新たに考え、新たに行動して立ち向かう
[2020年11月30日(Mon)]
人より一時間、よけいに働くことは尊い。
努力である。勤勉である。
だが、いままでよりも一時間少なく働いて、
今ままで以上の成果をあげることも、また尊い。
そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか。
それは創意がなくてはできない。くふうがなくてはできない。
働くことは尊いが、その働きに
くふうがほしいのである。創意がほしいのである。
松下幸之助『道をひらく』より
努力である。勤勉である。
だが、いままでよりも一時間少なく働いて、
今ままで以上の成果をあげることも、また尊い。
そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか。
それは創意がなくてはできない。くふうがなくてはできない。
働くことは尊いが、その働きに
くふうがほしいのである。創意がほしいのである。
松下幸之助『道をひらく』より
終戦(1945年8月)の翌々年の1947年4月に創刊された『PHP』、
その創刊号が電子書籍で無料購読できるのを知って読みました。
1947年創刊ということで私が生まれる10年前ですが、
梅田のガード下の浮浪児収容所を訪問したルポ記事など
当時の貧しかった世相をあらためて知るとともに、
松下幸之助さんの社会の「繁栄」にかける熱い思いを受け止めました。
PHP創刊号(1947/4)より――
巻頭言「知識は知識なり」
近代の物の考え方は、どうも知識や才能に余りにも重点を置き過ぎて、
それらが人間社会を動かしている様に思われる。
昔は人智未だ開けず、無知蒙昧の中にあって人々のめぐまれぬ生活は、
知識才能が発達するに従い著しく豊かになり愉しみの中に営まれるに至った。
その限りに於いて「知識は力なり」として全く尊いものであった。
然しやがてその尊さ有難さを重んじ過ぎるの余り、
知識さえ発達させれば間違いなく良い社会が出現すると考え、
知識の為に知識を求める事態にまで立到ってしまったのである。
誠に現今に於ては自分で使うために作り上げた知識の為に
却って人間が使われている様に思える。けれども
知識はあくまで知識であって決してそれ以上のものではない。
それは人間に使われる事によって始めて存在の意義を持ち得るのである。
故に如何程これを豊富に持ったとしても、
魂が磨かれて居なければ何等の役にも立たない。のみならず
智慧才覚が悪用される場合にはどんなに悲しむ可き結果が招来されるか、
此の度の戦争の起った原因の一半も
此の点にあったのではなかろうかと考えられる。
知識才能を磨く事のみによって人間が立派になれると言う如き従来の考え方を
断乎として打破するのでなければ、日本の再建は到底望み得るものではない。
それらが人間社会を動かしている様に思われる。
昔は人智未だ開けず、無知蒙昧の中にあって人々のめぐまれぬ生活は、
知識才能が発達するに従い著しく豊かになり愉しみの中に営まれるに至った。
その限りに於いて「知識は力なり」として全く尊いものであった。
然しやがてその尊さ有難さを重んじ過ぎるの余り、
知識さえ発達させれば間違いなく良い社会が出現すると考え、
知識の為に知識を求める事態にまで立到ってしまったのである。
誠に現今に於ては自分で使うために作り上げた知識の為に
却って人間が使われている様に思える。けれども
知識はあくまで知識であって決してそれ以上のものではない。
それは人間に使われる事によって始めて存在の意義を持ち得るのである。
故に如何程これを豊富に持ったとしても、
魂が磨かれて居なければ何等の役にも立たない。のみならず
智慧才覚が悪用される場合にはどんなに悲しむ可き結果が招来されるか、
此の度の戦争の起った原因の一半も
此の点にあったのではなかろうかと考えられる。
知識才能を磨く事のみによって人間が立派になれると言う如き従来の考え方を
断乎として打破するのでなければ、日本の再建は到底望み得るものではない。
この巻頭言に続くトップ記事は、矢部貞治さんの『繁栄のための政治』ですが、
非礼ながら矢部貞治さんを知らず、ネットで確認すると
終戦の年の12月に東大法学部の教授を依願免官されていますが、
中曽根康弘さんの東大時代の恩師であり相談役でもあった方とのこと。
説得力ある論説に得心が行きます。
矢部さんの論説は、リンカーンの言葉で締めくくられています。
―― 我々は今更ながら、リンカーンの偉大な言葉を想起する。曰く、
「過去の時代の教義は、嵐の吹く現在には不適当だ。
現在は困難が高く積み上げられている。
現在とともに我々は起たねばならぬ。我々の場合は新しい。
それ故、我々は新たに考え、新たに行動せねばならぬ」と。
現在とともに我々は起たねばならぬ。我々の場合は新しい。
それ故、我々は新たに考え、新たに行動せねばならぬ」と。
読んでビックリです。
実は、今年の3月中旬に、アップルのCEOティム・クックが
全世界に向けて発信したメッセージの結びに、
リンカーンの同じ言葉を引用していました。
―― リンカーン大統領は大きな逆境にある時にこう述べました
「困難が次々に重なって高い山となっても、
そして、それこそが、今回のCOVID-19への私たちの対処方法でもあります。
我々はこの状況とともに立ち上がらなければならない。
私たちが直面する状況は新しいものだ。
だから、新たに考えねばならない。新たに行動しよう」。
これこそが、Appleが大きな課題に直面して常に選んできたことでした。私たちが直面する状況は新しいものだ。
だから、新たに考えねばならない。新たに行動しよう」。
そして、それこそが、今回のCOVID-19への私たちの対処方法でもあります。
The dogmas of the quiet past are inadequate to the stormy present.
The occasion is piled high with difficulty,
and we must rise with the occasion.
As our case is new, so we must think anew, and act anew.
We must disenthrall ourselves, and then we shall save our country.
