三式簿記でひらく自主自立の道(6)
[2022年05月14日(Sat)]
簿記はどこから来て、どこへ行くのか
〜三式簿記でひらく自主自立の道〜
(昨日のつづき)
(2022.4.19)
(2022.5.3)
(2022.5.7)
巣作りから子作り、そして子育て
順調に育って、お父さんやお母さんは大忙し
巣立ちもそう遠くなさそうです♪
愚直に一歩、一歩、もう一歩
〜三式簿記でひらく自主自立の道〜
(昨日のつづき)
(5) ブロックチェーンによる三式簿記
「単式簿記」では複数の帳面があっても相互につながっていなかったが、「複式簿記」は同じ金額を二つの帳簿に記録することでつながり、その結果、期末の財産の増減による業績評価とは別に、期間損益による業績評価が可能になった。
そして「時制的三式簿記」は過去・現在・未来を因果の関係でつなぎ、「微分的三式簿記」はストックとフローでつないで微分・積分で新しい次元に展開した。
ならば「ブロックチェーンによる三式簿記」がつなぐものは、なにか?
ブロックチェーンを端的に言えば、取引(トランザクション)に係るデータを、ブロックに記録して管理し、チェーンのようにつないで保管する「分散型台帳技術」(DLT:Distributed Ledger Technology)である。
取引の都度リアルタイムで台帳に記録。その内容は借方・貸方の出入りと残高の複式簿記に加えて、3つ目の欄としてブロックチェーンが追加される(20)。
台帳の記録が途切れることなく連続して「つながる」ことに価値があり、暗号やタイムスタンプなど最先端技術を駆使して高い安全性と信頼を確保し、検証可能で不正や改ざんを困難にする仕組みが講じられている。
ブロックチェーン技術について論じるのは本論の趣旨とするところではない。
会計の視点からブロックチェーンを捉えると、稲盛和夫氏が説く「京セラ会計学」の7つの基本原則のうち「一対一対応の原則」と「ダブルチェックの原則」と「ガラス張り経営の原則」の3つの原則の徹底といえよう。
ちなみに、稲盛氏の『稲盛和夫の実学』(21)では7つの基本原則のうち「一対一の対応」は2番目で「ダブルチェック」は5番目だが、『アメーバ経営』(22)ではそれぞれ1番目と2番目であり、そして「ガラス張りの経営」はいずれの本においても7番目、大トリである。
稲盛氏は、『稲盛和夫の実学』で次のように書いている。
ブロックチェーンは最先端技術を取り入れ、その進化は止まることを知らない。しかし、会計的には「一対一の対応」、「ダブルチェック」、「ガラス張りの経営」の徹底であり、その徹底を追及するための「きわめてシンプルでプリミティブなシステム」の「分散型台帳技術」がブロックチェーンである。
稲盛氏は、「一対一の対応」について「非常にプリミティブな手法に見えるが、それを徹底させることによって社内のモラルを高めると同時に、社内のあらゆる数字を信頼できるものにすることができる」(24)と指南している。
何事も「当たり前のことを当たり前にやる」ことほど難しいことはなく、そもそも「当たり前」のレベルは人それぞれに違うし、「徹底」となると至難である。
この至難な「凡事徹底」を、ブロックチェーンは「三式簿記」で基本を疎かにすることなく忠実に、社会的レベルで実現を目指すのである。
ブロックチェーンによる三式簿記は、簿記の原点に立ち返って、私たち公認会計士の社会的使命が問われていると受け止めるべきであろう。
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(20) タプスコット、前掲書、pp.96
(21) 稲盛和夫『稲盛和夫の実学』日経ビジネス人文庫、2000年
(22) 稲盛和夫『アメーバ経営』日経ビジネス人文庫、2010年
(23) 稲盛、前掲『稲盛和夫の実学』、pp.152
(24) 稲盛、前掲『稲盛和夫の実学』、pp.67
「単式簿記」では複数の帳面があっても相互につながっていなかったが、「複式簿記」は同じ金額を二つの帳簿に記録することでつながり、その結果、期末の財産の増減による業績評価とは別に、期間損益による業績評価が可能になった。
そして「時制的三式簿記」は過去・現在・未来を因果の関係でつなぎ、「微分的三式簿記」はストックとフローでつないで微分・積分で新しい次元に展開した。
ならば「ブロックチェーンによる三式簿記」がつなぐものは、なにか?
