過去最高を更新し、10年余で2倍近くに増えている。

企業の利益は株主への配当のほか設備投資、従業員の賃金引上げに充てるのが本来の姿と思う。然るに内部留保が倍増する一方で人件費は、1990年代半ば以降200兆円前後で推移し2023年度になっても約221兆円に留まっている。これでは賃金は伸びない。現に主要7カ国(G7)の1991年と2020年の名目賃金を比較すると、米国が2・8倍、英国が2・7倍に伸びたのに対し、日本は1・1倍と横ばいの状態にある。

厚生労働省の人口動態調査によると、2022年の平均初婚年齢は男性が31.1歳、女性は29.7歳。この20年間で、ともに2歳ほど遅くなり、生涯未婚率(50歳時点の未婚率)も男性が28.3%、女性が17.8%と20年前に比べ男性は16ポイント、女性は12ポイント増えている。他にも要因が考えられるが、賃金の低迷が晩婚・非婚を推し進める一因となったのは間違いない。

日本財団が昨年9月、少子化をテーマに全国の15〜45歳の男女計6,000人を対象に実施した調査で未婚の約4000人に結婚について聞いたところ、46%が「したい気持ちはある」と答える一方で「実際にすると思う」は27%。理想の子ども数に関しても17%が「3人以上」と答えながら、実際に3人以上持つと思うと答えた人は5%と3分の1以下に留まった。

理想と現実に大きな差がある原因として「経済的な負担が大きい」(40%)、「給与水準が低い」(27%)などが上位に挙げられており、背景にはやはり賃金の落ち込みがある。設備投資も23年度、5年ぶりに過去最高額を更新したと報じられているが、5年前に比べ5%弱の増加に留まっている。新規の設備投資の低迷がデジタル革命やIT革命など新たな産業の開拓で日本が世界に大きな後れを取る原因となっている。

 その意味で経済界の責任は大きい。少子化に伴う人口減少・労働力不足など我が国を取り巻く環境は一層、厳しさを増す。欧米に比べ働き手の取り分である労働分配率の低さが指摘される中、25春闘でどのような結果が出るか注目したい。(了)
若者は米大統領選をどう見ているか? [2024年11月04日(Mon)]

―対立・分断進む米大統領選―
18歳意識調査 若者に戸惑い
混迷する政治の立て直しが急務



 現在の日米関係を「良好」とみる声は半数弱、他国から攻撃・侵略されたとき「米軍が守ってくれる」とする回答も約3割にとどまったー。11月5日に投開票が行われる米大統領選をテーマに日本財団が行った「18歳意識調査」の結果だ。
当の大統領選は最後まで民主党・ハリス、共和党・トランプ両候補の熱戦が続き、政策論争に程遠い個人攻撃や非難合戦で米国社会の対立と分断が一段と深まる展開となっている。
調査は10月19、20の両日、全国の17〜19歳1000人を対象にインターネットで行われ、11月に大統領選が行われることを知っていたのは40%。女性は28%と低かった。
まずバイデン政権下における日米関係の印象。「良好だった」は「どちらかといえば」を含め47%、逆に「よくなかった」は14%、3人に一人(36%)が「わからない」と答えた。
大統領交代に伴う日米関係への影響に関しては「良い変化があると思う」(26%)、「変化はないと思う」(19%)、「悪い変化があると思う」(17%)と意見が分かれた。最後まで接戦が続き予測が難しい大統領選を反映してか、ここでも「わからない」が35%に上っている。
日米関係の重要な取り組みとしては、「北朝鮮問題への共同対応」、「日本国内の米軍基地問題の解決」、「日米間の経済協力の拡大」がいずれも3割前後(重複回答)で上位を占めた。核武装化を進める北朝鮮に対する警戒感、最近、沖縄県で相次いだ女性暴行事件が背景にある。
日本国内の米軍基地に対するイメージ(重複回答)としては、「米軍人らによる事件・事故が多く危険」、「騒音や環境汚染などの悪影響」を指摘する声が1、2位を占め、「他国から日本が攻撃・侵略された時に米軍が守ってくれる」は全体3位、31%だった。
日本国内の米軍の存在が「アジアの平和と安全に役立っている」、米軍基地があることで「他国が日本に攻めてくることを諦める」はともに18%、逆に「他国の攻撃目標となって危険」との指摘も13%あった。
このほか、近年、常態化している自衛隊の定員割れに関しては「災害対応力の低下」、「国防力の低下」を懸念する声がそれぞれ52%、41%に上り、政府が打ち出している防衛費の増額に関しては賛成が32%、反対が37%と意見が割れている。
選挙ではトランプ候補が「米国第一主義」を一層、鮮明にしており、国際社会に警戒感が広がっている。ハリス氏が勝利した場合も深刻な国内の対立と分断を修復するのは難しく、米国の国際社会への影響力低下は避けられない。
これに対し先の総選挙で与党(自民・公明)が大敗したわが国は、今月11日に召集される特別国会で首班指名選挙が行われるが、いまだ形が見えず政治の混迷は今後も続く。
それでは揺れ動く国際社会に対応するのは難しい。その意味でも一日も早い政治の安定が急務―。今回の調査結果を見るまでもなく、そんな思いを強くする。
加速する少子化 [2024年09月09日(Mon)]


