中央社保協/厚生労働省記者クラブでの記者会見
後期高齢者医療制度 短期保険証の発行
昨年比1.7倍増32,961件高齢者の命を奪う保険証を取り上げ、治療の手遅れで亡くなるケース増加 9/16(木)中央社会保障推進協議会では、75歳以上の高齢者を年齢で差別する後期高齢者医療制度の保険料滞納による短期被保険者証(短期証)※の発行件数を調査した結果、全国で2010年8月時点で約3万3000件の短期保険証が発行されていることを記者会見し、昨年の1.7倍にも大幅に増えていることが明らかになりました。記者会見では、「年金月額1万5千円以下の人々を普通徴収としており、年金天引きの対象からはずされる低所得者層に保険料の滞納者が集中している」と述べ、「6.75%の県が、昨年より発行数を増加させ、収納対策としても効果がないことを示している」と指摘し、保険証を取り上げられ、治療の手遅れで亡くなる方ケースの増加も懸念され、医療から高齢者を遠ざける、いのちをも奪いかねない短期証の発行をやめるべきと訴えました。
調査では47都道府県にある各県社会保障推進協議会(社保協)による各県広域連合への聞き取り調査によって、2010年8月1日時点での後期高齢者医療制度「短期保険証」の発行状況について調査を行いました。
青森県をはじめ、現在調査・集計中あるいは公表拒否(栃木県)など6県を除く41都道府県の集計で、2009年10月1日時点で19,579件であった発行数が32,961件とほぼ1.7倍に増加していることが判明しました。
2010年10月1日時点で、発行を見送っていた宮城、群馬、千葉、東京、新潟、福岡の1都5県が新たに発行したことが増加の大きな要因となっています。また、昨年より発行数を減少させたところは11道県にとどまり、29都道府県が増加させています。
8月1日時点での発行がない県は、神奈川と宮崎の2県のみで、神奈川県は、後期高齢者医療保険証の有効期限が4年間(他は2年間)であるため、制度発足以来短期保険証は発行していません。宮崎県は昨年7件の発行がありましたが、8月1日では0件となっています。
群馬県など有効期限切れとなる半年後(2011年2月1日)には、厳格に「資格証明書」を発行するとしており、75歳以上の方々のいのちと健康を守る上で、大きな問題であると考えます。
「資格証明書」ならびに「短期保険証」は、国民健康保険制度において保険料(税)の滞納者への制裁措置として1987年の国保法「改正」で導入され、98年「改正」により、その発行が義務化されたものですが、以降毎年増加し、保険料(税)滞納世帯数は、20.8%(0.2%増445.4万世帯)であり、短期証120万、5.6%、資格書31万・1.4%にものぼっています(09年6月1日、厚労省)。
問題は、こうして保険証を取り上げられた方々から、治療の手遅れで亡くなる方が増加していることにあります。
この「資格証明書」「短期保険証」は、老人保健法の対象者には適用されていませんでした。これは高齢者の心身の特徴にかんがみ、発行されませんでした。
しかし、「給付と負担の公平」、「高齢者にも医療費増(保険料増加)の痛みを感じ取ってもらうしくみ」として、後期高齢者医療制度で義務化されました。
後期高齢者医療制度は、年金月額1万5千円以下の人々を普通徴収としており、年金天引きの対象からはずされる低所得者層に保険料の滞納者が集中しているものと考えられます。豊かな高齢者に応分の負担をという意見もありますが、全日本民医連からの調査報告で明らかになりましたが、一様に高齢者が豊かであるとは言い難い実態です。
今夏の熱中症をめぐる事例でも、改めて高齢者の貧困の実態が明らかになっています。
保険料を払えないような人々からの保険証の取り上げは、高齢者のいのちを奪うものであり、即刻中止することが求められ、また6.75%の県が、昨年より発行数を増加させていることから見ても、これは収納対策としても効果がないことを示しています。
各県ごとで扱いに差があることも特徴 おおむね、短期保険証の有効期限は、6ヶ月ですが、長野県のように、1ヶ月刻みの保険証を発行していることころもあります。
また、東京都は7月時点で1,890件の発行を予定していましたが、実際は1,407件、福岡県は7,000件を予定していましたが、5,522件となりました。この背景には、発行主体となる自治体の取り扱いに差があるため、滞納者とていねいに懇談し発行を0とした市町村もあれば、1年間の保険料滞納を理由に右から左へ、機械的に「短期保険証」を発行したところもあります。
また、窓口で留め置いて、取りに来たら渡す、あるいは「郵送したが居所不明で戻ってきた」などの理由で、事実上の無保険状態に置かれている方々も少なくありません。
沖縄県では、8月1日に、有効期限が切れた方への新しい保険証が更新されず、無保険にされている高齢者が640人いることが判明している。
100歳以上の「消えた高齢者」もこの夏の社会問題となっていますが、自治体におけるていねいな把握の欠如が無保険者をつくり出し、このことは将来の新たな「消えた高齢者」をつくり出しかねない問題となることが懸念されます。
以上のような実態から、短期保険証の発行をやめるよう取り組みを進め、資格証明書を発行させないために都道府県および自治体への働きかけを強めていきます。
また、私たちは、根底にある後期高齢者医療制度の即時廃止を求め、同時に「中間とりまとめ案に対する社保協の見解」にあるとおり、後期高齢者医療制度の根幹を残す新たな制度作り反対し、以下の要望を掲げ運動を進めています。
@後期高齢者医療制度はただちに廃止し、公費負担の増額により、高齢者が安心して医療を受けられるようにしてください。
A年齢による差別と保険料が自動的に上がるしくみを残す制度づくりはやめてください。
B高齢者と子どもの医療費無料化をはじめ、窓口負担を軽減してください。
※〈短期被保険者証〉 保険料を滞納した場合、切り替えられる有効期限のある保険証。期限切れのたびに更新が必要です。国保では3カ月、1カ月という超短期の保険証も発行され問題になっています。また保険証は自治体から届けられますが、窓口に出向けない被保険者に届かないケースも多く保険証のない無保険状態を生んでいます。記者会見の資料/自治体別短期証発行件数