ブロックチェーンを端的に言えば、取引(トランザクション)に係るデータを、ブロックに記録して管理し、チェーンのようにつないで保管する「分散型台帳技術」(DLT:Distributed Ledger Technology)である。
取引の都度リアルタイムで台帳に記録。その内容は借方・貸方の出入りと残高の複式簿記に加えて、3つ目の欄としてブロックチェーンが追加される(20)。
台帳の記録が途切れることなく連続して「つながる」ことに価値があり、暗号やタイムスタンプなど最先端技術を駆使して高い安全性と信頼を確保し、検証可能で不正や改ざんを困難にする仕組みが講じられている。
ブロックチェーン技術について論じるのは本論の趣旨とするところではない。
会計の視点からブロックチェーンを捉えると、稲盛和夫氏が説く「京セラ会計学」の7つの基本原則のうち「一対一対応の原則」と「ダブルチェックの原則」と「ガラス張り経営の原則」の3つの原則の徹底といえよう。
ちなみに、稲盛氏の『稲盛和夫の実学』(21)では7つの基本原則のうち「一対一の対応」は2番目で「ダブルチェック」は5番目だが、『アメーバ経営』(22)ではそれぞれ1番目と2番目であり、そして「ガラス張りの経営」はいずれの本においても7番目、大トリである。
稲盛氏は、『稲盛和夫の実学』で次のように書いている。
管理システムは、決して複雑で最先端のものである必要はない。人間として普遍的に正しいことを追究するという経営哲学がベースにあれば、それは「一対一の対応」、「ガラス張りの経営」、「ダブルチェック」などの原則にもとづくきわめてシンプルでプリミティブなシステムで十分なのである。
このような会計の考え方やシステムは、不正を防ぐというだけでなく、企業の健全な発展のために不可欠であり、逆にこのような会計システムがなければ、いくら立派な技術力があろうと、また十分な資金があろうと、企業を永続的に成長させていくことはできない。(23)
このような会計の考え方やシステムは、不正を防ぐというだけでなく、企業の健全な発展のために不可欠であり、逆にこのような会計システムがなければ、いくら立派な技術力があろうと、また十分な資金があろうと、企業を永続的に成長させていくことはできない。(23)
ブロックチェーンは最先端技術を取り入れ、その進化は止まることを知らない。しかし、会計的には「一対一の対応」、「ダブルチェック」、「ガラス張りの経営」の徹底であり、その徹底を追及するための「きわめてシンプルでプリミティブなシステム」の「分散型台帳技術」がブロックチェーンである。
稲盛氏は、「一対一の対応」について「非常にプリミティブな手法に見えるが、それを徹底させることによって社内のモラルを高めると同時に、社内のあらゆる数字を信頼できるものにすることができる」(24)と指南している。
何事も「当たり前のことを当たり前にやる」ことほど難しいことはなく、そもそも「当たり前」のレベルは人それぞれに違うし、「徹底」となると至難である。
この至難な「凡事徹底」を、ブロックチェーンは「三式簿記」で基本を疎かにすることなく忠実に、社会的レベルで実現を目指すのである。
ブロックチェーンによる三式簿記は、簿記の原点に立ち返って、私たち公認会計士の社会的使命が問われていると受け止めるべきであろう。
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(20) タプスコット、前掲書、pp.96
(21) 稲盛和夫『稲盛和夫の実学』日経ビジネス人文庫、2000年
(22) 稲盛和夫『アメーバ経営』日経ビジネス人文庫、2010年
(23) 稲盛、前掲『稲盛和夫の実学』、pp.152
(24) 稲盛、前掲『稲盛和夫の実学』、pp.67
この続きはまた明日
(2022.4.19)
(2022.5.3)
(2022.5.7)
巣作りから子作り、そして子育て
順調に育って、お父さんやお母さんは大忙し
巣立ちもそう遠くなさそうです♪
朝に種を蒔き 夕べに手を休めるな。
うまくいくのはあれなのか、これなのか あるいは、
そのいずれもなのかあなたは知らないからである。
コヘレトの言葉(11:6)/旧約聖書(日本聖書協会・共同訳)
うまくいくのはあれなのか、これなのか あるいは、
そのいずれもなのかあなたは知らないからである。
コヘレトの言葉(11:6)/旧約聖書(日本聖書協会・共同訳)
愚直に一歩、一歩、もう一歩
会計は算術ではなく、思想である
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。