 
「解」が見えない難題 
経済的支援だけで解決は無理
多彩な原因が複雑に絡み合う


少子化の流れが止まらない。近年は韓国や中国でも少子化が進み「国家の非常事態」として経済的支援などが行われているが、多彩な原因が複雑に絡み合い、有効な打開策は見えていない。ここでは少子化と密接に関連する生涯未婚率の増加を中心に、少子化の現状を見てみたい。

生涯未婚率は50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を指す。2020年時点の国勢調査でみると、男性の生涯未婚率は約28%、女性は約18%。1975年は男性2・12 %、女性4・32%だった。長寿化が進み一概に比較するのは問題があるが、数字の上では約半世紀間で男性は10倍以上、女性も4倍強に増えた計算。2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になるとの予測もある。

関連して1970年代前半、「10」を超えていた婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)は2021 年、「 4・1」まで下がり、年間100万組を超えた婚姻件数も50 万 1千 組と半減。1975年に男性が27・6歳、女性は24・5歳だった平均初婚年齢も昨年は男性 31.1 歳、女性 29.7 歳に上昇している。

もう一点、「完結出生児数」。固い役所言葉だが、要は結婚後15〜19年を経た夫婦が持つ子供の数をいう。約80年前の1940年は4・27人、2023年は1・90人と過去最低の数字になっている。これに伴い、世帯の子供数は07年、1人が最多となり、22年時点で1人が49・3%、2人が38%、3人を持つ世帯は12・7%に留まっている。1人の女性が一生に産む子供の数を示す合計特殊出生率も22年は1・20まで落ちた。

少子化の原因として多く使われている言葉が「非婚・晩婚化」。1990年に起きたバブル崩壊後の日本経済の低迷で、崩壊前に先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)のトップクラスにあった日本の平均賃金は停滞し、現在は加盟38か国中25位まで落ち込んでいる。「失われた30年」の付けが若者や子育て世代を直撃し、非婚・晩婚化が進む大きな原因となった。

バブル崩壊に伴って発生した経済混乱を教訓に企業が給与改定に慎重になったのが一因と言われるが、財務省が資本金1千万円以上の企業約3万社を対象に行っている法人企業統計によると、金融・保険関係を除いた企業の内部留保(利益剰余金)はこの間も増え続け、23年度は日本のGDP(国内総生産)にも匹敵する600兆円を超え、過去最大の数字に膨らんでいる。