Annual Message to Congress December 1, 1862
by President Abraham Lincoln
The occasion is piled high with difficulty,
and we must rise with the occasion.
As our case is new, so we must think anew, and act anew.
We must disenthrall ourselves, and then we shall save our country.
Annual Message to Congress December 1, 1862
by President Abraham Lincoln
偶然の一致に魂を揺さぶられました。
それに引き換え、なんて愚痴を吐いたところでどうなるわけでなし、
ただひたすらに自分の心を高めて魂を磨くのみです。
アップルのCEOティム・クックのメッセージ(2020.3.13)より――
しかしながら、この世界的な取り組み――
病気に罹りやすい人々を守り、新型コロナウイルスを研究し、
不幸にも罹患してしまった人々のケアを続けていくには、
私たち全員が気にかけ、難局に関わっていくことが必要です。
病気に罹りやすい人々を守り、新型コロナウイルスを研究し、
不幸にも罹患してしまった人々のケアを続けていくには、
私たち全員が気にかけ、難局に関わっていくことが必要です。
激しく同意、
自分に何ができるか、何をやるかが問われる
松下幸之助『道をひらく』より――
「素直に生きる」
逆境――それはその人に与えられた尊い試練であり、
この境涯に鍛えられてきた人はまことに強靭である。
古来、偉大なる人は、逆境にもまれながらも、
不屈の精神で生き抜いてきた経験を数多く持っている。
まことに逆境は尊い。だか、これを尊ぶあまりに、これにとらわれ、
逆境でなければ人間が完成しないと思い込むことは、
一種の偏見ではなかろうか。
逆境は尊い。しかしまた順境も尊い。要は逆境であれ、順境であれ、
その与えられた境涯に素直に生きることである。
謙虚の心を忘れぬことである。
素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境は自惚れを生む。
逆境、順境そのいずれをも問わぬ。
それはそのときのその人に与えられた一つの運命である。
ただその境涯に素直に生きるがよい。
素直さは人を強く正しく聡明にする。
逆境に素直に生き抜いてきた人、順境に素直に伸びてきた人、
その道程は異なっても、同じ強さと正しさと聡明さを持つ。
おたがいに、とらわれることなく、甘えることなく、
素直にその境涯に生きてゆきたいものである。
この境涯に鍛えられてきた人はまことに強靭である。
古来、偉大なる人は、逆境にもまれながらも、
不屈の精神で生き抜いてきた経験を数多く持っている。
まことに逆境は尊い。だか、これを尊ぶあまりに、これにとらわれ、
逆境でなければ人間が完成しないと思い込むことは、
一種の偏見ではなかろうか。
逆境は尊い。しかしまた順境も尊い。要は逆境であれ、順境であれ、
その与えられた境涯に素直に生きることである。
謙虚の心を忘れぬことである。
素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境は自惚れを生む。
逆境、順境そのいずれをも問わぬ。
それはそのときのその人に与えられた一つの運命である。
ただその境涯に素直に生きるがよい。
素直さは人を強く正しく聡明にする。
逆境に素直に生き抜いてきた人、順境に素直に伸びてきた人、
その道程は異なっても、同じ強さと正しさと聡明さを持つ。
おたがいに、とらわれることなく、甘えることなく、
素直にその境涯に生きてゆきたいものである。
実行家として成功する人は、
自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られがちだが、
実は、反対に、彼には一種の無私がある。
空想は孤独でもできるが、実行は社会的なものである。
有能な実行家は、いつも自已主張より物の動きの方を尊重しているものだ。
現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。
物の動きに順じて自已を日に新たにするとは一種の無私である。
小林秀雄『無私の精神』
自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られがちだが、
実は、反対に、彼には一種の無私がある。
空想は孤独でもできるが、実行は社会的なものである。
有能な実行家は、いつも自已主張より物の動きの方を尊重しているものだ。
現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。
物の動きに順じて自已を日に新たにするとは一種の無私である。
小林秀雄『無私の精神』

いつかはゴールに達するというような歩き方ではだめだ
一歩一歩がゴールであり、
一歩が一歩としての「価値」をもたなくてはならない
――坂村真民さんが好きなゲーテの言葉――
一歩一歩がゴールであり、
一歩が一歩としての「価値」をもたなくてはならない
――坂村真民さんが好きなゲーテの言葉――
いまだに昨日のスローガン、約束、問題意識が論議を支配し、
視野を狭めている。それらが、
今日の問題解決を阻む最大の障害となっている。
ドラッカー『新しい現実』
視野を狭めている。それらが、
今日の問題解決を阻む最大の障害となっている。
ドラッカー『新しい現実』
大切な一生である。尊い人生である。今からでも決しておそくはない。
おたがいに心を新たにして、
真剣勝負のつもりで、日々にのぞみたいものである。
「真剣勝負」/松下幸之助『道をひらく』
おたがいに心を新たにして、
真剣勝負のつもりで、日々にのぞみたいものである。
「真剣勝負」/松下幸之助『道をひらく』

愚直に一歩、一歩、もう一歩

立ち止まってはいられない
この続きはまたいつか
会計は算術ではなく、思想である
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。

会計は算術ではなく、思想である

会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。