企業が欧米並みの新規投資や従業員の賃金アップに前向きに取り組んでいれば、わが国でもイノベーションを起こすような産業が育ち、非婚・晩婚化ももっと穏やかに進行したと思う。残念でならない。

日本より10年遅れて少子化が始まった韓国では歴代政権が「国家の非常事態」として過去20年間、子を持つカップルへの各種補助金など日本円で約40兆円の支援策を進めてきた。しかし23年の合計特殊出生率は0・72、世界で最も低い数字となった。

岸田政権も昨年1月、第3子以降の支援に重点を置いた「異次元の少子化対策」を打ち出しているが、韓国の教訓は、子供手当など経済的支援に重点を置いた取り組みだけでは一時的な効果があっても抜本的な解決策にならない現実を示している。

時代の流れの中で若者の価値観は変わりつつある。最近は出産・育児より、自らの生活を優先させ、結婚しないことを選ぶ「非婚主義」の言葉もしばしば耳にする。温暖化が進み急速に悪化する地球環境や少子化に伴う生産年齢人口(15〜64歳)の減少で、わが子が将来背負う過大な負担を懸念して子を持つことを躊躇う向きも増えつつあるようだ。「静かなる有事」と言われる所以でもある。

少子化は自然の流れに任せるしかない、といった指摘もある。その場合、人口増を前提にした現状の社会システムを維持するのは難しくなる。例えば年金制度。我が国は現役世代が高齢世代を支える賦課方式をとっており、現役世代が急減すれば給付額の引き下げなど大幅な見直しは避けられない。大都市への過度の人口集中が少子化を加速している、といった問題もある。

恐らく、これ一つで十分といった解決策はない。社会全体できめ細かい改善策を積み上げ、少子化の流れを少しでも“穏やか”にし、並行して基幹システムを手直ししていくしかないと思う。その場合、政府や企業には少子化・人口減少時代に見合った事業の開発や新たな雇用、働き方の開拓が求められることになる。(了)
障害者の社会参加に向けて [2024年06月05日(Wed)]

―初の脱福祉野菜工場に思うー
全国への広がりに期待
大手企業の協力をどう獲得するか!


「全国初の脱福祉型」と銘打った野菜工場がこの春、宮城県美里町に登場した。工場は障害者就労施設の一つ「就労継続支援B型事業所」を廃止して一般事業所に一新された。利用する障害者は福祉サービスを受ける立場から、就労して給与を受け取り、経済的な自立を目指す立場に変わる。

障害者支援の在り方を抜本的に変えるばかりか、膨張する社会保障費を抑制する画期的な試みと言えるが、同様の試みを広げていく上で課題は何か探ってみた。

工場は地元の社会福祉法人「チャレンジドらいふ」(白石圭太郎理事長)が運営していたB型事業所を廃止して3月、一般事業所「ソーシャルファーム大崎」に一新した。十四棟の大型ビニールハウスでホウレンソウを水耕栽培し、B型事業所から移った障害者11人が働いている。

現在、1日4時間、週5日働く。一般事業所の従業員として最低賃金制度(宮城県の場合は1時間当たり923円)の適用を受け、月7〜8万円を賃金として受け取る。B型事業所時代の「工賃」月1万数千円から大幅に増え、障害者手当を含めると月12〜13万円、自立の道も拓ける。工場を訪れると、障害者の一人(24)は「収入が大幅に増え仕事も面白い」と笑顔を見せた。

事業は宮城県とチャレンジドらいふ、日本財団の連携プロジェクトとしてスタートした。日本財団がビニールハウスなど工場の整備費二億六千八百万円を助成し宮城県も初年度運転資金として一千万円を補助している。

三菱ケミカルグループ(本社:東京都千代田区)からホウレンソウの水耕栽培のノウハウの提供を受け、年間十七回、計五二dを収穫、同グループの支援でコンビニに卸し、年間四千五百万円の売り上げを目指している。

B型事業所は現在、全国で約1万5000を数え、障害が比較的重い約35万人が利用する。障害者総合支援法に基づく助成制度があり、障害者20人程度の事業所で国と自治体から年間約4千万円支援される。総額は約8000憶円。情勢金で事業所の運営がそれなりに成り立つ面があり、新規事業の開拓など活気を欠く面が問題となってきた。

その分、今回の取り組みに対する注目度は高い。何より目を引くのは技術指導から卸先まで大手企業が全面的に支援している点だ。財務省の法人企業統計によると、大企業(資本金10億円以上)の内部留保は2022年度、511兆円と過去最高を記録している。

我が国は「失われた30年」で国際社会の中で大きく落ち込んだ。大企業が従業員の待遇改善や新規投資に消極的だったのが一因との指摘もある。ここは巨額の内部留保を活用して企業の社会的責任(CSR)を強化するよう、社会全体で大企業に求めていく手もあるのではないか。

ホウレンソウという農産物の生産に着目した点も大きいと思う。我が国の食料自給率は38%(カロリーベース)と先進国の中で最低の水準にある。自給率のアップは食の安全保障面からも急務で、の必要性が指摘されており障害者が比較的取り組みやすい分野のような気もする。ちなみに三菱ケミカルの関係者によると、ホウレンソウ一つとっても需要はまだまだ高いという。

我が国では少子高齢化に伴う労働力不足やGDP(国内総生産)の2倍を超す「国の借金」の存在など難題が山積している。障害者数は身体障害者、知的障害者、精神障害者を合わせ一千百五十万人(2023年、厚生労働省調査)に上る。

日本財団では全国10カ所を目途にモデル事業所の整備を目指すという。人工知能(AI)の発達で、障害のある人が対応できる職種は増えるはずだ。脱福祉型の取り組みが少しでも広がるよう期待して止まない。
―少子化時代の教育に若者は何を望むかー [2024年03月06日(Wed)]

大学の定員削減には40%が反対
財源確保 年金・介護費の削減を
世代を越えて痛みを分かち合う時代


日本の出生数は昨年、75万8631人。8年連続で減少し、過去最少となった。出生数と密接に関係する婚姻数も48万9281組と戦後初めて50万組を割り、少子化は今後、一層、深刻化する。

これに伴い大学や短大への進学者数も減る。文部科学省の学校基本調査によると、2023年度の進学率は大学が57.7%、短期大学3.4%、専門学校21.9%。女性を中心に進学率が上昇しているが、文科省の試算では2040年度の大学進学者数は50万6000人。22年度の64万人から20%以上減る。

これを受け、生き残り競争も激しさを増している。1990年以降、39の女子大が共学化に踏み切り、複数の大学の統合あるいは学部を増やし総合大学化を目指す動きも目立つ。外国人留学生の受け入れも90年の約4万人から20万人近くまで増えた。

自治体が地元の私立大学を公立大学に衣替えし若者流出に歯止めを掛ける試みも顕著。この結果、90年に39校だった公立大学は昨年、100大学まで増えた。若者が地域に留まったまま学べるオンライン大学の設立許可申請も増える傾向にある。

こうした動きを若者はどう見ているか。日本財団が1月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった調査によると、通学不要のオンライン大学の増設、留学生の受け入れ増加、公立大学の増加にはほぼ半数、大学の総合大学化や女子大の共学化にも40%以上が賛成している。

6割が大学無償化に賛成する一方で、4割は大学定員削減に反対している。望ましい入試の形としては、男性が「学力検査を中心とした試験」、女性は「総合的な評価を中心とした評価」を求める声がいずれも4割を超えている。

▼世代間の意見の違い、どう調整するか?

教育強化に欠かせないのは公的支出の強化。初等、中等、高等教育に対する我が国の公的支出は一般支出の7・8%、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38国平均の10・6%(19年)を下回っている。

調査では28%がOECD平均程度、13%が15%以上に増やすよう提案。そのための年金、国際協力、防衛、介護、医療の順で歳出を減らすほか、法人税や所得税増税、新税の創設による財源確保を求めている。ただし、消費税増税を適切とする声は7・1%に留まっている。

国の財政が逼迫する中、将来の人材を育てる教育費をどう確保していくかー。歳出削減策の上位に年金や介護費の減額が挙がっている点から見て、若年層が高齢層の”自己負担増”を求めているのは間違いない。受給年齢の引き下げや受給額の減少など年金サービスの低下が目立つ中、高齢者には難しい選択となるが、膨張する社会負担に耐えるには、世代を越えて痛みを分かち合うしか方法がない気がする。
―若者は将来をどう見ているか― [2024年02月06日(Tue)]

7割が国、6割が自分の将来に不安
GDP4位への転落は“国力の低下”



 若者の7割が国の将来、約6割が自分の将来に「不安がある」と回答ー。日本財団が昨年12月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった60回目の18歳意識調査の結果だ。
 
 調査は日本のGDP(国内総生産)について、IMF(国際通貨基金)が先に「近くドイツに抜かれ世界4位に後退する」との見通しを公表したのを受け、国の将来を中心に聞いている。次代を担う若者の6、7割もが国や自分の将来に不安を持つ姿は尋常ではない。

 少子高齢化に伴う社会の縮小、GDP(国内総生産)の2倍を超す国の借金、政治の停滞など、わが国を取り巻く環境はあまりに厳しい。世界が大きな転換期を迎える中、この国の将来はどうあるべきか、あらためて考えさせられる思いがする。

 名目GDPの国際比較は米ドル換算で行われ、GDPを人口で割って算出される1人当たりのGDPはその国の平均所得の指標にもなる。折からの円安が日本の落ち込みを加速している面はあるが、個人所得は「失われた30年」の中で一貫して低迷しており、4位後退の一番の原因は「国の力」そのものの低下にある。

これを受け、調査では3人に2人が日本のGDPランキングは「今後も下降する」と見ている。若者が将来を不安視する材料はあまりに多く深刻だ。急速な少子高齢化に伴い65歳以上の高齢者1人を支える生産年齢人口(15歳〜64歳)は、2020年の2.1人から70年には1.3人と若者の負担感は一段と厳しさを増す。

 国債や借入金など “国の借金”(政府の債務)も23年3月末でGDPの2倍、1270兆円余と先進国では例を見ない額に膨れ上がり重く圧し掛かる。財政の硬直化が柔軟な政策投資の大きな足かせともなっている。

 国の将来、目指す方向を示すべき政治も機能していない。19年に言論NPOが実施した調査では、「日本の政党や国会を信頼できない」と考える人は6割を超え、政治的無関心が膨れ上がっている。あえて否定的な面を列記したが、18歳調査の結果は、こうした厳しい現実がそのまま反映された形だ。

 一方で、1月から年間投資枠や非課税保有期間が拡充された新NISA制度に4割以上が「関心がある」と答えている。過半数は魅力的な投資先などについて「分からない」としているものの、自力による資産形成の必要を感じている若者が4割を超しているのは、予想以上に多い気もする。将来に対する若者の不安が反映された結果と理解し、社会の立て直しを急ぐ必要がある。

能登半島地震 [2024年01月22日(Mon)]
被災地支援の要は“初期対応”
役割大きい災害ボランティア
小回り効く小型重機活用を


 国際社会が大きく変動する中、「失われた30年」で沈滞した日本の「新たな30年」はどんな時代となるかー。そんな思いで新年を迎えた途端、能登半島地震が起きた。
 日本は世界で起きるマグニチュード6以上の地震の20%が発生する地震大国。常に大地震と隣り合わせとはいえ、家屋やインフラが壊滅し、確認された死者も地震発生から3週間を経て230人を超えた。
輪島市北西部などで地盤が4bも隆起し、海岸線が200b以上沖合に移動した地域もある。もともと海底が隆起して形成された能登半島で恐らく数千年に一度の現象と報じられ、想像を絶する自然の脅威に唖然とする。

▼ボランティア元年から30年

 全国から延べ100万人以上が被災地に駆け付けボランティア元年と呼ばれた阪神淡路大震災からほぼ30年、医療、家屋の清掃、炊き出し、心のケアなど様々な支援を行う多彩なボランティアも育ってきた。複数の自治体が被災自治体を1対1で支援する「対口(たいこう)支援」も広がってきた。
 ボランティア活動も含め被災地支援は、いかに迅速に被災地に入るか、換言すれば道路確保が初期対応の要となる。今回の地震は、大半を海抜三百b以下の低山地と丘陵地で占める能登半島の特殊な地形もああって、入り組んだ道路が至る所で崩落、陥没した。

折からの豪雪も加わって自衛隊や消防、警察の大型、中型車両や重機の被災地入りが困難を極めた。被災地に入れない限り復興支援は進まない。特に被災者救出は「災害が発生してから七十二時間が勝負」といわれるように時間との闘いだ。
 地震発生翌日、特に被害がひどかった珠洲市や輪島市に入った日本財団・災害対策事業部のメンバーによると、当初、多くの車両や重機が半島入り口の金沢市などで待機を余儀なくされ、災害ボランティアの助けで被災地入りする車両も目立った。
近年、ショベルカーやユンボ(油圧ショベル)など小形重機の扱いに慣れた災害ボランティアも多数育っている。普段から小型重機を使うメンバーも多く、ボランティアという名のプロ集団だ。
こうしたNGOと連携協定を結んで普段から災害発生に備える日本財団のような取り組みもある。自衛隊や警察、消防などと共に災害ボランティアを加えた初動態勢の強化、ネットワークの整備が急務と考える。

▼守りの強化こそ

政府が14年、30年以内の発生確率を「70%」とした首都直下型地震や、昨年、今後20年以内の発生確率が「50%〜60%から60%程度」に引き上げられた南海トラフ地震が何時、起きるか分からない。
ひたすら備えを強化することが「守り」につながる。能登半島地震の報道を見ながら、そんな思いを強くする。(了)

―生成AI にどう向き合うか?― [2023年09月06日(Wed)]

積極的評価から懸念まで反応は多彩
加速度的な進化にどう調和
「規制」の動きに注目


 「生成AI」を巡る議論が盛んだ。単純作業や大量のデータ処理をスピーディーにこなすAIの能力が少子化で労働力不足が進む我が国を救うといった積極的な評価から、個人情報など機密情報の漏洩から不正確な情報や偽情報の拡散を懸念する声まで内容も幅広く多彩だ。

 歴史を振り返れば、第一世代AIとも表現される電卓が登場した時、誰もがその計算力の速さと正確さに驚いた。AIの進歩は加速度的に進み、今後、どのように進化していくか、この世界に疎い身には予測がつかない。ただし、その発展形の一つとして登場したのが生成AIということであろう。

日本財団が8月、生成AIをテーマに行った18歳意識調査では、対象1000人のうち3人に1人強(36%)がテキスト生成AIを中心に使用経験がある、と答え、使用経験のない人の約60%も「使ってみたいと思う」としている。使用目的は40%近くが「学校の宿題や職場で使う資料の文書を手伝ってもらうため」、「暇つぶし」も60%を超えた。

「暇つぶし」は選択肢の表現として適格性を欠く気もするが、AIがどんなものか、試しに使ってみたということであろう。生成AIを知っている人の20%弱は、「生成AIの登場で自分の将来の夢・就きたい職業や興味のある科目・学問に影響・変化があった」とも答えている。具体的イメージが固まるのは、これからであろう。

生成AIは、文章、画像から動画、作曲まで何でも“本物らしく”こなす能力を持つといわれる。定型的な文書や簡単な報告文書を作成する便利なツールとして活用する動きは確実に広がると思われる。

米国では、全米脚本家協会(WGA)が5月から、ハリウッドの俳優労組「映画俳優組合 - アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」が7月から、労働環境の改善と併せAIの規制を求めてストライキに入ったと報じられている。

生成AIを使った映画・テレビ番組やChatGPTによる脚本制作が急速に進む中、執筆業自体が機械化される事態を懸念したストライキと理解し、一瞬、19世紀前半の産業革命期に、急速な機械工業の発展に抵抗してイギリスで起きたラダイツ運動を思い出した。

しかし、報道を見ると、最近は俳優本人がAIでコピーされ知らない間に映画やテレビ番組に登場するケースも増えているという。「AI俳優」と表現されるそうだが、これでは将来の危険性も深刻度も違う。肖像権など法的問題もあり、規制を求める声は当然と思う。

今後、AIは加速度的に進化しよう。多くの人の想像を上回る変化が生まれると思う。AIが人間をしのぐ力を発揮する分野は増々、増える。同時に人間にしかできない「分野」も鮮明になり、それを活かして行くことがAIを便利なツールとして使う道につながる。

欧州連合(EU)などでAIを規制する動きが報じられている。それらの動きを、しばし注目したいと思う。
迷走するマイナンバーカード [2023年08月06日(Sun)]
マイナ保険証一本化
若者の過半数「政府の対応は不適切」
まずは国民の不安を払拭すべき!


 マイナンバーカードを巡る政府の対応が迷走している。岸田文雄首相は8月4日の記者会見で、来年秋に予定していた健康保険証の廃止(マイナ保険証一本化)時期をどうするか、最終判断を今秋に持ち越すとともに、マイナ保険証未取得者に対し一律に交付する「資格確認書」の有効期間を当初の1年から5年に延長する考えを示した。

 岸田政権の看板である「こども政策」、「防衛費増額」の財源確保と同様、先送り感が否めず、国民の不安払拭につながるとはとても思えない。7月、報道各社が行った世論調査では、「岸田内閣を支持しない」が「支持する」を軒並み上回り、その原因としてマイナンバーカードトラブルへの政府の対応の拙さが指摘されている。

日本財団が7月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった「18歳意識調査」でも、マイナーバーカードを巡る一連のトラブルに対する政府の対応を「適切」とする若者は「どちらかといえば」を含めわずかに18%、3倍を超す57%が「不適切」と答えている。

行政手続きのデジタル化は煩雑で複雑な事務作業を効率的に進めるためにも必要と判断する。18歳調査でも3人に2人(64%)は「進めるべき」と答え、一定の理解は得られている。現に申請中も含めると8割(79.5%)がマイナンバーカードを取得している。

しかし、今回、資格確認書の有効期間が延長されたことで、マイナ保険証を持たなかった場合の不便・不利益感は大幅に緩和される。
マイナンバーカードには、ほかにも@国民全員への番号割り当てA自宅でも行政サービス手続きができる国民ID制度B自分が誰であるか、写真付きで証明する「身元証明制度」など多彩な機能が盛り込まれる。

その一方で、少子高齢化が急速に進み国の財政の大幅に悪化する中、マイナンバーで国民の資産情報を把握し、所得に応じて税や保険料を公平・公正に負担してもらう狙いも込められている。同様の狙いで2009年から住民基本台帳カード(住基カード)が試みられたが、取得率が上がらないまま新規発行が停止された経過もある。

マイナンバーカードを持つかどうかはあくまで任意。政府の拙速な取り組みが本来の狙いを希薄にしている面もあり、これ以上、迷走が続けば、返還者が増える事態さえ懸念される。ここは時間を掛けて十分な対策を講じ、国民の不安を払拭し理解と納得を得るのが先決と考える。(了)
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